合衆国地方裁判所カリフォルニア北部地区

原告:

A&M RECORDS, INC., 法人;

GEFFEN RECORDS, INC., 法人;

INTERSCOPE RECORDS, 無限責任パートナーシップ;

SONY MUSIC ENTERTAINMENT, INC., 法人;

MCA RECORDS, INC., 法人;

ATLANTIC RECORDING CORPORATION, 法人;

ISLAND RECORDS, INC., 法人;

MOTOWN RECORDS COMPANY L.P., 有限責任パートナーシップ;

CAPITOL RECORDS, 法人;

LA FACE RECORDS, 共同事業体:

BMG MUSIC d/b/a THE RCA RECORDS LABEL, 無限責任パートナーシップ;

UNIVERSAL RECORDS INC., 法人;

ELEKTRA ENTERTAINMENT GROUP INC., 法人;

ARISTA RECORDS, INC., 法人;

SIRE RECORDS GROUP, INC., 法人;

POLYGRAM RECORDS, INC., 法人;

VIRGIN RECORDS AMERICA, INC., 法人、および

WARNER BROS.RECORDS INC., 法人

被告:

NAPSTER, INC., 法人およびDOES 1-100

No. C 99-5183 MHP
No. C 00-0074 MHP

意見

原告:

JERRY LEIBER個人およびJERRY LEIBER MUSIC; MIKE STOLLER個人およびMIKE STOLLER MUSIC、ならびにFRANK MUSIC CORP.、自身ならびにその他のすべての同様の立場にいる者を代表して

被告:

NAPSTER, INC.,

_____________________________________

本法廷に提起された件は、著作権対象の音楽および録音の共有と窃盗との間、個人使用と世界全体での無断頒布との間の境界に関するものである。[1] 1999年12月6日、A&M Recordsおよびその他17のレコード会社(「原告レコード会社」という)は、ユーザーが無料でMP3ミュージック・ファイルをダウンロードできるようにするインターネット新興企業、Napster, Inc.[2] に対して、著作権の寄与侵害および代位侵害、カリフォルニア民事法典第980条(a)(2) 違反、ならびに不正競争の訴状を提出した。2000年1月7日、原告Jerry Leiber、Mike StollerおよびFrank Music Corporationは、Napster, Inc.および前最高経営責任者Eileen Richardsonに対して、同様の立場にいる音楽出版者の推定上のクラス(「原告音楽出版者」という)を代表して、著作権の代位侵害および寄与侵害の訴状を提出した。原告音楽出版者は、2000年4月6日に訴状の最初の修正を提出し、2000年5月24日に本法廷は、Richardsonに対するすべての請求の取り下げを記録した。[3] 現在、本法廷には、Napster, Inc.が著作権者の明示的な許諾なしで、著作権対象の音楽の複製、ダウンロード、アップロード、送信もしくは頒布に関わること、または他の人のそれらへの関わりを支援することを暫定的に禁じるための、原告レコード会社と原告音楽出版者による共同訴状が提出されている。

この訴状に反対して被告は、Sony Corp. of America v. Universal City Studios, Inc., 464 U.S. 417 (1984) において明確にされた「公正使用」の法理を、NapsterユーザーによるMP3ファイルの大量ダウンロードを含むように拡大することを求める。さらに、この第三者の活動が著作権の直接侵害を構成するにしても、原告は、寄与侵害と代位侵害の請求の実体に対して勝訴する相当の可能性を示していないと被告は論じる。被告はまた本法廷に、ほとんどが著作権対象となっているミュージック・ファイルの無料のダウンロードを容易にするように作成され販促されたサービスによっては、著作権者は害を受けないと認定するように求める。

本法廷は両当事者の主張を検討し、Napster, Inc.に対する暫定的差止命令を求める原告の申し立てを認める。本法廷は、連邦民事訴訟規則第65条 (d) に基づき暫定的差止命令を裏付けるために、下記の事実認定および法律問題に関する結論を提示する。

I. 事実認定

A. MP3技術

1.      デジタル圧縮技術は、少ないメモリーで、インターネットを通じてアップロードやダウンロードができる、デジタル・フォーマットでの録音を可能にする。DavidM.Lisi供述(Tygar報告書)at 11参照。MP3は、かかる圧縮音声ファイルを記憶するのに使われる、人気のある標準的なフォーマットである。Edward Kessler供述 ¶ 3;[4] Lisi供述(Tygar報告書)at 11参照。データのMP3フォーマットへの圧縮は、音質の幾らかの損失をもたらす。Lisi供述(Tygar報告書)at 12参照。しかしMP3ファイルはより小さいので、転送の時間が少なく、したがって、インターネットでの転送により適している。同上at 11参照

2.      消費者は通常、MP3を2つの方法で取得する。第一に、ユーザーはNapsterのようなインターネット・サービスを使うことによって、すでにMP3フォーマットに変換されている録音をダウンロードすることができる。Lisi供述(Tygar報告書)at 11参照。第二に、「リッピング」ソフトウェアは、音声コンパクト・ディスク(CD)を、コンピューターのハードドライブへ直接コピーすることを可能にする。リッピング・ソフトウェアは、通常のCDにある数百万バイトの情報を、記憶スペースの一部を必要とする、より小さなMP3ファイルへ圧縮する。同上;Kessler供述 ¶ 32; 1 Laurence F. Pulgram供述、証拠物A(Conroy供述)at 13:19-24参照

B. 被告の事業

1.      Napster, Inc. は、カリフォルニア州San Mateoに根拠をもつ新会社である。そのインターネット・ウェブサイトを通じて、所有権をもつファイル共用ソフトウェアを無料で頒布する。このソフトウェアをダウンロードした人は、Napsterシステムにログオンし、そのシステムにログオンした他のユーザーとMP3ミュージック・ファイルを共用することができる。Kessler供述 ¶ 6参照。Napsterユーザーが現在、相互、被告または著作権者に支払いをせずにMP3ファイルをアップロードまたはダウンロードしていることは反駁されていない。

         Napster, Inc. の業務摘要によれば、Napsterのサービスはそのユーザーに、「MP3フォーマットの好みのアーチストによる音楽を発見する」前例のない能力を与える。1 Frackman供述、証拠物A(Richardson証言録取書)、証拠物127 at ER000131。[5] 被告は、Napsterアカウント保有者が、数百万人の他の匿名のユーザーのハード・ドライブにあるミュージック・ファイルの比較的複雑な検索を行うことを可能にする、ピア・トゥ・ピアのファイル共用システムを提供することによって、「MP3ファイルのサーバーを発見するフラストレーションを取り除く」と自慢する。A&M Records, Inc. v. Napster, Inc., 2000 WL 573136, at *1(カリフォルニア州北部地区、2000年5月12日)(サマリ・ジャジメントを求める被告の申立てを引用)at 4参照

2.      Napsterは、ルームメートによるミュージック交換を容易にしようとした大学生の発明品だが、1 Frackman供述、証拠物B(Fanning証言録取書)at 31:10-35:1参照、友人や家族内での単純な配布手段とはとても言えない。被告の内部文書によれば、2000年末までには、Napsterのユーザーは7500万人になる。1 Frackman供述、証拠物A(Richardson証言録取書)at 318:19-319:1, 166、証拠物166 at 002725参照。この「ウイルス的サービス」は営業しなくても、毎月200パーセント以上の割合で成長していると被告は推定した。同上、証拠物127 at ER00130。1秒当たりほぼ1万のミュージック・ファイルがNapsterを使って共用され、毎秒100以上のユーザーが、このシステムに接続しようとしている。Kessler供述 ¶ 29参照

3.      Napster, Inc. は現在、収入を得ておらず、顧客に料金を課していない。無料サービスである。たとえば1 Frackman供述、証拠物A(Richardson証言録取書)at 179:15参照。しかし非営利組織であったことはなかった。同上at 116:10参照。大きなユーザー基盤をもつまでは、収入の極大化を遅らす計画である。同上、証拠物127 at ER00130; 1 Frackman供述、証拠物C(Parker証言録取書)at 160:1-162:14、証拠物254 at SF00099参照。利用可能な音楽の量と質が増えればシステムの価値も上がる。同上、at 112:18-113:2、証拠物127 at ER00130; David J. Teece報告書at 4参照。被告の内部文書によれば、新メンバーが自分のMP3コレクションをオンラインにもたらすことで、「拡大し続けるライブラリー」における音楽の「臨界量」を獲得する戦略をもっている。1 Frackman供述(Richardson証言録取書)、証拠物127 at ER00130; 証拠物C(Parker証言録取書)at 160:1-162:14, 証拠物254 at SF00099参照

         被告は結局は、そのユーザー基盤を「現金化」することを計画している。同上at 115:24-116-13; Teece報告書at 4、7-11参照。収入源の可能性としては、ターゲット電子メール、宣伝、営利ウェブサイトへのリンクの料金、そしてCD、Napster製品、CDのバーナーやリッパーの直接マーケティングがある。1 Frackman供述、証拠物C(Parker証言録取書)at 160:1-162:14, 証拠物254 at SF00099-100; Teece報告書at 2-3参照。被告はまた、そのソフトウェアの特別のあるいは商用のバージョンに対して料金を課し始めるかもしれない。Teece報告書at 8参照; 1 Frackman供述、証拠物A(Richardson証言録取書)at 179:6-25参考。毎日増加し「現金化」可能な大きなユーザー基盤の存在は、Napster, Inc. を、より大きなより確立した企業にとって魅力のある買収対象とする。Teece報告書at 7参照

4.      Napster, Inc. の価値は、少なくとも部分的にはそのユーザー基盤によって判定されるが、6千万ドルから8千万ドルの間である。Teece報告書at 11-12; Def.' Opp at 35参照。被告はこの訴訟の開始以降、かなりの資本注入を得た。たとえば2000年5月に、ベンチャー企業Hummer Winbladは、1300万ドルで同社の20パーセントの所有権を得た。同時に他の投資家が150万ドルを投資した。Hank Barry供述 ¶ 7参照

5.      証拠によれば、ほぼすべてのNapsterユーザーが著作権対象のファイルをダウンロードまたはアップロードしており、Napsterで利用できる音楽の大部分は著作権対象物である。原告の専門家Ingram Olkin博士が標本抽出したファイルの87パーセントが、「原告またはその他の著作権者に所属、またはそれらに管理されるものであった」。[6] Olkin報告書at 7。RIAAの海賊行為担当顧問Charles J. Hausmanは、Olkinのデータを分析した後に、Olkinのダウンロード・データベースの1150ファイル中834ファイルが原告に所属または原告によって管理されていると判定した。原告だけで、1150ファイルの70パーセント以上の著作権を所有している。Charles J. Hausman供述 ¶ 8参照。Napsterユーザーは、無断でこれらのファイルを共用していた。同上参照

6.  Napster, Inc. は、原告が所有する音楽を頒布もしくはダウンロードする、または他の人が頒布もしくはダウンロードすることを促進する許諾を得たことはない。Kevin Conroy供述 ¶ 4; Richard Cottrell供述 ¶ 5; Mark R. Eisenberg供述 ¶ 21; Lawrence Kenswil供述 ¶ 15; Paul Vidich供述 ¶ 8; Mike Stoller供述 ¶ 11参照

7.      被告の内部文書によれば、被告は、音楽のプロモーションおよび頒布における原告の役割を奪う、あるいは少なくとも脅かすことを追求する。たとえば1 Frackman供述、証拠物C(Parker証言録取書), 160:1-162:14、証拠物254、at SF00099(「究極的にはNapsterは、一人前の音楽頒布プラットフォームに発展し、今日、我々が知っているレコード産業に取って代り、新進アーチストをわずかなコストでデジタルでプロモートし普及させうる」と宣言するが、「業界を侵食する前にまず懐柔しながら、現実的な短期目標に焦点を当てるべきである」とも指摘する)参照[7]

8.      被告の内部文書はまた、Napsterのユーザーが著作権対象音楽の無断でのダウンロードやアップロードに関わっていることをその経営陣は知っていたことも示している。たとえば1 Frackman供述、証拠物C(Parker証言録取書)at 160:1-162:14、証拠物254 at SF00100(Napsterのユーザーは「海賊行為で得た音楽を交換している」と述べる);同上 at SF00102(「我々は海賊行為で得た音楽を提供しているだけではなく、需要を後押ししている」)参照。何人かのNapsterの経営陣はその証言録取書において、Napsterで利用できる数百万のMP3ミュージック・ファイルの多くは、著作権の対象であると考えていたことを認めた。たとえば1 Frackman供述、証拠物B(Fanning証言録取書)at 105:10-108:2参照

9.      1999年10月時点では、少なくとも机上では、新アーチストのプロモーションは、被告の計画の一側面を構成していた。Sean F. Parker供述 ¶ 5 & 証拠物B[8]; Scott Krause供述 ¶ 6参照。新人のまたは未署名のアーチストは、自分の作品をプロモートし、MP3フォーマットでNapsterサービスを通じて頒布することができる。Krause供述 ¶¶ 8-15参照。Napster, Inc. は事業連合を求め、その「ニュー・アーチスト・プログラム」を行うためにインターネット技術とソフトウェア・ベースの技術双方を開発した。Parker供述 ¶ 6参照

         しかし、ニュー・アーチスト・プログラムはNapsterの使用の小さな部分でしかなく、本訴訟のため、このプログラムを最上位にすることが都合よくなるまでは、被告の事業戦略の中核にはならなかったと本法廷は認定する。Napsterウェブサイトの初期のバージョンは、ユーザーが自分の好みのポピュラー音楽を「無名のアーチストのページからページへと渡り歩」かずに発見できるという便宜を宣伝していた。1 Frackman供述、証拠物C(Parker証言録取書)at 104:16-105:10、証拠物235。原告が本訴訟を提起した時からかなり後の2000年4月までは、被告はそのインターネット・ウェブサイト上で機能するニュー・アーチスト・プログラムを制作さえしなかった。[9] Krause供述 ¶ 9、証拠物A参照

         さらに、(55万以上のものからランダムに選択された)1150ファイルからなるOlkinのサンプルにおいて、232ファイルのみが、2000年7月時点の被告の新人アーチスト・データベースに記載されている19, 440の名前のいずれかに一致した。Olkin反対供述 ¶¶ 3-5; Hausman反対供述 ¶¶ 3-6参照。そのデータを分析したRIAAの代理人も、いわゆる新人アーチストのリストは、10代のセンセーショナルなBritney Spearsや、伝説的なオルタナティブ・ロック・バンドNirvanaなど、メジャーのレコード・ラベルに属している多くのポピュラー・スターを含んでいたと指摘した。Hausman反対供述 ¶ 5参照。確立したアーチストを除くと、Olkinの1150ファイルのサンプルには、新人アーチストが11人、そのミュージック・ファイルが14しか残らなかった。同上 ¶ 6参照

