MAINSTREAM LOUDOUN 他 対 LOUDOUN カウンティ図書館理事会他



民事訴訟 No.97-2049-A

ヴァ−ジニア州東部地区連邦地方裁判所アレキサンドリア部

1998 U.S.Dist.LEXIS 4725

判決 1998年4月7日
登録 1998年4月7日


処分:

被告各個人の除外を求める被告の申立を認める。請求理由不備による棄却を求める
被告の申立を一部認め、一部拒否する。交替的に略式判決を求める被告の申立を拒否する。

訴訟代理人:

原告 MAINSTREAM LOUDOUN, JUDY COUGHLIN, HENRY TAYLOR, ANN M.CURLEY,
   JUDITH RANDAL HINES, LOREN KROPAT, MARY C.DUCHATEAU,KATHRYN
   KERN-LEVINE, MICHAEL M.CLAY, JOHN S.WHITE, JEROME J.SMITH,
   MARY ADAMS 側:Ronald James Wiltsie, Hogan & Hartson, LLP,
   Washington, DC.

被告 JOHN J.NICHOLAS, JR., SPENCER D.AULT, RICHARD H.BLACK, CHRIS
   HOWLETT, MARY ELLEN VANNEDERYNEN, DOUGLAS HENDERSON側:
   Kenneth Carrington Bass, V, Venable, Baetjer And Howard, 
  McLean, VA

裁判官:

Leonie M.Brinkema  連邦地方裁判所判事

意見執筆:

Leonie M.Brinkema

意見:

メモランダム意見および決定

被告各個人の除外を求める被告の申立、および請求理由不備による棄却を求める被告の申立、 または交替的に略式判決を求める被告の申立が、先例のない事件において、公共 図書館による、内容に基づくインタ−ネット・アクセスに対する制限への、修正第1条言 論の自由条項の適用をめぐって、当裁判所に提出されている。

I 。背景


本件の原告は、Mainstream Loudounという団体および10名の個人の原告であって、原告は すべて Mainstream Loudoun の会員であり、Loudoun カウンティの公共図書館の成人利用 者でもある。被告はLoudoun カウンティ公共図書館の理事会、理事個人5名および Loudoun カウンティの図書館サ−ビスのディレクタ− Douglas Hendersonである。 Loudoun カウンティ公共図書館システムは6支所を有し、利用者にインタ−ネットおよび World Wide Webへのアクセスを提供している。州法によれば、この図書館システムの 「運営と管理」は理事会(以下「図書館理事会」)の権限である。参照、Va.Code Ann. §42.1-35 。図書館理事会の理事はカウンティの役人が任命し、選挙によらない。参照、 同上。彼らの運営管理の職務の他に、ヴァ−ジニア法規集(Virginia Code)§42.1-35 は 図書館理事会に「自らのガイダンスのため、および自由な公共図書館システムの管理のた めに、適当な内規、規則、および規程の採用」を命じている。

1997年10月20日、図書館理事会は「インタ−ネット上の性的嫌がらせに関する方針」(以 下「同方針」)を採用することを票決した。それは「a.幼児ポルノおよび猥褻資料(ハ− ド・コア・ポルノ)を遮断する」「b.該当ヴァ−ジニア州法および判例によって未成年者 に有害と見なされる資料(ソフト・コア・ポルノ)を遮断する」ために、「すべての[図 書館の]コンピュ−タにサイト遮断ソフトウェアをインスト−ルするべき」ことを要求す る。同方針を実行に移すため図書館理事会は、「X-Stop」を選んだ。それは商業ソフトウ ェア製品で、その方針に反すると認められるサイトへのアクセスを制限するためのもので ある。

原告は同方針が、保護されている言論、例えば、Quaker Home Page, the Zero Population Growth ウエブサイト、および American Association of University Women- Marylandのサイトへのアクセスを遮断し、これは許すことができないと主張する。訴状 pp96-105。原告はまた、遮断決定の明瞭な基準のないこと、および被告は原告の憲法上保 護されている資料の入手を、憲法に違反して冷却する遮断解除の方針を維持すると主張す る。訴状 pp92,95,127-129。

