ソフトウエア技術に関するデータ・ベースの構築について

平成9年3月

通 商 産 業 省

  1. 審査基準の改訂

    特許庁では、プログラムを記録した媒体等を新たに特許付与の対象とするなど保護対象の拡大が図ることを目的とした審査基準の改訂を、97年4月1日付で行うことを予定している。これは、昨年、米国が実施した審査基準の改訂とほぼ同内容のものとなる。また、基準改訂作業に当たっては、昨年来二度にわたって公開意見聴取を実施しており、その結果も踏まえて先般最終的な審査基準の案が公表されたところ。

  2. データベースの構築

    ソフトウエア関連発明の保護対象を拡大するに当たっては、

       
    1. 文献化されていない若しくは明確な形で事業に用いられていないなどの理由によって本来公知技術とみなされるべき技術に新規性を認定せざるを得ないケースが出てくることが懸念されること。
    2. ソフトウエアの分野では関連する技術開発の動向が極めて早く、出願時に立ち戻っての判断が困難になること
    3. 技術動向に照らし合わせて的確に新規性、進歩性の判断するための文献等が不足することが懸念されることなど、審査現場においても懸念される点がある。

    このため、特許庁では今回の審査基準の改訂に伴い、これらの分野の特許出願の先行技術調査に資するため、非特許文献を含むソフトウエアの技術に関するデータベースを構築することを計画している。

    また、その構築作業自体は外部機関に委託することが予定されているが、今回のデータベースは特許文献以外の技術関連文献の収集が重要な要素となること、そのためには関係業界の事業に詳しい者の協力が不可欠であること、などを総合的に勘案し、特許庁ではSOFTICを委託先として希望している。

  3. 今回の審査基準の改訂の影響

    媒体特許の導入は、

    • ソフトウエアの価値を高める一つの手段につながること、
    • 米国では既に媒体特許を前提とした技術流通、M&A、クロスライセンスの実施などが広範に行われていること
    などから、我が国ソフトウエア業界にとっても対応すべき世界的な流れになっているものと考えられる。他方、同時に、

    1. 文献化されたものがないなどの理由により公知技術の特許化の恐れが高まること
    2. 先行技術調査のための負担が特許を出願する側にとっても防衛する側にとっても大きくなることが予想されること
    3. かかる負担は法務部門の弱い中小ソフトウエア企業にとって特に大きくなることが懸念されることなどの問題点もかかえている。

    このため、

    • 既に知られた技術を積極的に公知化するための手段
    • 関連企業の先行技術調査の負担を軽減する手段

    を検討する必要があるが、今回のデータベースの構築は、こうした手段としてSOFTiC会員企業ひいては情報産業全体にとっても大きな意味を持つものと考えられる。

  4. SOFTiCで受託することについて

    今回のデータベース構築作業がソフトウエア産業の発達にもつ意義にかんがみ、構築された特許庁のデータベースが将来何らかの形で会員企業若しくは一般に利用できるようにする検討を行うことを前提に、平成9年度から本業務を「ソフトウエアの流通の促進に関する事業」の一環として受託する方向で前向きに検討すべき。

  5. データベース作成作業(受託事業)の概要

    1. 準備作業

        以下の準備作業については、特許庁で原案を準備。事業立ち上げに当たって準備委員会をSOFTiCの側でも立ち上げ、これらについて討議。

      1. CSターム(コンピュータ・ソフトウエア分野用検索用語)の開発
      2. CSDB(コンピュータ・ソフトウエア分野データベース)の内容の決定
      3. 論文抽出基準、抄録作成基準の策定

    2. データ作成作業(受託業務)準備作業を踏まえて確定された作業手順に従い、 以下のとおりの作業を行う。

      1. 論文抽出基準等に基づき非特許文献の収集
      2. 収集文献の著作権許諾処理
      3. 収集文献の解析
        • マニュアル、単行本以外の文献について論文の抽出、
        • 論CSタームの付与、フリーワード抽出
        • 論文の抄録作成
        • 作成したデータのチェック
      4. データ入力
        • CSターム、フリーワード、抄録、目次、索引等検索用データの入力
        • 著作権許諾を得た文献の全文入力(イメージで入力しコード化する等の処 理による)
        • 検索用データのチェック、修正、抽出論文DB等とのリンク処理
      5. データの納品

  6. 想定される事業規模

    事務局員 10名程度
    事業規模 初年度2〜3億円(著作権許諾料も含む)
    平成12年を目途に従来の技術のデータベース化を実施。以降、当該年度に新たに出てくる技術をデータベース