10.    被告は、消費者がすでに所有しているCDをMP3フォーマットに変換し、Napsterを使って、たとえば家庭からオフィスへとその音楽を別のコンピューターに転送するプロセスを呼ぶのに、「スペース・シフティング」という用語を使う。[10] Def. Opp. at 12参照。スペース・シフティングはNapsterの利用のほんの一部でしかなく、被告の事業の重要な部分ではないと本法廷は認定する。本法廷によるNapster技術の理解に基づけば、自分の家庭からオフィスへファイルをスペース・シフトしようとするユーザーは、家庭のコンピューターからシステムにログオンし、そのコンピューターを接続したままでオフィスに行き、オフィスのコンピューターからNapsterにログオンして希望するファイルにアクセスしなければならない。彼女がオフィスに到着するまでに、多くのユーザーがそれをダウンロードするかもしれない。このような使用法がユーザーをこのシステムに引き付けるとは常識では考えられない。被告は、Napster, Inc. がスペース・シフトを、そのユーザー側にとっての魅力であるとみなしたことを指摘する会社の文書を1つも引用できなかった。調査による証拠によれば、大学生の回答者のほとんど半分が、ダウンロードした歌のうち所有していたものは10パーセント未満でしかなかった。E. Deborah Jay報告書at 4, 21 & Tbl. 7参照

C. Napster技術

1.      インターネット・ユーザーは、被告の所有権対象のMusicShareを、Napsterのウェブサイトから無料でダウンロードすることができる。この無料のソフトウェアにより、ユーザーは、Napsterのコンピューター・ネットワークにアクセスすることができる。Kessler供述 ¶ 6参照

2.  このソフトウェアは、アカウント名つまり「ユーザー名」とパスワードを選択することによってユーザーがNapsterに登録した後に完全に機能するようになる。Kessler供述 ¶¶ 6, 23参照。登録した人は個人データを含めることができるが、登録には実際の氏名や住所を使う必要はない。2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 255:20-257:22参照。Napsterはユーザー名を、登録時に提示された個人情報と結び付けない。同上参照。実際、ユーザーがログオンした後は、その住所情報はNapsterのサーバーには存在しない。同上参照

3.      当該ソフトウェアは、ブラウザー・インターフェース、サーチ・エンジン、および被告のサーバーのオンライン・ネットワークと連携して機能するチャット機能をもつ。同上 ¶¶ 6, 13参照。当該ソフトウェアはまた、ユーザーが、他のアカウント保有者のユーザー名をコンパイルし記憶することを可能にする、「ホットリスト」ツールを含む。同上 ¶ 8参照。さらにNapsterソフトウェアは、ユーザーが自分のハード・ドライブの特定のファイル・ディレクテリーに記憶できるように、音声ファイルを調べて分類するのにも使用できる。同上 ¶¶ 6-7参照。アカウント保有者がNapsterでファイルを共用できるようにするそれらのディレクトリーが、「ユーザー・ライブラリー」を構成する。同上。自分のMP3ファイルをそのディレクリーに記憶するユーザーもしないユーザーもいる。同上参照

4.      被告は、そのネットワークまたはシステムを構成するサーバーのクラスターを保持する。Kessler供述 ¶ 13参照。Napsterネットワークにアクセスするアカウント保有者は、割り当てられたクラスター内のみで通信しファイルを共用し指定されたホットリスト名を知ることができる。同上参照。ユーザーは無料でサーバーのネットワークにアクセスすることができる。

5.      アカウント保有者がNapsterネットワークにサイン・オンすると、Napsterのブラウザーが、所有権のあるサーバー側ソフトウェアと対話する。同上 ¶¶ 7, 8; 2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 54:16-56:10参照。ユーザーがMusicShareソフトウェアの「許容アップロード」機能をゼロより上に設定すると、彼女が自分のユーザー・ライブラリーに記憶したMP3ファイル名すべてが自動的に、他のオンラインNapsterユーザーに提供されるようになる。Kessler供述 ¶ 7参照

         しかし、クライアント・ソフトウェアは、MP3ファイル名を被告のマスター・サーバーにアップロードする前に、ユーザー・ライブラリーのディレクトリーに記憶されたファイルを「確認」する。2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 145:2-18参照。クライアント・ソフトウェアは、それらが実際にMP3ファイルであることを確認するために、そのファイルを読み取り、適切な構文仕様と内容を含んでいるかチェックする。同上参照。ファイルが適切にフォーマットされていない場合には、そのファイル名はNapsterサーバーにアップロードされない。同上参照

         ファイル名がうまくサーバーにアップロードされると、各ユーザー・ライブラリーは、ユーザー名で特定されるサーバー上の「ロケーション」になる。Kessler供述 ¶ 8。Napsterロケーションは短命である。ユーザーがネットワークにサイン・オンあるいはサイン・オフするたびに追加あるいは消去される。同上参照。したがってユーザーのMP3ファイルは、彼女がオンライン中のみ他のユーザーがアクセスできる。

6.      クライアント・ソフトウェアを通じてNapsterのサーバーにログオンしたユーザーは、(a) 被告の所有権があるサーチ・エンジンを利用して、または、(b) クライアント・ソフトウェアに組み込まれたホットリスト・ツールを使うことによって、他のユーザーがアップロードした「ロケーション」の内容にアクセスすることができる。同上 ¶ 12参照

7.      アカウント保有者は、MP3ファイルを発見するために、Napsterクライアント・ソフトウェアに含まれているサーチ・ツールを使用することができる。同上 ¶ 10参照。サーバー側のアプリケーション・ソフトウェアは、ユーザーがシステムをログオンまたはログオフするときにリアル・タイムで更新される、サーチ指数を保持する。同上;2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 56:3-10参照。ファイル名指数には、オンライン・ユーザーが、その指定ユーザー・ライブラリー・ディレクトリーに保管しているMP3ファイル名が含まれる。Kessler供述 ¶¶ 7, 14; 2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 55:14-56:10; 証拠物2参照。歌またはアーチストをサーチしようとするユーザーは、クライアント・ソフトウェアのサーチ・フィールドにその歌またはアーチストの名前を入力し、「Find it」ボタンをクリックすることでそうすることができる。サーチ・フォームがNapsterネットワークに転送されると、Napsterサーバーは要求したユーザーに、サーチ・フォームに入力した用語を含むファイルのリストを送る。Kessler供述 ¶¶ 5; 2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 56:3-10参照

         アプリケーション・ソフトウェアが特定のMP3ファイル名のリストを要求したユーザーに返送すると、ユーザーは、そのファイルのどれを望むか決定するために、リストを読まなければならない。同上 ¶ 10参照。Napsterアプリケーション・ソフトウェアは特定の歌あるいはレコーディングしたアーチスト自体はサーチしないので、ユーザーはリストを読まなければならない。Napsterは指標付けの設計はされていないので、MP3ファイルの内容に基づく編集はしない。同上 ¶ 11参照。その代わりNapsterは、特定のクラスター内で指標付けられたファイル名のテキスト・サーチを行う。それらのファイル名は、他のユーザーによって指定されているので、ファイルの内容についての誤植やその他の不正確な表現を含んでいるかもしれない。同上 ¶¶ 13, 10, 27; 2 Pulgram供述、証拠物B(Fanning証言録取書)at 116:8-19参照

         実行されたサーチのリストされたテキスト結果に加えて、Napsterサーバーは、特定のMP3ファイルについて他の情報を提供する。たとえば、クライアント・ソフトウェアは、ホスト・ユーザーへ送った「エコー・パケット」または「ピン要求」の結果を分類することができる。これらの要求は、ピン応答がクライアント・ソフトウェアに返送される時間を計算することで、2ユーザー間の送信の「応答性」を判定するのに役立つ。2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 56:3-10、証拠物5 at 3; Shawn Fanning供述 ¶ 8参照。ユーザーはまた、ホスト・ユーザーの帯域幅などの一定の技術基準を満たすファイルをサーチすることができる。同上参照。最後に、ファイル名、つまり「データ・オブジェクト名称」には、記憶されたサイズやバイト、そしてビット率などの「質的な属性」が含まれる。2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 153:16-154:24; Fanning供述 ¶ 8参照。これらのNapsterオプションは、ユーザーが望む音楽を発見し取得するための便宜に貢献する。

8.      ユーザーは、ホットリスト機能によってもMP3ファイルにアクセスすることができる。この機能はNapsterユーザーに、他のユーザー名を保管し、それらの名前に下にあるネットワークにアクセスするアカウント保有者がオンライン状態であるか否かを知ることを可能にする。Kessler供述 ¶¶ 8-9参照。要求側ユーザーは、ホットリストされたユーザーのユーザー・ライブラリーにリストされているすべてのファイルにアクセスまたは検索することができる。同上 ¶ 9参照。彼女はファイル名を選択つまりクリックすることによって、ホスト・ユーザーのユーザー・ライブラリーのそのファイルを要求することができる。同上参照。このホットリスト機能は、Napsterユーザーを仮想共同体にするのに役立つ。ユーザーは望む音楽をダウンロードできるばかりでなく、ユーザー名を知っている特定の人からファイルを得ることもできる。

9.      要求側ユーザーが特定のMP3ファイルにサーチ・エンジンでアクセスするかホットリストでアクセスするかに関わらず、Napsterネットワークは、同じモードのファイル転送を容易にする。同上 ¶ 12参照。要求側ユーザーがダウンロードしようとするファイルを発見し選択すると、サーバー側ソフトウェアは、彼女のブラウザーと、「ホスト・ユーザー」(つまり、ダウンロードのためにMP3を提供するユーザー)のブラウザーとの対話に関わる。Kessler供述 ¶ 12; 2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 80:19-22; 56:3-10参照。Napsterサーバーは、必要なIPアドレス情報を、ホスト・ユーザーから取得する。Daniel Farmer供述 ¶ 17; Frackman供述、証拠物1(Kessler証言録取書)at 103-05参照。サーバーはホスト・ユーザーのアドレスまたは経路選択情報を要求側ユーザーに伝達し、要求側ユーザーのコンピューターはこの情報を使ってホスト・ユーザーのブラウザー・ソフトウェアとの接続を確立し、ホスト・ユーザーのライブラリーからMP3ファイルをダウンロードする。Kessler供述 ¶¶ 10-13; 2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 56:3-10参照。実際のMP3のファイルの内容はNapsterサーバーを通してではなく、インターネットでユーザー間を転送される。Kessler供述 ¶ 12; A&M Records, Inc. v. Napster, Inc., 2000 WL 573136 at *7(カリフォルニア州北部地区、2000年5月12日)参照。しかしユーザーは、Napsterシステムにサインしなければ、アップロードされるファイルの名、および対応する経路選択データにアクセスすることはできない。Kessler供述 ¶ 23参照

10.    要求されたファイルがすぐにダウンロードする用意ができていないこともある。それらのファイルは、ホスト・ユーザーがファイルを転送できるようになるまで待たされる。2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 80:2-22参照。要求はたとえば、ホスト・ユーザーが同時に提供できるダウンロードの数を制限したとか、ホスト・ユーザーがNapsterネットワークをサイン・オフした場合に遅らされることがある。同上参照

         被告は、ユーザーが待っているダウンロードを再開できるようにする技術を採用している。2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 112:3-13参照。各MP3ファイルは、数学的に生成された独自の指紋、「チェックサム」をもつ。Kessler供述 ¶ 32; 2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 112:3-13参照。特定のMP3ファイルをダウンロードできなかった要求側ユーザーは、クライアント・ソフトウェアを使用して、ファイルのチェックサムと、意図した全サイズをNapsterサーバーに送り、ダウンロードのための照合を試みることができる。2 Frackman供述、証拠物E(Kessler証言録取書)at 112:3-13参照

11.    被告はNapsterユーザーにチャット・サービスも提供する。その中央サーバーは、ログオンしたユーザーが、ユーザー名がホットリストを構成するユーザーを含む、他のオンライン・ユーザーと通信できるようにする。Kessler供述 ¶ 13参照。同じクラスターのサーバーにログオンした特定のオンライン・ユーザーと通信する他に、チャット・サービスはユーザーにグループでの通信も可能にする。被告はこれらのグループを、特定のジャンルの音楽に基づく名称をもつ「チャンネル」つまり「チャット・ルーム」内にこれらのグループを組織する。同上;2 Pulgram供述、証拠物B(2 Fanning証言録取書)at 219:4-14参照。あるいはユーザーは、通信のための自分のチャンネルを作ることもできる。Kessler供述 ¶ 13参照

12.    被告のニュー・アーチスト・プログラム技術は、相互に関係する2つの機能で機能する。即ち、(a) そのインターネット・ウェブサイトで、および (b) そのネットワーク・クライアント・ブラウザーおよびサーチ技術を通じて機能する。Krause供述 ¶¶ 9-15参照。ウェブサイト・バージョンは幾つかの機能を行う。新人の、または未署名のアーチストに、アーチストおよびバンドの名前、似ているアーチストや影響、バンドについての情報を含む、個人情報および説明のデータからなる「プロフィール」を作成することを認める。同上 ¶¶ 9-10、証拠物C参照。依頼するアーチストがNapsterユーザーによる自分の音楽の共用を認めたならば、被告は記入した様式を受理するだけである。同上 ¶ 10、証拠物D参照。被告がそのプロフィールを受理したら、そのインターネット・ウェブサイトにリンクされたデータベースに関係情報をすべて記憶させる。同上 ¶ 11参照。被告は、そのようなプロフィールを数千個受理している。同上 ¶¶ 9, 16参照

         公衆は新人アーチストのデータベースを幾つかの方法でサーチすることができる。即ち、(1) アーチスト名によって、(2) アーチストの影響によって、あるいは (3) 音楽のジャンルを検索し、そのジャンルに分類される新人アーチストのリストをスクロール・ダウンする。同上 ¶ 12参照。しかしNapsterサイトは、新人アーチストの音楽をまったく記憶していない。同上 ¶ 9参照。その代わり、このウエブサイト基盤のサービスにアクセスした人は、名前など、アーチストに関する情報を取得する。同上、付属書E参照。このデータを取得すると、Napsterのソフトウェアおよびネットワーク基盤のサービスにスイッチして、その新人アーチストの音楽をサーチしダウンロードするように指示される。同上 ¶ 15参照

         MusicShareソフトウェアを使用しNapsterシステムにログオンするNapsterアカウント保有者は、他のファイルを見付けダウンロードするのと同一の方法で、つまりサーチ・エンジンの利用またはユーザー・ライブラリーの検索によって、新人アーチストの歌を見付け、ダウンロードすることができる。同上 ¶ 9参照。Napsterネットワークにアクセスしている間、新人アーチストも他のユーザーも、音楽を直接販売するために、あるいは新人アーチストについて知るために、チャット機能を使うことができる。同上 ¶¶ 8, 15参照

D. 原告の事業

1.      原告音楽出版者は音楽を作曲し歌を書く。たとえばStoller供述 ¶ 2参照。彼らは録音の販売からロイヤルティーを得るので、金銭的にはかかる販売に依拠している。同上at ¶¶ 2, 11, 13参照。しかし、NapsterユーザーがMP3ファイルを無料または無断でアップロードやダウンロードするときは、彼らはロイヤルティーを得ない。同上 ¶ 11参照。原告レコード会社の録音も、金銭、時間、労力および創造力のかなりの投資の結果である。Conroy供述 ¶ 5; Cottrell供述5; Eisenberg供述 ¶¶ 5, 21; Kenwill供述 ¶ 5参照