上記の主張に基づいて原告は、42 U.S.C. §1983により、図書館理事会、5名の図書館理 事各人を個人および公的資格において、図書館サ−ビス・ディレクタ− Douglas Henderson を公的資格において、を相手として本訴訟を提起する。原告は同方針はインタ −ネット上保護されている言論にアクセスする権利に対して、憲法に反する制限を加える と主張し、42 U.S.C. § 1988 により、宣言的判決および差止命令による救済、ならびに 裁判費用および弁護士報酬を求める。[注 1]

U。免責の争点


被告各個人を除外する申立において、図書館理事会の理事各個人(以下「被告各個人」) は、自分らには絶対かつ制限的免責の権利があり、彼らを個々に訴えることは、原告が理 事会全体を訴えるならば不必要であると主張する。

A。立法者免責

被告各個人は、同方針採用の決定に対しては絶対的免責を受ける権利があると主張する。 被告が指摘するように、「連邦、州および地方の立法者は、その立法行為に対して民事責 任を絶対的に免除される権利を有することは確立している」。Bogan v. Scott-Harris, 118 S.Ct.966, 140 L.Ed.2d 79,1998 WL 85313, at*2(S.Ct.1998); 参照、Lake County Estates v. Tahoe Regional Planning Auth., 440 U.S.391, 404, 59 L.Ed.2d 401, 99 S.Ct. 1171(1979)。立法者免責は、損害賠償の訴えばかりでなく、1983条の宣言的判決お よび差止命令による救済の訴えをも妨げる。参照、Supreme Ct. of Va. v. Consumers Union, 446 U.S. 719, 732, 64 L.Ed. 2d 641, 100 S.Ct.(1980)。そのような免責は、立 法機関それ自体にも、その個々の構成員にもその双方に適用される。参照、同上 at 733- 34。立法者免責は、「私的民事訴訟は、差止命令を求めるものであろうと、損害賠償を求 めるものであろうと、注意を乱し、[立法者に]その時間、精力および注意を訴訟防御の ために、立法的職務からそらすことを強いる」という考え方を前提とする。Eastland v. United States Servicemen´s Fund, 421 U.S.491, 503, 44 L.Ed. 2d 324, 95 S.Ct. 1813 (1975) 。連邦最高裁判所はまた民事責任の脅威が、立法者から公共の利益のために

立法するのに必要な勇気を奪うことを認めた。参照、Tenney v. Brandhove, 341 U.S. 367, 377, 95 L.Ed. 1019, 71 S.Ct. 783 (1951)。次も参照、Lake County, 391 U.S.at 405 。

本開廷期 Bogan事件において連邦最高裁判所は、地方自治体の役人に絶対的免責を明示的 に拡大して、そのような役人も「同様に、その立法行為のため1983条下の訴えから絶対的 に免責されている」と認めた。参照、Bogan, 1998 WL 85313, at *4;次も参照、Bruce v. Riddle,631 F.2d 272 (4th Cir.1980)( 地方議員の立法上の免責を認めた)。同裁判所は、 市会議員が被上告人の部門を廃除する条例を採用する投票をした時には、立法者の資格で 行動しているのであり、従って絶対的免責を受ける権利があると判示した。参照、同上。

原告は、図書館理事会の理事は立法者免責を受ける権利を与えられるべきではないと論ず る。何故なら、彼らは選挙されるのではなくむしろ任命され、故にその行為に対し選挙に よる直接のチェックを受けないからであると主張する。原告は Lake County事件における Marshall裁判官の反対意見に大いに依拠している。同事件においてMarshall裁判官は、次 のように述べた。

選挙民による支配が非常に稀薄化されている場合に、[任命された]役人に絶対の保護を 与えることは、立法府の特権の法理が確保すべき抑制と均衡の体制自体を覆すものである。 任命された役人の、その「立法者としての」非行がどんなに酷くても、その責任を問わな いことは、立法過程の完全性を高めないであろう。