         その一方、被告は音楽の内容には何も投資しない。つまり原告と比較して、消費者の需要を満足させるために多様な音楽を提供するのに、ほとんど何も費用をかけないことを意味する。Teece報告書at 14参照

2.      利益を得るには、原告レコード会社は主として、発売されたアルバムの10から15パーセントしかない、「ヒット」つまり人気のある録音に依拠する。たとえばEisenberg供述 ¶ 7参照。その成功した録音の多くまたはすべてが、Napsterで無料で提供されている。Frank Creighton供述 ¶ 5参照

3.      原告レコード会社は、デジタル・ダウンロード市場への実際の参入およびその計画に、かなりの時間、努力および資金を投資してきた。BMG Music(「BMG」)は、[11] 1996年の初めにデジタル・ダウンロードの調査を始め、デジタル・サービス提供者(「DSP」)Amplified.comやLiquid Music Networkを通じて、20以上の録音をダウンロードのために提供してきた。Conroy供述 ¶ 9参照。BMGは幾つかのビジネス・パートナーシップ、戦略的営業契約および手形交換所との関係を確立し、確実な商業デジタル・ダウンロードの計画を展開してきた。2000年7月が、BMGの開始の目標日であった。同上at ¶¶ 10-17参照

         原告Capitol Record, Inc. とVirgin Records Americaは、EMI Recorded Music, North America(EMI)の関連会社である。Cottrell供述 ¶ 1参照。EMIはその音楽を、800以上の小売ウェブサイトをもつ幾つかのDSPを通じて頒布する事業計画を展開してきた。同上 ¶ 7参照。EMIが提供するすべてのデジタル・ダウンロードは、暗号化され透かし入りである。同上 ¶ 12参照

         Sony Music Entertainment(「Sony」)はすでに、そのウェブサイトおよびそのアーチストのウェブサイトを通じて、幾つかのシングルの提供を始めている。この音楽の恒久的コピーを得るには、消費者はダウンロードの料金を支払わなければならない。Eisenberg供述 ¶ 13参照。2000年5月31日にはSonyは、約35の小売サイトの流通ネットワークを通じて、ダウンロード可能な音楽の販売も始めた。同上at ¶ 17参照

         原告A&M Records、Geffen Records、Interscope Records、Island Records、MCA Records、Motown Records、UMG RecordsおよびUniversal Records(総称して「Universal」という)は数百万ドルを費やして、2000年真夏に開始予定の確実なデジタル流通システムの準備をした。Kenswil供述 ¶ 9-16参照。

         Warner Music Groupおよびその関連ラベル、つまり原告Atlantic Recording Corp.、London-Sire Records Inc.(旧称Sire Records Group Inc.)、Elektra Entertainment Group Inc. およびWarner Bros. Records(総称して「Warner」という)は、デジタル流通に相当な労力をとかなりの予算を費やした。Vidich供述 ¶ 7 (a) - (e) 参照。Warnerは、2000年第4四半期までに、数百のレコーディングの商業デジタル流通を開始する予定である。同上at ¶ 7 (e) 参照

4.  原告およびその他の小売サイトで提供される販促用サンプルは、CDを購入するか否かを決定するためのNapsterの使用とはかなり異なる。原告レコード会社は、幾つかの無料ダウンロードを提供したが、その量も期間も限定した。アルバム全体は提供せず、ダウンロードは通常、ユーザーが限られた期間(しばしば1ヵ月未満)だけしか聞けないように「時間切れ」となった。Conroy供述 ¶ 9-17; Cottrell供述 ¶ 15; Eisenberg供述 ¶ 13; Kenswil供述 ¶ 12; Vidich供述 ¶¶ 7 (d), 8参照。原告は販促用ダウンロードの権利の管理に完全には成功しなかったが、レコード会社の経営者は、このように頒布される音楽のセキュリティーを重要視する。[12] Conroy供述 ¶ 9-17; Cottrell供述 ¶ 15; Eisenberg供述 ¶ 13; Kenswil供述 ¶ 12; Vidich供述 ¶¶ 7 (d), 8参照

         Amazon.comのような小売サイトは、ダウンロードではなく、ストリーミング式音声フォーマットで30秒から60秒の歌のサンプルを提供する。David Lambert反対供述 ¶ 2参照。ストリーミングはダウンロードとは異なり、音楽を聞き手のコンピューターのハード・ドライブにコピーしない。単にそれを聞かせるだけである。同上参照。歌のサンプルをこれらのインターネット小売業者に提供するDiscoverMusicのような会社はライセンス契約を締結するので、権利保有者はこの形式のサンプリングからロイヤルティーを得られる。同上 ¶ 3参照

         一方、Napsterを使って無料でMP3ファイルを得る人は、無期限にそれを保持し聞くことができる。購入の判断をするために歌をダウンロードした場合でも、音楽を購入しないと決定するかもしれない。Napsterのユーザーは、新しい歌を「試聴」するために得た無断のダウンロードから構成されるCDを作成することができるが、原告に属するサイトでのサンプリングは、ディスク全体の購入の代わりにはならない。Teece報告書at 17参照

E. 原告の著作権対象作品の市場に対するNapsterの影響

1.      本法廷は、Napsterの使用のために、中核的層であると被告が認める大学生によるCDの購入が減少する可能性が大きいと認定する。Jay報告書at 4, 18; Michael Fine報告書at 1; Julia Greer反対供述(Brooks証言録取書)at 145:10-12(「主たる対象は大学生およびその前後、12歳から24歳だと考えている」)参照。原告専門家E.Deborah Jay博士は、彼女による大学生調査回答者のうちの41パーセントが「NapsterがCD販売に置き替わると明確に示すまたは暗示する形で、Napsterを利用する理由を述べ、あるいは自分の音楽関係の買物に対するその影響の性質を説明した」との意見を述べた。Jay報告書at 4, 18。また彼女によれば、調査した大学生の21パーセントが、Napsterはよりよい選択あるいは購入決定に役立つと述べた。同上、表4参照。しかし、「Napsterのユーザーがより多くの曲をダウンロードすればするほど」、音楽の購入は減る可能性が大きいと彼らは認めるまたは示唆するというのが、Jayの全体的結論であった。同上at 4, 18参照。Soundscanの最高経営責任者Michael Fineの報告書はJayの認定の裏付けとなる。Fineは大学キャンパス近くの3つのタイプの小売店から集められたデータを検討し、[13]「オンライン・ファイル共用は、大学市場でのアルバム販売の減少に結び付いた」と結論付けた。[14] Fine報告書at 1。

         本法廷の別個の命令の中で議論した理由により、被告側専門家PeterS. Fader博士による報告書は、Napsterでのミュージック・ファイル共用はCDの販売の代替物ではなく刺激となるとの、信頼できる証拠を提示していない。[15] 被告が引用するレコード業界の文書も、Napsterの利用による音楽販売の増加を十分に示してはいない。かかる覚書の1つは、Warnerの販促用ダウンロードの影響を扱っている。それは「時間切れ」するものであり、Napsterを使って得られるMP3とは異なる。1 Pulgram供述、証拠物N(Vidich証言録取書)、証拠物279 at T3122-23; Vidich供述 ¶¶ 7 (d), 8(無料の販促用ダウンロードは「時間切れ」すると述べる)参照。もう1つの「まだ煙をあげている銃」とされるものは、MP3ファイルをダウンロードする人による音楽購入に関するUniversalの調査である。1 Pulgram供述、証拠物F(Kenswil証言録取書)at 110:22-111:15参照。しかし本法廷は、この調査を信頼するための情報をほとんどもっておらず、Universalの代表者Lawrence Kenswilは、調査の正確さを保証することを拒否した。同上at 111:8, 14-15参照

2.  原告はごく最近デジタル・ダウンロード市場に参入した、または今後数カ月内に参入しようとしているので、Napsterとの直接の競争から特に影響を受けやすい。Teece報告書at 15-16参照。無料のNapsterのサービスと有料ダウンロード・サイトとの選択においては、消費者はNapsterを選ぶだろうと本法廷は認定する。同上at 14; Jay報告書at 4, 18(大学生調査のサンプルに鑑みてこの結論に達する)参照

         被告側経済専門家Robert E. Hall博士は、原告の音楽はNapsterの利用によって価格がゼロになった後でも、高価格を維持することができたとの意見を述べ、したがって、原告は現在と、被告に対する第一審の評決までの間に、回復不能な被害は受けないだろうと結論付けた。Lisi供述(Hall報告書)¶¶ 39, 54参照。この論理は、被告に対して暫定的差止命令を出せば、ユーザーが「家族精神」によって提供されるサービスに移動するので被告の事業がつぶれるとのHallの主張とは調和しない。Hall報告書 ¶ 15-19; Baryy供述 ¶ 13も参照。もしこれが正しければ、Napsterが差止命令を受けても消費者は音楽の購入を必ずしも再開しない。むしろ彼らは、無料のMP3ファイルを提供する他のサイトに移動する。[16] 実際、David J. Teece博士が主張したように、被告はデジタルでダウンロードされた曲は無料であるべきだという、商業的なダウンロード市場の確立にとって多大な障害となる新しい態度の形成に貢献した。Teece報告書at 14-18参照

         Hallはまた、消費者の、MP3ファイルを取得し聞くのに必要なハードウェアおよびソフトウェアへの投資を刺激することによって、Napster, Inc. は原告のオンライン販売の量を増したと主張する。Hall報告書 ¶¶ 45-49参照。しかし彼は、Napsterの利用による大学生内でのCD購入の減少の証拠を無視している。Jay報告書at 18参照。またNapsterが売上を増加させたと論じるために彼が依拠するデータは、弱い(Fader報告書の場合)か、または本法廷で検討するためには提供されていない。たとえば同上 ¶ 17(IDCおよびForrester Research調査に依拠)、¶¶ 27-28(Student MonitorおよびAnderson Consultingによる報告書を議論)、¶ 34(南カリフォルニア大学による調査を引用)参照。したがって本法廷は、無料で音楽を得る権利という感覚の登場によって課せられた営利的流通に対する障害は、おそらく、被告が与えていると称する利益を凌駕すると判断する。

3.      Napsterへのダウンロードも、無料のミュージック・ファイルを提供するときに原告が課す時期、量および選択幅に対する制限がないので、原告の営業努力を阻害する可能性をもつ。Conroy供述 ¶ 9-17; Cottrell供述 ¶ 15; Eisenberg供述 ¶ 13; Kenswil供述 ¶ 12; Vidich供述 ¶¶ 7 (d), 8参照; Teece報告書at 8も参照。Napsterのユーザーが、CDの購入を望むか否かを判断するためにファイルをダウンロードすることがあるとしても、Napsterでの試聴は、原告が提供するものとは大きく異なる。Napster上では、どれだけダウンロードし、どれだけ長く保持するか決めるのは、著作権者ではなくユーザーである。

II. 法律問題に関する結論

A. 法律の基準

1.      第9巡回裁判所は、「(1) 実体的事項に関する勝訴の相当の可能性、および回復不能な損害の可能性の組合せ、または、(2) 深刻な問題が提起されており、苦難の程度が自分の側に大きいことを立証した当事者」に対して、暫定的差止命令を認める。Prudential Real Estate Affiliates, Inc. v. PPR Realty. Inc., 204 F.3d 867, 874(第9巡回、2000)。

2.      この基準は、勝訴の可能性が小さいほど損害の程度は大きくなければならないとの、変動的基準である。同上参照。著作権侵害の訴訟では、実体的事項における勝訴の相当の可能性の立証が、回復不能な損害の推定を生み出す。[17] Micro Star v. Formgen, Inc., 154 F.3d 1107, 1109(第9巡回、1998)参照

B. 直接侵害の証明

1.      寄与侵害または代位侵害の賠償請求で勝訴するには、原告は、第三者による直接侵害を証明しなければならない。Sony Corp. of Am. v. Universal City Studios, Inc., 464 U.S. 417, 434 (1984) 参照。決定的事項として本件の原告は、Napsterのユーザーが直接侵害に関わっていることを立証しなければならない。

2.      原告は、著作権の直接侵害の一応の立証はした。すでに議論したように、ほとんどすべてのNapsterユーザーが、著作権対象音楽の無断のダウンロードおよびアップロードに関わっている。Napsterで提供されるファイルの87パーセントが著作権の対象であり、70パーセント以上が原告によって所有または管理されていると思われる。Olkin報告書at 7; Hausman供述 ¶ 8参照。

C. 公正使用および実質的な非侵害使用という積極的抗弁

1.      被告は、公正使用および実質的な非侵害使用という積極的抗弁を主張する。後者の抗弁は、主要商品の法理としても知られている。Sony, 464 U.S. at 442参照Sony判決とは、メーカーは「商業的に重要な非侵害の使用が可能な」「主要商品」の販売に対して責任はないとの規則を意味する。同上Sony判決において最高裁はまた、「いかなる個人も、「公正使用」のために著作権対象作品を複製することができる;著作権者はかかる使用に対する排他的権利をもたない」と宣言した。同上at 433。被告は、これらの積極的抗弁の立証責任を負う。Bateman v. Mnemonics, Inc., 79 F.3d 1532, 1542 n.22(第11巡回、1996)(「公正使用の立証責任が常に、推定上の侵害者側にあることは明らかである」)参照

2.      下記の理由により本法廷は、Napsterのサービスの非侵害の利用とされうるものは、些細なものであるか侵害活動に関連しているか、またはその双方であると認定する。サービスの実質的な、または商業的に意味のある利用は、その大部分が著作権対象となっているポピュラー音楽の、無断でのダウンロードおよびアップロードであったし、そうであり続けている。

3.      著作権法第107条は、公正使用の要素の非包括的なリストを提示している。これらの要素とは、

(1)     かかる使用が営利的性質のものか、または非営利的な教育目的かを含む、使用の目的と性質

(2)     当該著作権対象作品の性質

(3)     当該著作権対象作品全体に対する使用された部分の量および実質性

(4)     当該著作権対象作品の潜在的市場または価値に対する使用の影響

         17 U.S.C. § 107

4.      本件においては、使用の目的と性質が、公正使用の認定の障害となる。新しい作品が著作権対象物を変形しているか否かの確認が、第一の要素の主たる目標を満足する。Cambell v. Acuff-Rose Music, Inc., 510 U.S. 569, 579 (1994) 参照。MP3ファイルのダウンロードが著作権対象音楽を変形しないことを、原告は十分に明らかにした。UMG Recordings, Inc. v. MP3.com. Inc., 92 F. Supp. 2d 349, 351(ニューヨーク州南部地区、2000)(ダウンロードに適したMP3フォーマットへの著作権対象の録音の再パッケージは、「オリジナルに対して<新しい美、新しい洞察および理解>をもたらさない」と結論付ける)参照

5.      第一の要素の下では、本法廷は使用が営利的か否かも判断しなければならない。最高裁はAcuff-Rose判決において、営利使用の認定は公正使用であるとの判断の不利になるがそれを妨げないことを明確にした。Acuff-Rose, 510 U.S. at 584参照

6.      使用が非営利的である場合、原告は、もしそれが広がれば著作権対象作品の潜在的市場に悪影響を与える可能性が大きいとの立証責任を負う。Sony, 464 U.S. at 451参照。

7.      MP3ミュージック・ファイルのダウンロードおよびアップロードは典型的な営利活動ではないが、従来の意味での個人的使用でもない。原告は、Napsterのユーザーの過半数が販売のためにつまり営利目的で、音楽をダウンロードするとは立証しなかった。しかし本法廷は、非常に多くの匿名の人々によるNapsterの利用を考え、Napsterを利用したMP3ミュージック・ファイルのダウンロードおよびアップロードは私的使用ではないと認定する。少なくともファイルを送るホスト・ユーザーは、匿名の要求者にファイルを頒布するとき個人的使用に関わっているとは言えない。さらに、Napsterのユーザーが、通常は購入しなければならないものを無料で得ているという事実は、彼らがNapsterの利用によって経済的利益を得ていることを示唆する。Sega Enters. Ltd. v. MAPHIA, 857 F. Supp. 679, 687(カリフォルアニア州北部地区、1994)(「Sega I」という)(認定されたコピーを購入する費用を節約するためのコピーは商業的性質をもち、したがって公正使用の認定の不利になる)参照American Geophysical Union v. Texaco, Inc., 60 F.3d 913, 922(第2巡回、1994)(科学研究を促進するために学術論文の無断コピーをした営利企業は、コピーから間接的な経済的利益を得ており、したがってそのコピーは営利使用を構成する)参照

8.      著作権対象の作曲および録音は本来創造的なものであり、第二の要素に基づく公正使用の認定に不利となる娯楽のためのものであると、本法廷は認定する。Harper&Row Publishers, Inc. v. Nation Enters., 471 U.S. 539, 563 (1985); Sega I, 857 F. Supp. at 687; Playboy Enters., Inc. v. Frana, 839 F. Supp. 1552, 1558(フロリダ州中部地区、1993)(In re New Era Publications Int'l v. Carol Publ'g, 904 F.2d 152, 157-58(第2巡回), 裁量上訴棄却、498 U.S. 921 (1990) を引用)参照

9.      第三の要素に関しては、MP3ミュージック・ファイルのダウンロードあるいはアップロードが、著作権対象作品の全体の複製を含んでいることは争われていない。第9巡回裁判所はSony判決に先立って、「著作権対象物全体の複製は、公正使用の法理の適用を阻む」と判断した。Marcus v. Rowley, 695 F.2d 1171, 1176(第9巡回、1983)。Sony判決の後でも、個人的な家庭での使用のための全体の複製は、かかる複製が著作権対象物の市場に悪影響を与える可能性が大きいならば、公正使用の分析において原告の有利となる。Sony, 464 U.S. at 449-50, 456参照

10.    第4の要素、著作権対象作品の潜在的市場への影響も、公正使用の認定に不利になる。原告は、Napsterの使用はその著作権対象の作曲および録音の市場を、少なくとも2つの形で傷付けるとの証拠を提出した。第一に、大学生に対するCDの売上が減少する。Jay報告書at 4, 18; Fine報告書at 1参照。第二に、音楽のデジタル的ダウンロード市場への原告の参入に対する障害になる。Teece報告書at 12-18参照

11. 被告は、試聴、スペース・シフトおよび新人アーチストの作品の公認の頒布を含む、Napsterのサービスの幾つかの潜在的な公正使用の可能性の存在を主張する。Napsterでの試聴は、家庭内で起こりユーザーに金銭的利益を与えない複製という、裁判所が認めてきた従来の意味での個人的使用ではない。たとえばSony, 464 U.S. at 423, 449-50参照。そうではなくNapsterでの試聴は、ユーザーが購入しなければならなかったはずの曲の恒久的複製の取得に相当する。数百万の人々へのウイルス的流通の可能性ももつ。被告は、Napsterでの曲の試聴とSony訴訟におけるVCRの使用との決定的な相違を無視している。第一に、「[TV放送の]タイム・シフトは単に視聴者に、無料でその全体を見るように勧められた作品を見ることを可能にする」が、本訴訟の原告はほとんど常に、曲ごとにダウンロードされる場合でさえもその音楽に料金を課す。Sony, 464 U.S. at 449-50; たとえばConroy供述 ¶ 9; Eisenberg供述 ¶ 16参照。原告は、非常に強い制限付きで、販促用のダウンロードを認めるだけである。Conroy供述 ¶ 9-17; Cottrell供述 ¶ 15; Eisenberg供述 ¶ 13; Kenswil供述 ¶ 12; Vidich供述 ¶¶ 7 (d), 8参照。著作権者はまた、Amazon.comのような小売ウェブサイトでの、短い曲の試聴からもロイヤルティーを得ることできる。Lambert反対供述 ¶ 3参照。第二にSony訴訟におけるVCR購入者の大部分は、テープに取られたテレビ放送を頒布せず、単に家庭でそれを楽しんだ。同上at 423参照。一方、曲のコピーを自分のハード・ドライブにダウンロードするNapsterのユーザーは、結局はCDを購入すると決めるにしても、その曲を他の数百万の人に提供するかもしれない。Napsterでのいわゆる試聴は、指数関数的割合で無断の頒布を急速に促進するかもしれない。

         音楽を試聴するためのNapsterの使用は、レコード店の無料試聴台の利用や小売ウェブサイトでの曲の試聴に似ているという被告の主張は、Napsterのユーザーはダウンロードした曲を保持することができるので、本法廷を納得させない。ユーザーはCDを購入すると決定するか否かに関わらず、曲の恒久的な複製を取得する。一方、多くの小売サイトはストリーミング音声フォーマットで30秒から60秒のサンプルを提供するだけであり、Lambert反対供述 ¶ 2参照、原告レコード会社からの販促用ダウンロードは、しばしば「時間切れ」になる。Cottrell供述 ¶ 15; Eisenberg供述 ¶ 13; Kenswil供述 ¶ 12; Vidich供述 ¶¶ 7 (d), 8参照

         Napster利用の広がり、そして有料であったはずの曲に対してユーザーが支払いを回避するという事実は、Napsterのユーザーによる試聴が従来の意味での個人的または家庭での使用を構成するとの判断に不利となる。[18]

12.    Napsterでなされるとされる試聴の型が非営利使用だとしても、普及すれば原告の著作権対象作品の潜在的市場に悪影響を与えるとの相当の可能性を原告は立証した。Sony, 464 U.S. at 451参照。原告は、3つの一般的タイプの被害を主張する。即ち、特に大学生内での小売販売の減少、原告レコード会社の将来の、デジタル・ダウンロード市場への参入に対する障害、および無料頒布から生じる音楽の社会的価値の低下である。試聴に関しては、Jay調査回答者の21パーセントが、Napsterはどの音楽を購入するかの決定に役立ったと指摘した。Jay報告書、表4参照。しかしJayは、Napsterのユーザーがより多くの曲をダウンロードするほど、かかる利用が音楽の購入を減らすことがより明らかになるだろうとの最終的結論に達した。同上at 4, 18参照。Jayの証拠は、無断ダウンロードによる無料ミュージック・ライブラリーの試聴と構築が、互いに矛盾しないと示唆する。試聴する調査回答者は、主として直接侵害者である可能性が大きい。レコード会社ではなくNapsterのユーザーが試聴活動における音楽の選択、量および時期を支配し、CD全体は購入しないと決定した後でも多くの曲を保持することができる。

         試聴は音楽の小売販売を減らさず、刺激さえすると被告は主張する。この主張を裏付けるために被告は主として、消費者はMP3ファイルをCDの完全な代替物とはみなさないと結論付けた、Fader報告書に依拠する。Lisi供述(Fader報告書)¶ 63参照。Faderは、「無料のデジタル音楽をダウンロードするオンライン・ユーザーの60%は、CDの購入前に音楽を試聴するためにそうしている」との主張のために、彼が行ったものではない調査を引用する。Fader報告書 ¶ 74。彼は、彼が考案したとはされるが注意深く監督はしなかった別の調査の結果を検討して、Napsterのユーザーの約28パーセントが、自分の音楽の購入はNapsterのソフトウェアを使い始めてから増加したと述べると報告する。同上 ¶ 43参照。本法廷の証拠命令で説明した理由により、Fader報告書は信用できず、原告の被害の証明を反駁できていない。原告は、被告が試聴と呼ぶ活動が、実際は原告の音楽の小売販売を減少させるとの相当の可能性を立証した。

13.    試聴による原告の売上の増加の可能性は、公正使用の分析を、決定的に被告の有利にはしない。実際、裁判所は、売上へのプラスの影響が、ライセンス料や派生作品市場へのアクセスに対する著作権者の権利を否定するとの示唆を棄却してきた。Ringgold v. Black Entertainment Television, 126 F.3d 70, 81 n.16(第2巡回、1997)(テレビ番組における原告のポスターの侵害とされる使用がポスターの販売を増すとしても、原告はライセンス料に対する権利を保持すると指摘);DC Comics. Inc. v. Reel Fantasy, Inc., 696 F.2d 24, 28(第2巡回、1982)(広告ビラでのBatmanやGreen Arrowの無断使用による原告の漫画本販売の増加予想は、法律問題としての公正使用の抗弁を正当化しない); MP3.com. 92 F. Supp. 2d at 352(原告の従来の市場に対するプラスの影響とされるものは、「著作権対象の複製から直接派生する将来の市場の、被告による略奪を決して免責しない」と判断する)を参照

         MP3.com判決の意見は特に示唆的である。MP3.comの活動がCDの売上を刺激したというのは正しいが、原告は、「[デジタル・ダウンロード市場]への参入のための措置を取ったことの実質的証拠を提示した」。MP3.com, 92 F. Supp. 2d at 352。したがって第4の要素は、公正使用の認定に不利となった。本件の原告も同様に、Napsterの使用は原告のオンライン市場への参入の障害となると主張する。原告レコード会社はすでに、デジタル・ダウンロードのためのインターネットでの販売およびライセンスを開始するために、かなりの資金と労力を費やしている。Conroy供述 ¶ 9-18; Cottrell供述 ¶ 6-17; Eisenberg供述 ¶ 9-22; Vidich供述 ¶¶ 7-10参照。原告の経済専門家は、無料MP3ファイルの存在は、正式の商業ダウンロード市場を狭くするとの意見を述べた。Teece報告書at 14-18参照。この点は、Sonyのウェブサイトで購入できる49曲すべてがNapsterを使って無料で取得できるという事実によって確認される。Eisenberg供述 ¶ 16参照。CD全体を購入すると決定した場合でも、消費者はSonyのサイトで購入するよりも、Napsterで曲の恒久的コピーを取得するか他のオンライン場所でストリーム・サンプルを聴く可能性がより大きいだろう。

     本法廷は、本件で試聴とされるものが非営利的使用だと仮定したとしても、それが普及した場合にはオンライン市場への参入に悪影響を与える相当の可能性を、原告レコード会社は立証したと結論付ける。Sony, 464 U.S. at 451参照。さらにそれは、原告音楽出版者から個々の曲に対するロイヤルティーを奪うことになる。試聴のための原告の音楽の無断ダウンロードは、それがCDの販売を増加させたとしても公正使用を構成しない。

14.    本法廷は、Sony判決がスペース・シフトに適用されるとも考えない。被告は、適用されない法律が関与するケースにおいて、スペース・シフトが非営利的な個人使用を構成するとの第9巡回裁判所の主張に誤って依拠する。Recording Indus. Ass'n of Am. v. Diamond Multimedia Sys., Inc., 180 F.3d 1072, 1079(第9巡回、1999)(Rio MP3プレーヤーへの1992年オーディオ家庭録音法の適用可能性を議論)参照[19] 被告はまた、Sony判決による保護を受けるために、音楽のスペース・シフトは、テレビ放送のタイム・シフトに十分に類似しているともほのめかす。重大な欠陥があるFader報告書によれば、スペース・シフトはタイム・シフトと同様、販売に取って代らないので著作権の価値を傷付けない。Fader報告書 ¶ 77; Sony, 464 U.S. at 421(タイム・シフトが被害の可能性を生み出したとは原告は証明しなかったと結論付ける)参照。被告はまた、Napsterのユーザーの70パーセントがスペース・シフトを行ったことがあるとのFader報告書を統計を引用する。Lisi供述(Fader報告書)¶ 77参照。それに対してJayは、彼女の大学生調査回答者の約49パーセントが、ダウンロードした曲の10パーセント未満しかその時に所有しておらず、約69パーセントが4分の1未満しか所有していないとの意見を述べた。Jay報告書at 4, 21 & 表7参照。本法廷はすでに、Jay報告書はFader報告書よりも信頼度が高いと判断した。さらに、最高裁はSony判決において、タイム・シフトはVCRの、時折ではなく主たる利用を構成すると判断したので、いずれの分析に基づいても本件はSony訴訟とは区別される。Sony, 464 U.S. at 421参照

15.    被告は、もしスペース・シフトが公正使用とみなされるならば、主要商品の法理が、寄与侵害または代位侵害に対する責任を阻むと論じる。Sony判決に基づけば、著作権者は自分の独占を、「実質的に非侵害である使用が可能な」製品に拡大することができない。Sony, 464 U.S. at 442。被告はスペース・シフトが、Napsterの商業的に重要な使用を構成するとは示せなかった。実際、ウェブサイトへの通信量の指数関数的増大に対する最も信頼できる説明は、各個人がすでに所有している曲をスペース・シフトする能力ではなく、他のユーザーが提供する、膨大な無料のMP3ファイルである。スペース・シフトが公正使用であったとしても、主要商品の法理に基づき責任を免除するほど十分には実質的ではない。Cable/Home Communication Corp. v. Network Prods., Inc., 902 F.2d 829, 846(第11巡回、1990)(被告が主として、海賊コンピューター・チップや、侵害補助として有料TV放送をデスクランブルすることができるその他のデバイスを販促する場合に、寄与侵害の認定を維持);A&M Records v. General Audio Video Cassettes, Inc., 948 F. Supp. 1449, 1456(カリフォルニア州中部地区、1996)(被告が販売したタイム・ロードされたカセットの主たる目的が模造であるという理由で、Sony判決に基づく抗弁を棄却)参照。[20]

16.    法律問題に関する結論の (D) (6) 項および (E) (2) 項が説明するように、Napsterはそのサービスに対して、継続的な支配を行使するので、本法廷は主要商品の法理の適用も拒否する。Sony訴訟においては、被告の参加はVCRの過去の生産および販売には拡大されない:「SonyとBetamaxのユーザーとの唯一の接触点は・・・販売の瞬間に起こった」。Sony, 464 U.S. at 438。しかし本件ではNapster, Inc. は、ファイルをアップロードまたはダウンロードするためにユーザーがアクセスしなければならない総合システムを保持し監督する。裁判所は、デバイスの生産および販売に対してSony判決が提供する保護を、被告がデバイスの使用を支配し続けるというシナリオから区別してきた。General Audio Video, 948 F. Supp. at 1456-57(「顧客と、模造に必要な他の材料の納入業者との接触点として行動した」未使用テープの売主には、Sony判決の法理が適用されないと認定);RCA Records v. All-Fast Sys., Inc., 594 F. Supp. 335, 339(ニューヨーク州南部地区、1984)(カセットのコピー機を支配する立場にいる被告はSony判決を惹起することはできないと判断)参照Columbia Pictures Indus., Inc. v. Aveco, Inc., 800 F.2d 59, 62 & n.3(第3巡回、1986)(公衆が著作権対象ビデオ・カセットを見る部屋を賃貸した企業は、カセットの出所ではないとしても、寄与侵害に関わったと判断)も参照。Napster, Inc. による無断でのファイル共用の促進は、VCRメーカーの合法的行動というよりも、これらのケースでの寄与侵害を思い起させる。単なる生産と販売ではなく、サービスに対する被告の支配を考えると、スペース・シフトのような潜在的に異議を唱えられない使用が存在しても、原告の請求を無効にしない。