Lake County, 440 U.S. at 407(Marshall 裁判官の反対意見)。しかしながら最高裁判所 は、Lake County 事件においても Bogan事件においても、Marshall裁判官の議論を退けて、 立法者免責の機能的分析を採用した。参照、Lake County, 440 U.S.391, 403-06, 59 L. Ed. 2d 401, 99 S.Ct.1171 (選挙によらない地方団体の決定に立法者免責を与えた); Bogan, 1998 WL 85313 at *6。特定的に最高裁判所は Bogan事件において、立法者免責は 「立法者の裁量権の行使が、裁判所の干渉によって禁じられ、あるいは個人的責任の恐れ によって曲げられてはならない」、そしてこの原理は州、地域、地方の立法者に等しく適 用がある、という考え方を前提とすると説明した。Bogan, 1998 WL 85313 at *6;次も参 照、Bruce, 631 F.2d at 277-80(Lake County 事件の機能的分析を採用し、絶対的免責が 地方の役人の立法的決定に適用がある、と認める)。この先例に基づき、当裁判所は原告 の主張を退ける。

本件において、同方針を採用しようという図書館理事会の決定は性質上立法的であったこ とは明らかである。Virginia Code §42.1-35 は図書館理事会に、図書館システムの管理 のための規則や内規を制定、採用する立法的権限を付与しており、同方針はその権限に従 って制定されたのである。その上、同方針は性質上将来に向かってのものであり、一般に 適用されるものである。これに引きかえ、原告の挙げた非立法的行為の例は、性質上個々 的で裁定的であって、本件には該当しない。参照、Scott v.Greenville Co., 716 F.2d  1409,1423(4th Cir.1983) (建物への入構許可証の不当な返還拒否);Front Royal Warren County Indus. Park Corp. v. Town of Front Royal, Va., 865 F.2d 77, 79(4th Cir. 1989) (下水サ−ビス拒否)。Bogan 事件における市議会の条例採用と同様に、図書 館理事会による同方針の採用は、本質的に規則制定権の裁量的行使であった。故に、性質 上立法的なものとして取扱うのが正しい。従って、Bogan 事件によって、図書館理事会お よび理事は、同方針を採用するその決定に対して絶対的免責を受ける権利を有する。

しかしながら、図書館規則や規程を公布する他に、図書館理事会はまた「自由な公共図書 館システムの運営と管理」に当たる責任を負う。Va.Code Ann.§42.1-35 。故に、図書館 理事会はそれが採用することを選んだ方針を実施するに当たって、顕著な役割を有してい る。原告の主張は、「同方針の実現」と題する節において、特定的に図書館理事会の実施 行為を攻撃目標としている。訴状 p70。実際、理事会の実施の役割の1側面である「ポル ノ」を遮断するために用いられる濾過ソフトウェアの選択は、本訴訟における中心的争点 である。

Consumers Union 事件において連邦最高裁判所は、ヴァ−ジニア州最高裁判所がヴァ−ジ ニア州弁護士責任規程(Virginia Code of Professional Responsibility) を公布した時、 立法者の資格で行動し、従ってその立法的決定に対して絶対の免責を受ける権利を有する と判示した。参照、446 U.S. at 734 。しかし連邦最高裁判所は、宣言的判決と差止命令 による救済を求める1983条の訴訟を、同ヴァ−ジニア州裁判所を相手として継続すること を許した。何故なら同裁判所はまた、同規程の実施に当たって非立法的役割も演じでいた と認定されたからである。故にヴァ−ジニア州最高裁判所は、それが公布した規則の実施 を差止められても不当ではない。同上 at 736 。[注 2] Consumer Union事件に従って、 当裁判所は図書館理事会および理事が、その実施の役割においては立法者免責を受ける権 利はないと認定する。参照、同上 at 734-36。故に原告は同方針を実施させないように、 1983条の宣言的判決および差止命令による救済を求めて、図書館理事会および個々の理事 を訴えることができる。[注 3] 参照、同上。