17.    Napsterの潜在的に非侵害の他の使用も、寄与侵害あるいは代位侵害を阻まない。被告は、その98パーセントは原告レコード会社に関係していない独立アーチストの正式のプロモーションに関わっていると主張する。Def's Opp. at 10(特にKraus供述 ¶ 16を引用), 27参照。しかしニュー・アーチスト・プログラムは、Napsterの実質的な、あるいは商業的に重要な部分ではない。証拠によれば、被告は最初は、「無名アーチストの一連のページ」ではなく、大スターの曲の利用可能性を宣伝していた。」1 Frackman供述、証拠物C(Parker証言録取書)at 104:16-105:10, 証拠物235参照。レコード会社に所属できないアーチストの曲の頒布という使命とされるものは、後から開発されたとみられる。

         他の事実は、ニュー・アーチスト・プログラムはNapster事業計画の主たる側面ではなく追加事項であったという結論を指し示す。前最高経営責任者Eileen Richardsonは、証言録取書において、彼女は、NapsterはMadonnaのような知られたアーチストの場ではないと記者に述べたと主張した。しかしNapster経営陣によるダウンロードに関係する開示は、Richardson自身のコンピューターが、Napsterを使って得た約5つのMadonnaのファイルを含んでいたことを明らかにしている。1 Frackman供述、証拠物A(Richardson証言録取書)at 238:2-240:25参照。被告は原告が訴訟を提起した後で初めて、そのニュー・アーチスト・プログラムのウェブサイト部分を開始した。2000年7月時点で、善意の新人アーチストは、Napsterで利用できる曲のうちの僅かな部分でしかなかった。Krause供述 ¶ 9, 証拠物A; Olkin反対供述 ¶¶ 3-5; Hausman反対供述 ¶¶ 3-6参照

         いずれにしろ、確立したアーチストの曲の無断のコピーおよび頒布を促進するというNapsterの主たる役割は、Sony判決を適用不能にする。General Audio Video, 948 F. Supp. at 1456-57; RCA Records, 594 F. Supp. at 339参照

18.    原告は、Napsterの非侵害と思われる使用のすべてに反対はしていない。チャット・ルーム、掲示板、ニュー・アーチスト・プログラムあるいは権利保有者が認めた頒布を対象とする差止命令は求めていない。原告の反対訴答at 19参照。音楽録音産業に関係しない応用の差止命令も求めていない。[21] 同上参照。原告は本法廷に、かかる関連活動の閉鎖を求めていないので、これらの活動が非侵害かもしれないという事実は、原告の勝訴の可能性を減じない。したがって本法廷は、原告は第三者侵害を証明できる相当の可能性を立証したと認定する。

D. 著作権の寄与侵害

1.      Napsterユーザーによる直接侵害が証明された場合、原告は次に、寄与侵害の請求における勝訴の可能性を立証しなければならない。寄与侵害者とは、「当該侵害活動の認識をもちながら、他の人の侵害行動を誘導し、引き起こし、または重要な寄与をする人」のことである。Gershwin Publ'g Corp v. Columbia Artists Management, Inc., 443 F.2d 1159, 1162(第2巡回、1971); Fonovisa, Inc. v. Cherry Auction, Inc., 76 F.3d 259, 264(第9巡回、1996)参照。裁判所は実際の認識を要求していない。むしろ被告は、第三者の直接侵害を知るべき理由があるならば、寄与侵害に対する責任を負う。Cable/Home Communication Corp., 902 F.2d at 846; Sega Enter. Ltd. v. MAPHIA, 948 F. Supp. 923, 933(カリフォルニア州北部地区、1996)(「Sega II」という)参照

2.      原告は、Napsterの経営陣が実際に、違法なMP3ファイルを転送するサービスの利用について知っており、それを保護しようとしたとの、説得力のある証拠を提示している。たとえば共同設立者Sean Parkerが書いた文書は、「海賊版音楽を交換しているので」ユーザーの実名とIPアドレスを知らずにいる必要があることに言及している。1 Frackman供述、証拠物C(Parker証言録取書)at 160:1-162:14, 254 at SF00100(強調追加)。その文書は、RIAAとの交渉において、「我々は海賊版音楽を提供しているだけではなく、需要を喚起している」という事実から被告は利益を受けるだろうと述べている。同上at 160:1-162:14, 証拠物254 at SF00102(強調追加)。これらの自認は、著作権対象の音楽の無断交換の促進が、創立時からNapster, Inc. の事業戦略の中心部分であったことを示唆する。

         原告は、RIAAが12,000以上の侵害ファイルについて伝えていたので、被告が直接侵害の実際の通知を受けていたことも立証する。Creighton 12/3/99供述、証拠物D参照。Napster, Inc. はこれらのファイルを提供するユーザーを停止させたとされているが、原告レコード会社がその訴状の別表AとBに特定されている著作権対象作品と同様に、それらの曲はまだNapsterサービスを使って利用できる。Creighton補充供述 ¶¶ 3-4参照

3.      法律は、特定の侵害行為についての実際の認識を要求しない。Gershwin, 443 F.2d at 1163(第三者が著作権対象作品を演じたとの一般的知識が、寄与侵害の認識要素を満足したと判断);Sega I, 857 F. Supp. at 686-87(電子掲示板会社が、侵害ビデオ・ゲームがいつ掲示板へアップロードされまたはそこからダウンロードされたかを正確に知っていないにしても、原告は認識要素を立証したと結論付ける)参照。したがって本法廷は、Napsterディレクトリーのタイトルが、侵害ファイルと非侵害ファイルを区別するのに使えず、したがって被告は、特定の音楽録音または作曲の特定のユーザーによる侵害について知り得ないという被告の論理を棄却する。Lisi供述(Tyger報告書)at 29(ファイル名により著作権対象作品を特定することの困難さについての専門家意見を提出);Lars Ulrich供述at 36:16-37:2(以前は彼は、自分のバンドのコンサートを録音し、そのコンサートのMP3ファイルをNapsterを通じて提供することに異議を唱えなかったと述べる);Sanders供述at 24:23-29:13(著作権者の権原のつながりを判断するための複雑なプロセスを議論)参照[22]

4.      Religious Technology Center v. Netcom Online Communication Services, Inc., 907 F. Supp, 1361(カリフォルニア州北部地区、1995)への被告の依拠は、原告は寄与責任を証明できる相当の可能性をもつとの本法廷の結論を変えない。Religious Technology Center判決の引用部分は次のように述べる:

         公正使用の抗弁の可能性のため、コピー上の著作権表示の欠如のため、または侵害らしいと示す必要な証拠書類を著作権者が提出しなかったために、BBS[掲示板サービス]のオペレーターが、侵害の主張を合理的に確認はできない場合、オペレーターの認識の欠如は合理的であると認定され、そのシステムでの当該作品の頒布の継続を認めたことに対して寄与侵害の責任を負わされない。

     同上at 1374。Religious Technology Center訴訟の原告は認識に関して重大な事実に関する真正な争点を提起したので、この部分は傍論である。より重要なことは、Napsterが、ファイルの転送の単なる経路として活動するインターネット・サービス提供者ではないことである。A&M Records v. Napster, Inc., 2000 WL 57136, at *6, 8(カリフォルニア州北部地区、2000年5月12日)参照。むしろユーザーが、そのほとんどが著作権対象である曲を発見できるように特に設計されたサーチおよびディレクトリーの機能を提供する。同上at *6参照。したがって、他の連邦地方裁判所の傍論が拘束するにしても、Religious Technology Center判決は、Napster, Inc. が寄与侵害に必要な認識をもっていないとの判断を強制しない。

5.      少なくとも、被告はそのユーザーの違法行為の擬制認識はもっていた。Napsterの経営陣の何人かはレコード業界での経験を自慢し、1 Frackman供述(Richardson証言録取書)、証拠物129 at ER00138、そのロゴをコピーしたロック・バンドを訴えるのに十分な知的財産法についての素養をもっていたことは、被告は争わない。2 Frackman供述、証拠物M(NapsterのロゴのThe Offspringによる使用を止めるための司法手続きについてのオンライン・ニュース記事)参照[23] 証拠によれば、Napsterの経営陣はサービスを使って侵害物を自身のコンピューターにダウンロードし、侵害ファイルを記載した画面ショットでウェブサイトを宣伝した。2 Frackman供述、証拠物D(Brooks証言録取書)at 51:8-24, 54:25-56:11、証拠物64 at 2-4、証拠物126 at 002260, 002263; 1 Frackman供述、証拠物A(Richardson証言録取書)at 20:5-22:10, 25:2-26:1; 証拠物C(Parker証言録取書)at 70:14-16、証拠物230、¶ 3-5; 証拠物B(Fanning証言録取書)、証拠物174-76参照。かかる行動は、擬制認識に関する客観的テストを満足する。被告は第三者による侵害について知るべき理由をもっていた。Cable/Home Communication Corp., 902 F.2d at 846参照。[24]

6.      原告はまた、被告が侵害活動に重要な寄与をしたことも示した。Fonovisa訴訟において音楽録音の著作権者は、独立業者が模造録音を販売する物品交換会の運営者に対して、寄与侵害の主張を述べた。Fonovisa, 76 F.3d at 264参照。著作権者の告発は、「物品交換会で提供される支援サービスなしで当該侵害活動を多量に行うのは困難」なので、「重要な寄与を示すのに十分である」と第9巡回裁判所は判断した。同上。本件の原告によれば、「Napsterは実質的にインターネットでの物品交換会である。技術的により複雑だが、多くの点でFonovisaの[被告]と区別できない」。原告摘要書at 6。本法廷はこの特徴付けにほぼ同意する。

         物品交換会の業者とは異なり、Napsterのユーザーは無料で自分の侵害音楽を提供する。それでも被告の重要な寄与はFonovisa訴訟における物品交換会の寄与に類似している。物品交換会は、駐車場、展示スペース、宣伝、顧客などのサポート・サービスを提供した。Fonovisa, 76 F.3d at 264参照。本件ではNapster, Inc. は、所有権のあるソフトウェア、サーチ・エンジン、サーバー、およびユーザーのコンピューターとの接続を確立する手段を提供する。被告が提供するこれらのサポート・サービスがなければ、Napsterのユーザーは、望む曲を見付けダウンロードすることはできない。その便宜を被告は自慢する。

     オンライン・サービスが関係する幾つかの寄与侵害判決は、被告が侵害活動に重要な寄与をしているとの本法廷の結論と合致する。たとえばSega IIにおいては、電子掲示板サービスが、コンピューター・ゲームの無断コピーのための中心的アーカイブとして機能し、著作権対象物のアップロードおよびダウンロードに必要なソフトウェア、ハードウェアおよび電話回線を提供したので、侵害に重要な寄与をした。Sega II, 948 F. Supp. at 933参照。同様に、被告が都合の悪いときは無視するReligious Technology Center判決では、インターネット・アクセス提供者は単なる地主ではない、侵害放送を繰り返す放送局に似た管理能力をもつ、とこの地区の裁判所は述べた。Religious Tech. Ctr., 907 F. Supp. at 1375(原告は、サービス提供者の実質的参加に関して重大な事実についての真正な争点を提起したと判断)参照

         被告は重要な寄与についての原告の論理に反駁するために、2つの地裁の判例を提示する。Intellectual Reserve Inc. v. Utah Lighthouse Ministry, 75 F. Supp. 2d 1290, 1293(ユタ州、1999)(侵害ウェブサイトへのリンクのポストは、それらのウェブサイトのオペレーターによる侵害には寄与しなかったと判断);Bernstein v. J.C. Penny, Inc., 50 U.S.P.Q. 2d 1063(カリフォルニア州中部地区、1998)(「インターネット・ユーザーはこのリンクを使うことによって他のウェブサイトの侵害対象物を発見するとリンク元ウェブサイトが言及していない場合には、多重のリンクは侵害への実質的参加を構成しない」と、一見成立するように見える被告の論理を述べる)参照Bernstein判決は、訴状の棄却について理由を提示しなかった。いずれの判例も事実において不適切である。なぜなら、Napsterはそのユーザーにハイパーリンクよりはるかに多くのものを提供しており、ユーザーがMP3ミュージック・ファイルを発見しダウンロードできるように作られた総合サービスであるからである。受動的な経路として活動するインターネット・サービス提供者というよりも、Napster, Inc. はファイル共用の促進においてより能動的な役割を果たすとの見解に基づき、本法廷は、被告が違法行為に重要な寄与をした可能性は大きいと認定する。

7.      原告は、認識および重要な寄与の両要素に関して説得力のある立証をしたので、その寄与侵害の主張において勝訴する相当の可能性を示したことになる。

E. 著作権の代位侵害

1.      雇用関係がない場合でも、「侵害活動を監督する権利と能力をもち、かかる活動に直接的な金銭的利害をもっている」ならば、被告は著作権の代位侵害の責任を負う。Fonovisa, 76 F.3d at 262(Gershwin, 443 F.2d at 1162を引用)。

2.      Fonovisa訴訟においては、物品交換会運営者は業者を任意に停止させる権利をもっており、顧客のアクセスを管理しそのサービスを促進したので、代位責任の第一の要素を満足した。同上参照。合法と違法の行為を区別するのは技術的に困難でおそらく実現不可能であるとNapster, Inc. は論じるが、原告は、被告がNapsterの利用を監督していることを立証した。実際Napster, Inc. は、権利保有者が苦情を申し立てるユーザーを停止させる改善された方法を裁判所に伝える労を取る。被告の反対摘要書at 19(Kessler供述 ¶ 22を引用)、33(Kessler供述 ¶¶ 23-24を引用)を参照。これは、被告がそのサービスを監督でき、時にはそうすることの自認に相当する。Religuous Tech. Ctr., 907 F. Supp. at 1376(インターネット・アクセス提供者が加入者のアカウントを停止するために行動し特定の投稿を削除できるという証拠が、代位責任についての重大な事実に関する真正な争点を提起したと結論付ける)参照

         さらに、監督能力を行使できるとみなされるには、被告は実際にそれを行使する必要はない。Gershwin, 443 F.2d at 1161-63参照。したがって本法廷は、Napster, Inc. がそのユーザーの侵害行動を監督する権利も能力ももっていると認定する。

3.      原告は、Napster, Inc. が直接的な金銭的利害をもっているとの相当の可能性を示した。原告は他の地区の幾つかの拘束しない判例を引用して、被告が違法な行動を容認する経済的動機をもっているならば、直接的な金銭的利益とは、獲得した収益の存在を必要としないと主張する。たとえばMajor Bob Music v. Stubbs, 851 F. Supp. 475(ジョージア州南部地区、1994)では裁判所は、その敷地内での音楽の侵害演奏から直接的な経済的利益の存在を引き出した。同裁判所は、「企業は、利益を実際に得ていなくても<営利活動をしている>とみなされる」と指摘した。同上at 480; Walden Music, Inc. v. C.H.W., Inc., 1996 WL 254654, at 5*(カンサス州、1996)(「被告の野心的企業が利益を得ていないという事実は、原告の著作権侵害の請求に対する抗弁にはならない」);Broadcast Music, Inc. v. Hobi, Inc., 1993 WL 404152, at *3(ルイジアナ州中部地区、1993)(被告は、実際に利益をあげていなくても、その目標をもって運営していたので代位責任があると判断)、維持20 F.3d 1171(第5巡回、1994)も参照

         Napster, Inc. は現在、収入を得ていないが、その内部文書は「ユーザー基盤の拡大から直接収益を得る」と述べる。1 Frackman供述(Parker証言録取書)、証拠物251。[25] Napsterのサービスは、ますます多量の曲を無料で供給することによって、より多くのユーザーを獲得する。たとえば1 Frackman供述、証拠物A(Richardson証言録取書)at 112:18-113:2参照。そしてそのユーザー基盤を、事実認定で指摘した、幾つかの収益生成モデルのいずれかを通じて「現金化」することを望んでいる。

         これは、第9巡回裁判所がFonovisa判決において代位責任にとって十分であると認定した、直接の金銭的利害のタイプに似ている。そこでは物品交換会の収益は、特別価格での音楽の提供によって引き付けられた顧客から直接生じた。Fonovisa, 76 F.3d at 263-64参照Famous Music Corp. v. Bay State Harness Horse Racing and Breeding Ass'n, 554 F.2d 1213, 1214(第1巡回、1977)(「レースの観戦に夢中になっていないとき」に観客を楽しませるための音楽の違反放送に対して、競馬協会は代位責任があると判断);Playboy Enters., Inc. v. Webbworld, Inc., 968 F. Supp. 1171, 1177(テキサス州北部地区、1997)(「原告の写真がNepticsのウェブサイトの潜在的顧客への魅力を増した」ので被告には代位責任があると判断);Polygram Int'l Publ'g, Inc. v. Nevada/TIG, Inc., 855 F. Supp. 1314, 1332(マサチューセッツ州、1994)(試写会の出席者の関心をひくために使われた音楽は、試写会に直接的な金銭的利益を与えると認定)も参照

         代位責任の第二の要素についてのNapster, Inc. の粗略な議論は、この論理をほとんど反駁していない。被告はReligious Technology Center, 907 F. Supp. at 1376-77に依拠して、侵害を無視する方針をもっておらず、もしもっていたとしても、その非侵害の利用が顧客をそのサービスに引き付けると主張する。後者の主張は事実の裏付けがなされておらず、また「要求された差止命令がNapsterの事業を実質的に終わらせる」というその予測と合致しない。被告の反対摘要書at 31。被告の商業的に意味のある利用の多くが非侵害であるならば、違法活動に限定された差止命令はそのような恐ろしい影響をもたないだろう。したがってその合法的利用の優越についての被告の表明は、不誠実であると思われる。無料で無数のポピュラー・ミュージック・ファイルをダウンロードする能力は、Napsterの金銭的に価値あるユーザー基盤を引き付ける魅力を構成すると思われる。

4.      原告は、代位侵害請求において勝訴する相当の可能性を示した。

F. 被告の第一修正に基づく異議申し立て

1.      Napster, Inc. によれば、要求された差止命令は、その言論の自由、およびそのサービスに依存するユーザーおよび未署名アーチストの言論の自由に対する事前抑制である。この第一修正の論理は、被告はそれ自体は著作権対象物ではない電子的ディレクトリーを提供しているという事実に焦点を当てる。ディレクトリーは第一修正の保護を与えられてきた。Princeton Community Phone Book, Inc. v. Bate, 582 F.2d 706, 710-11(第3巡回)(第一修正は、ディレクトリーのリストに、新聞広告と同じ保護を与えると判断)裁量上訴棄却、439 U.S. 966 (1978) 参照

2.      過大な差止命令は第一修正に関係するかもしれないが、言論の自由の懸念は「公正使用の法理によって保護されそれと同一の広がりをもつ」。Nihon Keizai Shimbun, Inc. v. Comline Bus. Data, Inc., 166 F.3d 65, 74(第2巡回、1999); Religious Tech. Ctr., 907 F. Supp. at 1377(他の点では適切である場合、著作権侵害の責任を課すことは、必ずしも第一修正の問題を引き起こさない。公正使用の抗弁がこの争点を含んでいるからであると述べる)。本法廷はすでに、原告はNapsterサービスの、その存在にとってわざとらしくも周辺的でもない公正使用の差止めを求めていないと判断した。

3.      両当事者は、サービスの侵害部分と非侵害部分の可分性の程度を争う。Napster, Inc. の暫定最高経営責任者Hank Barryおよび技術担当副社長Edward Kesslerは、要求された差止命令は、被告にそのシステムから、原告が所有していないものを含むすべての曲の排除を強いるという実質的な効果をもつとの意見を述べた。Barry供述 ¶ 13; Kessler供述 ¶ 39参照。この見解においては、差止命令はNapsterサービスを停止させるか、もしサービスが完全に停止されないとすれば、、ピア・トゥ・ピアのファイル共用を、被告が内容を指示するモデルに強制的に替えることになる。Kessler供述 ¶ 39参照。Napsterは差止命令の結果として、類似のサービスに対する利点を失うだろうとBarryは主張する。Barry供述 ¶ 13参照

     一方、原告は、Napsterのニュー・アーチスト・プログラム、掲示板、チャット・ルーム、およびビジネスや科学研究のためのファイル共用アプリケーションは、要求された救済を本法廷が認めたとしても実行可能であり続けると主張する。原告の反対訴答at 19; Daniel Farmer供述 ¶¶ 3-4参照。原告の専門家Daniel Farmerは、Napsterサービスを、共用が認められたミュージック・ファイルに限定する幾つかの実行可能な方法を示唆する。第一に、被告は認められた曲のデータベースをコンパイルし、ユーザーがNapsterサービスにログオンしたときにそのハード・ドライブ上でファイルを読むためのソフトウェア・プログラムを書くことができる。そのプログラムはファイル名と、認められたリストを比較し、合致したファイルのみをNapster上にアップロードすることができる。Farmer供述 ¶ 3参照。あるいは被告は、認められたリストから除外されたファイル名をユーザーがサーチすることを妨げるソフトウェア・プログラムを書くこともできる。同上参照

         Napster, Inc. がそのサービスの侵害部分と非侵害部分を分離できない場合には、その第一修正に基づく主張は成立しない。被告が「オール・オア・ナッシングの状態」に自分を閉じ込めた場合には、裁判所は、第一修正に基づく異議申し立てを支持しない。Dr. Seuss Enters., L.P. v. Penguin Books USA. Inc., 109 F.3d 1394, 1406(第9巡回)(被告が訴訟の開始後に本の出版を行ったので、Dr. Seussポエムのスタイルのパロディーを含む本全体を差し止める)裁量上訴棄却118 S. Ct. 27 (1997)。Napster, Inc. が、侵害を促進しないディレクトリーとしてその機能を提供することが技術的に不可能な場合でも、本法廷は原告の著作権を保護する措置を取らなければならない。たとえばOrth-O-Vision, Inc. v. Home Box Office, 474 F. Supp. 672, 686 n.14(ニューヨーク州南部地区、1979)参照

G. 著作権ミスユースの抗弁

1.     被告は実質的に、暫定的差止命令の申し立てに対して、エクィティー上の抗弁として反トラストの論理を提起する。著作権ミスユースという題目の下でNapster, Inc. は、原告は、(1) 自身と競合する未署名アーチストの曲の流れを制限し、(2) インターネットでの音楽の流通をコントロールすることによって、著作権の範囲を越えてその独占の拡大を求めていると論じる。原告著作権者による反トラスト違反とされるものは、一般に、侵害訴訟における有効な抗弁とはならず、裁判所に、差止命令の付与を思い止まらせるものではない。4 Nimmer on Copyright § 13.09 [A] (Orth-O-Vision, 474 F. Supp. at 689などを引用)参照。

2.      さらに、被告が引用する判例のほとんどは、著作権の独占を、制限付きまたは排他的なライセンスによって拡大しようとする、不適切な試みを扱っている。たとえばPractice Management Info. Corp. v. American Med. Ass'n, 121 F.3d 516, 521(第9巡回)(1997)、修正 133 F.3d 1140(第9巡回、1998)(競争相手の製品の使用を禁じるライセンス契約をミスユースと認定)、および裁量上訴棄却 522 U.S. 933 (1997) 参照また、たとえばAlcatel USA, Inc. v. DGI Tech., Inc., 166 F.3d 772, 792-95(原告に著作権のない製品に対する支配を認めるライセンス契約に基づくミスユースの抗弁を棄却した地裁の判決を覆す)、再審理および大法廷での再審理棄却、180 F.3d 267(第5巡回、1999); Lasercomb Am., Inc. v. Reynolds, 911 F.2d 970, 978-79(第4巡回、1990)(実施権者に対して自社製品の開発を禁じる排他的ライセンス条項はミスユースを構成すると結論付ける)参照。原告は過度に制限的なものはもちろんのこと、被告にいかなるライセンスも許諾していない。Conroy供述 ¶ 4; Cottrell供述 ¶ 5; Eisenberg供述 ¶ 21; Kenswil供述 ¶ 15; Vidich供述 ¶ 8; Stoller供述 ¶ 11参照

3.      したがって本法廷は、著作権ミスユースの抗弁を拒絶する。

H. 権利放棄

1.      Napster, Inc. は、原告は (a) インターネットでのMP3ファイルの急増を促進し、(b) 自身がデジタル・ダウンロード市場への参入を計画しているので、著作権による保護を受ける権利を放棄したとも論じる。これらの論理は無効である。

         被告は、原告レコード会社のインターネットでの取引、ならびにリッピング・ソフトウェア、特注CD、[26] および暗号化されていないMP3ファイルを聞けるプレーヤー[27] を提供するソフトウェア会社に関係した証言録取書抜粋を提出した。たとえば1 Pulgram供述、証拠物A(Conroy証言録取書)at 51:8-52:16、証拠物B(Cottrell証言録取書)at 141:10-142:142参照。原告のオンライン・パートナーのいずれも、この訴訟の当事者ではない。しかし少なくとも原告の一社Sonyは、その頒布が認められたものか否かに関わらず、ダウンロードされたMP3ファイルを聞けるデバイスを販売している。同上、証拠物E(Eisenberg証言録取書)at 44:5-48:10、証拠物220参照

         この限定された証拠は、本法廷に、レコード会社が現在その知的所有権を侵食しているモンスターを作り出したとは納得させない。[28] 原告は寄与侵害に関してそのビジネス・パートナーを訴えていないが、彼らは通常、無断のリッピングを思い止ませるように求め、その契約のセキュリティー部分を作成した。たとえば証拠物A(Conroy証言録取書)at 17:13-23, 18:22-19:6, 38:3-22, 51:8-14; 証拠物B(Cottrell証言録取書)at 135:24-136:7参照。原告がMP3ファイルの急増を促進した際に、商業的ダウンロード事業のパートナーを求め、インターネットでの販売を計画したファイルの音楽プレーヤーを開発する以上のことをしたとは、被告は示せていない。[29] 原告は、販促の目的で少数のMP3ファイルを無料で頒布した際、特にこれらのファイルの多くは自動的に「時間切れ」になるので、全面的な侵害を招こうとはしたのではなかった。Conroy供述 ¶ 9-17; Cottrell供述 ¶ 15; Eisenberg供述 ¶ 13; Kenswil供述 ¶ 12; Vidich供述 ¶¶ 7 (d), 8参照

         被告はその権利放棄の論理を裏付けるために、主として、黙示的ライセンスが関係する不適切な判例を引用する。たとえばEffects Assocs., Inc. v. Cohen, 908 F.2d 555, 559-60(第9巡回、1990)(原告が被告の要求で作品を制作し、被告がそれをコピーし頒布するという趣旨で作品を被告に与えた場合に、黙示的ライセンスを認定)、裁量上訴棄却、498 U.S. 1103 (1991) 参照。本件での証拠は、黙示的ライセンスの存在を明らかにしていない。実際、RIAAは被告に、Napster上でのそのメンバーの著作権対象音楽の提供に異議を唱える、明示的な通知をしている。Creighton 12/3/99供述、証拠物D参照

I. 著作権登録の証拠の未提示

1.      複数の作品の侵害を主張するには、原告は作品を具体的に指摘し、著作権登録の証拠を提示しなければならないと被告は論じる。引用された法律の条項17 U.S.C. 411 (a) 項は、一定の例外を定める:「何らかの作品に対する著作権侵害の訴訟は、著作権の登録がこのタイトルに基づきなされるまでは提起できない」。17 U.S.C. § 411 (a); Kodadek v. MTV Network, Inc., 152 F.3d 1209, 1211(第9巡回、1998)も参照。著作権侵害の主張は2つの要素からなる。即ち、(a) 有効な著作権の所有、および、(b) 著作権対象作品のオリジナルの要素の複製である。Feist Publicaitons, Inc. v. Rural Telephone Serv. Co., 499 U.S. 340, 361 (1991) 参照

2.      Napster, Inc. は拘束しない判例、Cole v. Allen, 3 F.R.D. 236, 237(ニューヨーク州南部地区、1942)の意味を誇張する。Cole訴訟においては、被告は6つの本からエピソードをコピーしたと告発された。Coleは、どの部分がコピーされたかを特定せずに本のタイトルを記しただけだったので、十分な具体性をもって侵害の主張を訴答できなかった。本件では原告は、その全体が侵害されたと告発する作品を記載した2つの別表を添付した。別表Aは登録の証明を含む。別表B(1972年以前に録音された作品)は、内容が州法によって規律されるので含んでいない。したがって、所有する著作権対象音楽のすべてを特定するのはわずらわしく、不可能かもしれないとの主張にも関わらず、原告は少なくとも、訴訟対象の作品を説明するための最小限の努力はした。

3.      さらに、Walt Disney Co. v. Powell, 897 F.2d 565, 568(特別区巡回、1990)において、コロンビア特別区巡回裁判所は、原告が所有していたが訴訟には出されていない作品を対象とする本案的差止命令を認めた。Walt Disney訴訟で裁判所は、「責任が侵害者にとって不利に判定され、継続的な侵害の歴史があり、将来の侵害の恐れがかなり残っている」場合には、かかる幅広い差止命令が適切であると認定した。同上。本件では、原告の著作権対象音楽の無断共用が過去に多量に生じたことが、証拠によって証明される。被告の、侵害者を停止させる能力の増強とされるものにも関わらず、Napsterは、違法にファイルをダウンロードしアップロードするために使用され続けている。そしてユーザーが第一審の前に無料の音楽を得ようと急ぐので、本法廷は、原告の著作権対象物が被害を受けることを予測する。したがって本法廷は、訴訟で特定されたか否かに関わらず、原告の著作権対象作品を対象とする差止命令を下すことが必要だと認定する。