B。通信品位法(communication Decency Act)の免責

被告はまた、1996年電気通信法(Telecommunications Act of 1996) 509 条、現在は 47 U.S.C. §230 によって訴訟を受けないと主張する。230 条は「有害資料の私的遮断お よび選別に対する保護」と題し、§230(c)(2) は次のように定める。

相互作用的コンピュ−タ・サ−ビスのプロバイダ−またはユ−ザ−は、… ある資料が憲 法上保護されているかどうかを問わず、猥褻、好色、扇情的、不潔、過度に暴力的、懊脳 的、その他いかがわしいとプロバイダ−またはユ−ザ−が認めるものへのアクセスまたは 利用を制限するため、善意で、任意にとった行為によって責任を問われない。

同法は、「相互作用的コンピュ−タ・サ−ビス」が「図書館または教育機関が設けるイン タ−ネットへのアクセスを提供するサ−ビスまたはシステム」を含むと定義する。47 U. S.C.§230(e)(2) 。上記の文言に基づいて、被告は同方針を公布し実施する自分らの決定 によって、訴訟から絶対的に免責されていると主張する。

被告の230(a)(2) 条の解釈は、表面上よいようであるが、同条の立法過程または関連判例 法の裏付けがない。連邦議会は、230 条の冒頭に次のように述べる。すなわち、「合衆国 の政策は、… 現在インタ−ネットその他相互作用的コンピュ−タ・サ−ビスに対して存 在する、活気に満ち、競争的で自由な市場が、連邦や州の規制に拘束されることなく、存 続させることである」。47 U.S.C. §230(b)(2) 。230 条を解釈して、第4巡回区控訴裁 判所は次のように説明した。

[230 条]による制定法上の免責の目的は見分け難いものではない。連邦議会は、不法行 為に基づく訴訟が、新しく発展しつつあるインタ−ネット媒体における言論の自由を脅か していることを認める。他人の通信に対してサ−ビス・プロバイダ−に不法行為責任を課 すことは、連邦議会には、全くこれまた一種の言論への侵入的な政府の規制と思われた。 230 条は、部分的には、インタ−ネット通信のたくましい性質を維持し、従ってこの媒体 への政府の干渉を最小限に保つために制定されたのである。

Zeran v. America Online Inc., 129 F.3d 327,330(4th Cir.1997)。第4巡回区控訴裁判 所は続けて、「230 条のもう一つの重要な目的は、サ−ビス・プロバイダ−にそのサ−ビ スへのいかがわしい資料の散布を自己規制することを奨励することであった」と説明した。 同上 at 331 。故に、その名が示すように、230 条は私的内容プロバイダ−にいかがわし い資料を防ぐため自己規制を奨励することによって、インタ−ネット言論の州による規制 を最小限にするように制定されたのである。230 条はインタ−ネット上の言論の政府によ る規制を司法審査から切離すために制定されたのではない。たとえ仮に230 条が公共図書 館に適用ありと解釈されるとしても、被告は230 条に述べられた「民事責任」に対する  「不法行為に基づく」免責が、宣言的判決および差止命令による救済を求める本訴訟を許 さないことを示すための先例を何ら引用していない。参照、47 U.S.C. §230(a)(2);   Zeran, 129 F.3d at 330。従って当裁判所は、47 U.S.C. §230 が本訴訟を許さないもの ではないと判断する。

C。修正第11条の免責

この争点は、訴答書面の中では提起されていなかったが、口頭弁論において当事者が、原 告の訴訟は合衆国憲法修正第11条によってできないのではないかという可能性を提起した。 修正第11条は金銭的損害賠償その他の遡及的救済を求める州および州の役人に対する連邦 の請求を妨げる。参照、Edelman v.Jordan, 415 U.S.651, 666-67, 39 L.Ed.2d 662, 94 S.Ct.1347(1974); Republic of Paraguay v. Allen, 134 F.3d 622, 1998 WL 19933(4th Cir.1998) 。「しかしながら、州またはその役人は、原告が将来的な差止命令による救済 のみを求める場合には、修正第11条の保護を受ける権利がない」。Gray v. Laws,51 F.3d 426, 430 n.1 (4th Cir.1995);参照、Edelman, 415 U.S.at 664-68。以上は、42 U.S.C. §1988によってなされた裁判費用および弁護士報酬付与にも妥当する。参照、Hutto v.  Finney, 437 U.S. 678, 694, 57 L.Ed. 2d. 522, 98 S.Ct.2565(1978) 。従って、本件で は修正第11条は、1983条に基づく図書館理事会または理事各個人に対する宣言的判決およ び差止命令による救済を求める原告の訴えの妨げとはならない。