J. 回復不能な被害

1.     原告は、その寄与侵害および代位侵害の主張の実体的事項に関して勝訴する相当の可能性を示したので、回復不能な被害の想定を受ける権利をもつ。Micro Star, 154 F.3d at 1109参照

2.      本法廷は、被害は些細であると立証することによってこの想定に反駁したという被告の主張を棄却する。レコード会社の経営陣の供述はTeece報告書と組み合せて、原告はデジタル・ダウンロード市場に投資をしており、その事業計画は無料で同一の製品を提供するサービスによって脅かされることを示す。Conroy供述 ¶¶ 9-18; Cottrell供述 ¶¶ 6-17; Eisenberg供述 ¶¶ 9-22; Teece報告書at 14-18; Vidich供述 ¶¶ 7-10参照。さらに、本法廷は大学生のみを対象とする調査の限界は認めるが、Jay報告書は、Napsterの使用が、特に熱心なユーザーのCD購入を抑制するという傾向を示唆する。Jay報告書at 4, 18参照

K. 苦難のバランス

1.      本法廷は、要求された救済が被告の事業を破綻されるという被告の嘆きに大きな重みを置くことはできない。Sun Microsystems, Inc. v. Microsoft Corp., 188 F.3d 1115, 1119(第9巡回、1999)参照。そのユーザー基盤を破壊し、またはそのサービスを技術的に不可能にするために、[30] 狭い差止命令でも十分にNapster, Inc. を骨抜きにするとしても、侵害者の事業の利害は、権利保有者の著作権保護に対する権利に優先しない。そのサービスの侵害部分と非侵害部分の分離が不可能であるとしても、それは原告の救済を否定する、あるいは執行停止を命令する有効な理由とはならない。Dr. Seuss, 109 f.3d at 1406参照

         暫定的差止命令によるNapster, Inc. の破壊は、原告の著作権対象作品の、被告自身が認めたように1秒当たり1万ファイルもの、多量の無断のダウンロードおよびアップロードの統計的証拠に比較して、推定上のものである。Kessler供述 ¶ 29参照。暫定的差止命令がなければ、Napsterのユーザー、および評判によって引き付けられた新参者が、第一審の前に可能な限り多くの無料の音楽を得るために群がることによって、これらの数字は増加すると信じる十分な理由がある。

2.      Napster, Inc. は、CDでもダウンロード用フォーマットでも、将来のSDMI仕様がその音楽を保護するので、そのサービスは原告に被害を与えないと主張する。[31] 被告は、SDMI準拠フォーマットが利用可能となった場合にはそれをサポートするつもりであるとされる。Kessler供述 ¶ 37参照。しかし、この論理には2つの決定的な欠陥がある。第一に、SDMIの保護が機能すると想定しても、それは原告の発売にしか影響しない。訴状の別表AとBの著作権対象物も、原告が所有する他の現存の音楽も、対象とはならない。1 Pulgram供述(Vidich証言録取書)at 54:6-55:4、59:8-62:10参照。第二に、SDMI仕様はまだ始まっていないので、現時点、つまり暫定的差止命令を求める時点で原告の回復不能な被害を避けることはできない。同上at 59:8-62:10参照。早くても2000年末に実施予定の権利保護システムは、今年の夏と秋における、インターネットでの原告の著作権対象物の違法な流れの阻止には役立たない。

3.      したがって、本法廷が苦難の斟酌を要求されるとしても(原告は深刻な問題を提起し、実体的事項について勝訴する強い可能性を示したので斟酌は実際には要求されないが)、原告は暫定的差止命令を求める申し立てにおいて勝訴する。

III. 結論

以上の理由により、本法廷は、Napster, Inc. に対する暫定的差止命令を求める原告の申し立てを認める。被告はここに、暫定的に、権利保有者の明示的許諾なしで、連邦法または州法によって保護される原告の著作権対象の音楽作品および録音の複製、ダウンロード、アップロード、送信もしくは頒布に関わり、または他の人のかかる行為を促進することを差し止められる。この差止命令は、原告が所有するすべてのかかる作品に適用され、訴状の別表AおよびBに記載されているものに限定されない。

原告は、Napsterシステムで提供されている音楽の70パーセント以上の著作権を所有していることを、説得力をもって示した。Hausman供述 ¶ 8参照。被告は、前例のない規模での違法コピーに寄与したので、差止命令に適合する手段を開発する責任を負う。被告は、被告もNapsterのユーザーも使用または頒布する許諾をもっていない、原告が所有する作品が、Napster上でアップロードまたはダウンロードされないことを保証しなければならない。本法廷は原告に、著作権を所有する作品を特定する際に被告に協力することを命令する。この目的のため、原告は2000年9月5日までに、権利が確認できる最も便利な方法を説明した書面のプランを提出しなければならない。本法廷はまた、原告に、この差止命令が破棄されまたは無効とされた場合に被告にその損失を補償するための、500万ドルの担保金証書を提出するように命じる。[32]

そのように命じられる。

日付:                                                                                                  ______________________________________
MARILYN HALL PATEL
首席判事、合衆国地方裁判所


後注



[1]      以下、本法廷は「音楽」という用語を、特に別段のことが記されていない限り、音楽作品および録音双方を含むように使う。

[2]      話を明確にするために、本法廷は被告のインターネット会社を「Napster, Inc.」と呼ぶ。「Napster」という用語は、そのソフトウェア、サーバー、サーチ機能、および指標付け機能を含むがそれに限らない、Napster, Inc.の総合サービスを指すために使われる。「Napster」が形容詞として登場するときは、その形容詞が修飾するサービスの部分は文脈から明確なはずである。「Napsterのユーザー」という用語は、ファイルをダウンロードおよび/またはアップロードするためにNapsterのソフトウェアを使用する個人を指す。

[3]      両当事者は表題の中で、被告としてEileen Richardsonをときに含めているが、彼女は2000年5月24日の合意により、本訴訟から外されたことを本法廷は指摘しておく。

[4]      この覚書および命令の中で、両当事者が依拠しているか、本法廷の認定および結論を説明するのに必要な場合には、本法廷は供述、証言録取書または保護命令に基づき提出された他の資料に言及しそこから引用する。この理由で開封された文書には以下のものが含まれる:Russell Frackman供述(vols.1 & 2)、Kevin Conroy供述、Richard Cottrell供述、Mark Eisenberg供述、Lawrence Kenswil供述、Paul Vidich供述、David J.Teece供述、Edward Kessler供述、Laurence F. Pulgram供述(vols.1 & 2)、Daniel Farmer供述、Russell Frackman反対供述、Julia Greer反対供述、およびDavid Lambert反対供述。このリストには、社内計画、証言録取記録または本法廷が依拠したその他の資料を含むすべての裏付けの証拠物が含まれる。以前は保護命令の対象になっていたがこの覚書および命令で引用されたその他の文書も、開封されたとみなされる。

[5]      被告は、適切に認証されておらず、また「現在のNapsterの仕事に見合っていない」との根拠で、前最高経営責任者Eileen Richardsonの証言録取書に関するこの証拠物に異議を唱える。原告の証拠at 10に対する被告の異議。本法廷は、被告の無数の異議(その多くには根拠がない)のそれぞれについて裁定する意志はない。しかし、Richardsonはこの文書を再読したと証言したこと、および1999年10月付けであることを指摘する。彼女はその内容を宣誓の下で確認し、被告の弁護士は適切さ、基礎または真正さに関して、証言録取中にその文書に異議を唱えなかった。被告の初期の事業計画は、Napsterのサービスの初期の運営、ならびにNapster, Inc.の経営陣の認識および目標についての事実を明らかにしているので、本訴訟にとって意味がある。したがって、Richardson証言録取書の証拠物127は許容される。

[6]      原告の専門家、スタンフォード大学の統計学教授Ingram Olkin博士は、自分の調査を2つのプロジェクトに分割した。ユーザー・プロジェクトにおいては、ユーザーおよびファイル名のサンプル・リストが、4日間、毎時間取られた。調査者は、28,000のサンプルから1,150のユーザーのサブサンプルを取り出し、その1,150のユーザーすべてが、少なくとも2つの著作権対象曲の共用を申し込んだと判断した。同上at 4-5, 7参照。ダウンロード・プロジェクトでは、8つの別々の時間に5分間、ダウンロードを行い、約574,185ファイルの集団から1,150の曲のリストを作成した。同上at 6参照。原告または他の著作権者は、その1,150のファイルのうち1,002(87.1パーセント)の権利を所有または管理していることを、Olkinは発見した。また37(3.2パーセント)は著作権対象であり、無断で頒布されたと思われる。Olkin博士が、権利保有者から反対なして明確に提供されたと特定したファイルは3つ(0.26パーセント)のみであった。また108(9.4パーセント)は、結論を得るのに十分なデータがなかった。同上at 7参照。RIAAの海賊行為対策顧問Charles J.Hausmanは、Olkinがダウンロードしたデータベースの1,150ファイルのうちの834は、原告に所属または原告が管理しており、Napster上で無断で交換されたと判断した。Charles J. Hausman供述 ¶ 8参照

[7]      Parker証言録取書の証拠物254に対する被告の異議は、両当事者が取っている、不利な証拠に無差別的に異議を唱える戦略の典型である。このアプローチは本法廷にとって無駄であり負担である。被告は証拠物254を、会社がいかに「実際に運営されているか」には無関係であるとする。しかしNapster, Inc.の初期の事業戦略は、侵害活動の被告による認識、および市場への意図された影響などの争点に、明らかに関係する。

         被告は多くの実体のない異議を唱えるが、依拠する幾つかの文書の認証を原告はしていなかったと、正しい指摘もする。たとえば原告は、Shawn Fanningに、彼の証言録取の証拠物186と188の認証をさせなかった。原告はこの見過ごしの代価を支払った。本法廷は、Napster, Inc.は「レコード業界を完全に迂回し」、レコード店を廃れさせ、「CDに死を与える」ことを求めたと指摘している、「まだ煙を吐いている銃」であるはずの文書に依拠できない。1 Frackman供述(Fanning証言録取書)、証拠物186 at 00017; 証拠物188。

[8]      Sean Parkerは、NAP003687という番号のこの文書、つまりStephanie Nortonから他のNapsterの従業員への1999年10月28日の電子メールを、自分の供述の証拠物Aとして誤って特定したようである。実際はそれは証拠物Bである。その電子メールは、被告が未署名アーチストの関心を引こうと計画したことを示すが、提供されるMP3をリスト化する指数の生成に関して、短い表明を含んでいる:「我々が著作権を侵害していないとRIAAが考えるように、しばらくは我々は未署名アーチストのためのこれをすべきである」。Parker供述、証拠物B(第二の強調追加)。被告の内部文書ではしばしばそうであるように、被告が新人アーチストのプロモーションを真の目標とみなしていたのか、単なる目眩ましと考えていたのかは、曖昧である。

[9]      ウェブサイト・バージョンとソフトウェア・ベース・バージョンという、被告のニュー・アーチスト・プログラムの2つの側面の説明は、下記、事実認定の (C) (12) 項を参照

[10]     被告はまた、MP3ファイルをユーザーのハード・ドライブで聞くことができるオーディオ・プレーヤーも提供する。被告の略式調停を求める申し立てを裏付けるEdward Kessler反対供述 ¶ 29参照。いずれの当事者も、暫定的差止命令の必要性に関するその立場の裏付けにおいて、そのオーディオ・プレーヤーの機能を説明しなかった。しかしNapsterのユーザーが音楽をアップロードまたはダウンロードするときに生じる告発されたコピーには、そのプレーヤーはほとんどあるいはまったく関連しない。したがって、要求された差止命令には無関係である。同上参照。消費者はCDをリップし、その結果のMP3ファイルをNapsterのプレーヤーで聞くかもしれないが、本法廷は、家庭からオフィスへのスペース・シフトについての被告の論理を棄却したのと同じ理由で、この活動がNapsterの実質的な非侵害の活動を構成するとの示唆を棄却する。本法廷はまた、このオーディオ・プレーヤーはユーザーがすでに保有するミュージック・ファイルしか聞けないので、試聴には使えないことも指摘する。

[11]     BMGのラベルには、原告AristaRecords、LaFaceRecordsおよびRCA Recordsが含まれる。Conroy供述 ¶ 1参照。BMG Musicも本訴訟の原告の1人である。

[12]     もしかかる音楽が技術的に保護されないならば、個々の消費者はデジタル・フォーマットで1つのプロモーション用コピーを取得しただけで、著作権対象物の世界全体への頒布者になれる。Teece報告書at 13参照

[13]     Fineの調査は、米国の以下の3つのタイプの店舗での小売音楽販売の傾向を追跡した。即ち、(1) Quality Education Data(上質教育データ)から取得したリストにあるいずれかの大学から1マイル以内に位置するすべての店舗、(2) Napsterの使用を禁じた大学のリストにあるいずれかの大学から1マイル以内に位置するすべての店舗、および、(3) Yahoo Internet Lifeの「1999年最も配線の進んだ大学トップ40」に入るいずれかの大学から1マイル以内にあるすべての店舗である。Fine報告書で働いた調査者は、後の2つのカテゴリーの音楽売上合計と、(1) 全国合計および (2) 最初のカテゴリー「全大学店舗」での売上とを比較するために、Soundscan Point of Saleのデータを使った。報告書は1997年、1998年、1999年および2000年の第1四半期(「Q1」)の小売販売を追跡した。Fine報告書at 2-4参照

[14]     Fineの結論はNapsterに限定されず、むしろオンライン・ミュージック・ファイル共用全般の影響を評価したものである。同上参照。全国の売上はFineが調査した四半期で「かなり、そして一貫して」増加したが、大学近辺の店舗での売上は減少し、「最も配線の進んだ大学トップ40」および「Napster禁止」集団での売上は、「全大学店舗」カテゴリーの店舗よりもさらに急速に減少した。同上参照

         本法廷は、専門家意見の許容性に関するその別個の命令で、JayおよびFineの報告書の限界を指摘した。各報告書の欠陥にも関わらず本法廷は、Napsterのユーザー全体と比較しての大学生の音楽の購入とダウンロードの習慣についてのJayの洞察に依拠し、Fine報告書を、Jayの認定を強固にするのに適切であるとみなす。

[15]     専門家の報告書の許容性に関する本法廷の覚書と命令には、Fader報告書にある欠陥の詳しい議論が含まれる。本法廷が指摘した欠点は、たとえば、自分が行ったものではないジャーナリズムの記事や調査へのFaderの大きな依拠、彼の報告書の中心が、離れて監督していただけの調査であるという事実、そして調査回答者およびその回答の統計的内訳を示す表の欠如である。

[16]     サイバースペースの他の場所で無料MP3ミュージック・ファイルが入手できることは、Napsterへの差止命令が、原告の問題にとっての完全な治療薬にはならないことを意味する。しかし、第三者も違法活動を促進しているとの議論は、著作権の寄与侵害および代位侵害の主張に対する有効な抗弁にはならない。