D。限定的免責

交替的に、被告各個人は同方針を公布、実施するに当たって、現在の訴訟に対して限定的 免責を受ける権利があると主張する。役人は、「普通人が知っていたであろうような、明 らかに確立した制定法または憲法上の原則に反し」ない行為に対して、限定的に免責を受 ける権利がある。Harlow v. Fitzgerald, 457 U.S.800, 818, 73 L.Ed. 2d. 396, 102 S. Ct. 2727(1982)。しかしながら、被告が認めるように、限定的免責はここで争われている ような、将来的差止命令による救済の訴えには適用がないし、参照、同上(限定的免責は 役人を民事損害賠償責任から守る)、また42 U.S.C. §1988による公的資格において行動 する役人に対する弁護士報酬の付与を妨げない。参照、Pulliam v. Allen, 466 U.S.522, 543-44, 80 L.Ed.2d 565, 104 S.Ct. 1970(1984)。故に、原告が救済を求めるのであれば、 被告各個人は同方針の公布、実施に対する限定的免責の権利はない。

E。実質的適格当事者

最後に、被告は被告各個人に対する原告の訴えは図書館理事会自身がすでに当事者である から不必要であると主張する。当裁判所は賛成である。連邦最高裁判所が認めたように  「公的資格の訴訟は、一般に役人が代理人となっている機関に対する訴訟の、別の訴答の 仕方にすぎない」。Monell.v. Department of Soc.Servs., 436 U.S.658, 690 n.55, 56 L.Ed. 2d 611, 98 S.Ct. 2018(1978) 。本件において図書館理事会自体に対する原告の訴 えは、もし勝訴すれば、同方針を実施させないという完全な救済を原告に与えるであろう。 その上、9名の図書館理事会は理事の全員一致の決定によって行動しているようである。 故に、同方針採用の票を投じた5名の理事に対する原告の訴訟は、図書館理事会が同方針 を実施するのを差止める手段としては実際的ではない。故に当裁判所は、個々の図書館理 事は本訴訟には不必要な当事者であって、除外さるべきものであると結論する。図書館サ −ビス・ディレクタ− Douglas Hendersonに対する原告の訴訟も同様に不必要である。何 故ならHenderson は理事会自体の代理としてのみ訴えられたからである。その上、    Henderson 敗訴の判決が、同方針実施を妨げる完全な救済を原告に与えることは期待でき ない。従って、彼もまた除外される。

V。当事者適格


被告は、原告が本訴訟を遂行する適格を欠く、何故なら原告各個人も、Mainstream Loudoun も、同方針に結果として現実の損害を被ってはいないからであると主張する。

特定的に被告は、Mainstream Loudounの会員の誰もLoudoun カウンティ図書館で、遮断さ れたインタ−ネット資料にアクセスしようと試みたものはなく、また遮断されたサイトの 解除を図書館に願い出た者もなかったと主張する。1つの団体がその構成員に代って出訴 する当事者適格を有する場合は、「(1) それ自体の構成員が、自らの権利で出訴する当事 者適格を有するであろう場合;(2) その団体が守ろうとする利益が、その団体の目的に密 接な関係がある場合;および(3) 請求または求められる救済も個々の構成員がその訴訟に 参加することを要しない場合」である。Maryland Highways Contractors v. Maryland, 933 F.2d 1246, 1250(4th Cir.1991);参照、Hunt v.Washington State Apple Adver.  Comm´n,432 U.S. 333, 343, 53 L.Ed.2d 383, 97 S.Ct.2434(1977) 。被告は、第一の要 件は本件では満たされていない、何故なら原告各個人のいずれも自分のために出訴するの に必要な現実の損害を主張していないからである、と主張する。

被告の主張は原告の訴状と矛盾する。訴状は、Mainstream Loudounの会員数名が Loudoun カウンティ図書館でインタ−ネット刊行物にアクセスしようと試みたが、そのサイトが遮 断されたことを発見したと主張している。参照、訴状 pp19, 20, 23 。棄却の申立を判断 するに当たって、当裁判所は原告の訴状中の主張を真実と取扱わなければならない。参照、 Scheuer v. Rhodes, 416 U.S. 232, 236, 40 L.Ed.2d 90, 94 S.Ct. 1683(1974)。これら の原告が、特定のインタ−ネット・サイトへのアクセスが同方針に従って遮断されたと主 張したのであるから、彼らの請求は棄却されない。

被告はまた、原告個人でサイトの遮断解除を求め、そしてその要請が拒否された者はない と主張する。しかし当裁判所は、当事者適格を与えるにはそのような主張は必要ではない と認める。参照、Lamont v. Postmaster General, 381 U.S.301, 14 L.Ed.2d 398, 85 S. Ct. 1493(1943)。Lamont事件において、原告は同原告からの要請書なしには「共産主義の 宣伝」と認められる刊行物を配達しないことを郵政長官に命ずる連邦制定法を無効にせよ と主張した。参照、同上 at 302-04。原告はそのような要請書の作成を拒否して、その要 件は保護されている言論を受取る修正第1条の権利に対する違憲の負担を課すものである と主張した。参照、同上 at 304-05。原告が制限された資料へのアクセスを求めることを 拒否したにもかかわらず、最高裁判所は彼の修正第1条の主張の維持を許した。参照、同 上。Lamont事件に従って、本件の原告は、特定のサイトを解除せよと現実に要請したと主 張する必要はない。そうではなくて、原告はただ、同方針の結果、保護されるはずの資料 にアクセスできなかったと主張するだけでよい。訴状はそのような主張を含むから、 Maryland Highways Contractors 事件の第一要件は、本件では満たされる。参照、933 F.2d at 1250。

被告はまた、Mainstream Loudounは Maryland Highways Contractors事件の第3要件を満 たしていない、何故なら会員各個人の利益は、本訴訟遂行に当たってのMainstream Loudoun の利益と矛盾しているかもしれないからであると主張する。第4巡回区控訴裁判 所は、団体が当事者適格を欠くのは、「構成員各個人が、自分の利益を保護するために訴 訟に入らなければならないような、利益の現実の衝突がある場合である」と判示した。同 上 at 1252-53 。現実の利益の衝突の証拠として、被告はMainstrem Loudoun の「我々は 無数の人種、宗教および生活様式を反映し、道徳および行動の問題については我々は異な ることが多い」という主張を挙げる。訴状 p12。しかし被告は、Mainstream Loudounの 統一的目標が「合衆国憲法で確立されているような宗教および個人の自由を保持する、自 由で開かれた社会を確保することである」という、それに追加された主張を無視している。 訴状 p12。Mainstream Loudounが多様な会員を有していることは、それ自体、本件におい て利益の現実の衝突があることを証明するものではない。その上原告は、同方針を無効と する判決は、同団体の会員の利益を完全に満足させるであろうと主張した。故に、 Mainstream Loudounは当事者適格を持つに必要なすべての要素を満足させるようである。 これらの理由によって、Mainstream Loudounは本訴訟から除外されない。