[17]     被告は、原告が被害を受けていない、あるいは些細な被害しか受けていないことの立証は、回復不能な被害の推定への反駁となるとの命題のために、Cadence Design Systems, Inc. v. Avant! Corp., 125 F.3d 824, 829(第9巡回、1997)裁量上訴棄却、523 U.S.1118 (1998) を引用する。Cadence判決におけるかかる表現は、純粋な傍論を構成する。さらに、Cadence訴訟の法廷が引用するNimmer on Copyrightの表現は、コピーの量が些細であることを立証することによって実質的な類似性の告発を打ち負かすことを扱っている。被告は、著作権対象の曲全体のダウンロードが些細なコピーであり、Napsterを使った音楽の取得はCD販売には置き替わらないとは示唆していない。被告の反対摘要書at 29参照

[18]     被告は、1992年オーディオ家庭録音法についてのその誤った論理を補強するために、技術評価局(「OTA」)レポートを引用する。下記注19を参照。OTAレポートは明示的に、「公衆ではなく、家庭およびその通常の友人たち」による使用を考えていると、原告は指摘する。原告の反対訴答at 4(米国議会、OTA、著作権および家庭コピー:技術が法律に挑戦するを引用)。家庭使用のこの定義に拘束されるわけではないが、このことは被告の立場の欠陥を示唆する。

[19]     被告の反対摘要書は、混乱した論理から始まる。1992年オーディオ家庭録音法、17 U.S.C.第1001条−第1010条(「AHRA」)が、音楽をスペース・シフトするためのNapsterの非営利的使用を免責するとの命題のために、Recording Industry Association of America v. Diamond Multimedia Systems, Inc., 180 F.3d 1072, 1079(第9巡回、1999)を引用する。AHRAは本件には無関係である。原告のレコード会社も音楽出版者も、AHRAに基づく主張を提起していない。さらに、第9巡回裁判所はDiamond Multimedia判決において、AHRAがMP3ファイルのダウンロードを対象とするとは判断しなかった。

         Diamond Multimedia訴訟は、Rioポータブル音楽プレーヤー、つまりMP3ファイルを受け取り記憶しリプレーできる携帯用デバイスの生産と流通を差し止めるための、Recording Industry Association of America(「RIAA」)によるAHRAに基づく訴訟であった。Diamond Multimedia, 180 F.3d at 1074参照。第9巡回裁判所は、RioプレーヤーはAHRAの制限に服するデジタル・オーディオ録音装置ではないと判断した。同上at 1018。コンピューターも、そのハード・ドライブ・デジタル・オーディオ録音装置もそうではない。同上at 1078参照Diamond Multimedia判決は、すでにユーザーのハード・ドライブにあるファイルをスペース・シフトするため、または携帯可能にするためにRioでコピーをすることは、「同法の目的[つまり個人的使用の促進]と完全に合致した、典型的な非営利の個人的使用」を構成するとの意見を述べた。同上at 1079。しかしこの傍論は限定的な意味しかもたない。原告はAHRAに基づく請求をしているわけではないので、AHRAの目的や立法経過は、Napster, Inc.に対する暫定的差止命令の適切さを規律しない。さらに、以下で説明するように、本法廷は、スペース・シフトがNapsterのサービスの、実質的で非侵害の利用を構成するとは納得しない。Diamond Multimedia判決において第9巡回裁判所は、公正使用の法理について議論しなかった。

         本法廷は、AHRAの立法経過、Diamond Multimedia判決における登録、および裁判所による確知には無関係または不適切とみなされる他の資料の確知を求める被告の要請を拒否する。

[20]     被告は、Vault Corp. v. Quaid Software, Ltd., 847 F.2d 255(第5巡回、1988)に依拠して、実質的な非侵害の使用法が1つでもあれば寄与侵害の責任を排除すると論じる。Quaidのコンピューター・ディスケットの1つの機能であるRAMKEYは、異議のない使用法があった。消費者はVaultの海賊行為防止ソフトウェアの、Vaultのプログラムが不注意で破壊された場合のための保管用コピーを作るのに使えたからである。この1つの使用法に基づき、第5巡回裁判所は、第三者が実際に直接侵害に関与してはいたが、著作権の寄与侵害はないと判断した。同上at 262参照。他の法域は、製品の主たる目的が違法である場合のVault判決のアプローチに同意していない。Cable/Home Communication Corp. 902 F.2d at 846; General Audio Video, 948 F.Supp. at 1456参照。第5巡回裁判所の意見は本法廷を拘束しない。さらに、第5巡回裁判所でさえも、「Quaidの製品の他の特徴であるCopywriteはRAMKEYなしでは商業的価値をもたない」ので、Copywriteの合法的機能を考慮することを拒否した。Vault, 847 F.2d at 264 n.16。Napsterのサービスは明らかに、著作権対象のポピュラー音楽の利用可能性がなければ、ほとんど商業的価値をもたない。

[21]     被告はたとえば、その技術は事業、教育および研究における共同作業のために使えると指摘する。被告の反対摘要書at 9 n.10参照

[22]     MP3ファイルには著作権表示も透かしもない。Lisi供述(Tyger報告書)at 37-47参照。複数のアーチストが1つの曲のタイトルを使うことができる。そして同一作品の複数の録音が異なる認証をもつこともある。同上at 29参照

[23]     新聞記事は伝聞であり、そこに報告されている表明は二重の伝聞だという理由で、被告はFrackman供述の証拠物Mに反対する。原告の証拠に対する被告の異議at 12参照。しかし被告は、Napster, Inc.がその知的所有権の侵害に関してThe Offspringを訴えたという、主張されている事項の真偽を争うようには見えない。実際、異議に関する被告の第二の根拠は、かかる訴訟が提起されたことを指摘している。同上参照。訴訟が著作権ではなく商標に関係しているのでこの証拠物は除外されるべきならば、被告は商標訴訟を提起したことを実質的に認めていることになる。

[24]     この認定は、デジタル・ミレニアム著作権法、17 U.S.C.第512条の保護を惹起させようとする被告の頑固な試みを終わらせる。Napster, Inc.はその反対摘要書の中で、第512条 (d) が適用可能な承認領域を提供すると本法廷を説得しようとする。しかしこの項は、「物または活動が侵害しているとの実際の認識」をもっている人、§ 512 (d) (1) (A)、および「侵害活動が明らかにわかる事実または状況に気付いている」人、§ 512 (d) (1) (B) を、明示的に保護から除外している。被告は、第512条 (d) が寄与侵害者を免責するとは、本法廷を説得できなかった。

[25]     被告はParker証言録取書の証拠物251に異議を唱えるようだが、そうする根拠を示さない。原告の証拠に対する被告の異議at 11参照。本法廷は、被告が異議を唱える理由を推測することは拒否する。証拠物251は、被告が適切な異議を唱えなかったので、許容されたとみなされる。

[26]     特注CDは、消費者がコンピューター・ハード・ドライブからのMP3ファイルをCDフォーマットに変換できるようにするデバイスであるCDバーナーを使って制作できる。たとえば1 Pulgram供述、証拠物A(Conroy証言録取書)at 14:10-17参照

[27]     プレイヤー・ソフトウェアは、消費者がMP3ファイルを聞くことを可能にする。かかるソフトウェアはインターネットでおそらく無料提供され、PCメーカーが販売する組み込みソフトウェアの一部であることもある。たとえば1 Pulgram供述、証拠物A(Conroy証言録取書)at 14:21-17:12参照

[28]     たとえばBMGやSonyのような原告は、CDリッピング・アプリケーションへのリンクを提供するサイトである、Listen.comと契約を締結した。証拠物A(Conroy証言録取書)at 49:22-51:20、証拠物295; 証拠物E(Eisenberg証言録取書)at 135:2-24参照。しかしBMGの代表Kevin Conroyは、自分の証言録取において、BMGはそのオンライン・パートナーが「公認リッピングのみを提供する」ことを奨励し、「[BMG]アーチストの音楽を合法的かつ安全確実に営業し販促し販売するために」BMGはかかるサイトと契約を結んでいると述べた。同上at 43:20-24, 51:8-14。

         EMIが株式を所有しているMusicmaker.comの訴訟においては、消費者は1つのトラックを購入し、それを特注CDに焼き付けることができる。同上、証拠物B(Cottrell証言録取書)at 141:10-142:17参照。Musicmaker.comが海賊版音楽の使用を促進しているかは明確ではない。同様に、UniversalはReal Jukeboxと、商業的ダウンロードに関連した契約を締結した。これはSecure Digital Music Initiative(「SDMI」)の第一段階が対象としなかったものである。同上、証拠物F(Kenswil証言録取書)at 54:8-56:25参照下記の注31(SDMI仕様を議論)も参照。Universalとの契約に基づきReal JukeboxはSDMI準拠となったが、SDMI仕様が認める範囲内で、暗号化されていないファイルを聞くこともできる。被告は、Universalが許諾が得られていない著作権対象音楽を聞くためにReal Jukeboxの使用を奨励したとの決定的な証拠を提示していない。

         最後に、Sony VAIO MUSIC Clipは、MP3、ATRAC3あるいはWAVのファイルのダウンロード、配列、保管およびプレーバックを可能にするSony製品と思われる。しかし、VAIO MUSIC Clipは無断のファイルを検閲することはできないが、ある広告は、「ソフトウェアの安全確実な音楽ダウンロード能力」を宣伝し、消費者は、音楽ウェブサイトに「間もなく登場するメジャーのアーチストやレコード・ラベルの権原の波を購入」しなければならないと指摘している。同上、証拠物E(Eisenberg証言録取書)at 44:5-48-10、証拠物220(強調追加)参照

[29]     「スーパー頒布」に言及したUniversalの内部文書は、被告の立場の最も説得力のある証拠となる。同上、証拠物F(Kenswil証言録取書)、証拠物257 at U0866参照。「スーパー頒布」とは、消費者およびその友人たちの連鎖を通じての、ウイルス的頒布を意味する。同上at45:1-4, 19-25参照。しかしLawrence Kenswilはその証言録取書において、Universalは、消費者が製品に対して支払いをし、権利保有者の許諾は送信前に取得されているというウイルス的頒布のモデルを考えていたと指摘した。同上at 45:5-46:7参照、かかるシステムが結局、Napsterの何らかのバージョンを含んでいるかもしれないということは、原告の著作権の放棄を立証しない。

         Universalの他の内部計画によれば、「目標は単にNapsterなどに並ぶことではなく、彼らを越えることである」。同上、証拠物258 at U0840。Universalは自身の利益のためにNapsterを接収しようとしたと、被告は論じる。しかし戦略的計画は「安全確実(secure)」という用語を繰り返し使い、その「安全確実な・・・中核技術」を強調し、成功のバロメーターとして、「ユーザーにより認識された、安全確実なコンテンツの魅力」に言及する。同上(強調追加)。この文書のどこにも、Univesalがその音楽の無料での無制限のダウンロードを推進しようと計画したとは述べられていないし、含意もされていない。

[30]     Napsterのサービスには崇拝者集団があるようなので、暫定的差止命令が被告のユーザー基盤を破壊するとは本法廷は考えない。Napsterが暫定的差止命令を受けている間に、ユーザーがGnutellaなどの他のサービスに移ったとしても、特に、競争相手よりもより多くの音楽、そしてより効率的なサーチ手段を提供しているとの被告の主張を考えれば、戻ってくる可能性は大きい。

[31]     Secure Digital Music Initiative、「SDMI」とは、デジタル媒体の頒布を保護する技術仕様を開発するために関係者を集めたフォーラムである。Kessler供述 ¶ 36参照。SDMIは将来の、しかし2000年末より早くはないある時点で、CDやデジタル・ファイル・フォーマットなどのコンテンツ媒体に対する仕様を選択する。1 Pulgram供述、証拠物N(Vidich証言録取書)at 59:8-62:10参照。SDMIの第一段階は、携帯の物理的デバイスを扱ったが、これらのデバイスが暗号化されていないファイルを処理することはまだ認めた。1 Pulgram供述、証拠物F(Kenswil証言録取書)at 54:8-54:19参照

         一般的に言えば、SDMIの次の段階は、デジタルの権利管理技術の2つの形式に関係する。即ち暗号化と透かしである。Kessler供述 ¶¶ 35, 36; 1 Pulgram供述、証拠物N(Vidich証言録取書)at 59:8-62:10参照。暗号は、ファイルの内容にアクセスするには消費者のハードウェアの通し番号などの「キー」を必要とする形で、ファイルをコード化する。Kessler供述 ¶ 36; 1 Pulgram供述、証拠物N(Vidich証言録取書)at 53:10-56:8参照。しかし暗号技術には限界がある。たとえば、暗号化されたCDは、現存のCDプレーヤーでは暗号を読めないので使えない。1 Pulgram供述、証拠物N(Vidich証言録取書)at 52:21-53:2参照。したがって消費者は、暗号化されたCDの音楽を聞くために新しいCDプレーヤーを購入しなければならない。同上at 53:22-54:4参照。暗号技術はまた、現存のディスクには影響しないので将来の保護しか提供しない。同上、54:6-55:4参照

         透かしは「ビット」、つまり聞こえないマークをコンテンツ媒体に埋め込む。将来のSDMIに準拠したデバイスまたはソフトウェア・プレーヤーは、それらのビットの有無を読み取ることができ、それに基づきコピーを管理する。Pulgram供述、証拠物N(Vidich証言録取書)at 57:2-9; 59-8-62:10参照。コピー管理の1つの方法は、消費者に、そのSDMI準拠デバイスにCDをコピーすることは認めるが、さらなるコピーまたはインターネットでの送信は阻止するというものである。同上at 60:14-25; 61:11-62:10; 証拠物227 at TW 0556742参照。幾つかの原告レコード会社は、将来の、しかし年末以前ではないある時点で、SDMI仕様に準拠した透かし技術を実施することを意図している。たとえばPulgram供述、証拠物N(Vidich証言録取書)at 59:8-62:10; 証拠物B(Cotrell証言録取書)at 99:24-101:4 (EMD) 参照。しかし透かし技術にも限界がある。たとえば、SDMIの第一段階に準拠したデバイス、そしてReal Jukeboxのような人気のあるデジタル音楽ソフトウェアは、透かしのないフォーマットしか聞けない。Pulgram供述、証拠物N(Vidich証言録取書)at 59:8-60:25、証拠物F(Kenswil証言録取書)at 54:8-56:19参照。最後に、暗号と同様、透かしは将来のコピーに対する保護しか与えず、現存の媒体には影響しない。なぜなら、(a) かかる媒体はコピーが合法であるか否かを判定するために検査できず、(b) 将来のSDMI準拠プレーヤーのみがその検査を行えるからである。1 Pulgram供述、証拠物N(Vidich証言録取書)at 59:8-62:10参照

[32]     2000年7月26日、本法廷は被告に、2000年7月28日夜12時までに暫定的差止命令に従うように命令した。しかし7月28日、第9巡回裁判所は差止命令の執行を停止した。同日、原告は担保金証書を提出した。