最後に、被告は数名の原告が、同方針に従って遮断されたインタ−ネット・サイトにアク セスすることを試みたとは主張していないというが、それは正しい。参照、訴状 pp15- 18, 21-22, 24-25(原告 Judy Coughlin, Henry Taylor, Ann Curley, Judith Hines, Kathryn Kern-Levine, Michael Clay, Jerome Smith,および Mary Adams )。その主張が なければ、これらの個々の原告は憲法上守られている言論にアクセスすることを拒否され たと主張できない。故に、彼らは当事者適格を維持するに足る現実の損害を主張していな い。参照、Northeastern Fla. Contractors v. Jacksonville, 508 U.S.656,663, 124 L.Ed.2d. 586, 113 S.Ct.2297(1993) 。従って、これらの個々の原告は本訴訟から除外さ れなければならない。

W。原告の修正第1条の主張


被告は、その請求理由不備による棄却を求める申立において、または交替的に略式判決を 求める申立において、同方針が内容に基づいて言論へのアクセスを禁止することは認める。 参照、被告意見書 at 11。しかしながら、被告は「修正第1条は、インタ−ネット上の情 報へのアクセスを許すかどうかに関する公共図書館の決定を、いかなる方法においても 制限してはいない」と主張する。被告意見書 at 2 。実際口頭弁論において被告は、言論 の著者がアフリカ系アメリカ人であるとか、特定の政治的観点、例えば、共和党派を支持 するとかだけの理由で、公共図書館は言論へのアクセスを憲法上禁止できると主張するま でに至った。参照、1998年2月27日審理の反訳記録 at 48。故に当裁判所の中心問題は、 公共図書館がインタ−ネット上の言論へのアクセスに、内容に基づく制限を加えても修正 第1条に違反しないかどうかである。

この争点を直接に取上げた事件はない。しかし両当事者はこの争点に最も近い先例が、 Board of Education v. Pico, 457 U.S. 853, 73 L.Ed.2d 435, 102 S.Ct.2799(1982) で ある点で意見が一致する。同事件において連邦最高裁判所は、或る書籍が「反米、反キリ スト教、反ユダヤであり、全く不潔である」と或る地方の教育委員会が信じたことを理由 に、高校の図書館からそれらを撤去するという同教育委員会の決定を審査した。同上 at 856 。第2巡回区控訴裁判所は、原告の修正第1条の主張に基づいて、地方裁判所が同教 育委員会に与えた略式判決を破棄した。最高裁判所では票はきわどく分かれたが、教育委 員会の動機を決定させるために同事件を差戻した控訴裁判所の判決を支持した。しかし最 高裁判所は多数意見を下さなかった。Brenann 裁判官は同意見の裁判官3名とともに、い わゆる「相対的多数」意見を書いた。Brenann 裁判官は、修正第1条が高校の図書館から 内容に基づいて資料を撤去する当局の権利を、必然的に制限すると判断した。参照、同上 at 864-69(相対的多数意見)。Brenann 裁判官は、情報を受ける権利は言論の権利に内在 し、「州は修正第1条の精神に反しないで、入手し得る知識の連続体を縮約することはで きない」と論じた。同上 at 866(Griswold v. Connecticut, 381 U.S. 479, 482, 14 L. Ed. 2d 510, 85 S.Ct. 1678(1965) を引用);次も参照、Stanley v. Georgia, 394 U.S. 557, 564, 22 L.Ed.2d 542, 89 S.Ct. 1243(1969) (「憲法は情報と思想を受取る権利を 保護する」)。Brenann 裁判官は、自由で独立の研究の場としての学校図書館の特殊な役 割から見て、この原則は特に重要であると説明した。参照、同上 457 U.S. at 869。同時 に Brenann裁判官は、公立高校は「個人が市民として参加する準備をする」極めて重大な 教化的役割を演じ、それ故「地域社会の価値を伝えるようにカリキュラムを作成し適用す る」大きな裁量権を持つ権利があることを認めた。同上 at 863-64(Ambach v. Norwick, 441 U.S.68, 76-77, 60 L.Ed.2d 49, 99 S.Ct. 1589(1979) を引用) (内部の引用符省 略)。従って、Brenann 裁判官は教育委員会の委員が「単にその中にある思想を好まない から」といって、書籍を撤去し、それによって「政治、国家主義、宗教その他の意見の問 題において、何が正当であるかを定めること」はできないが、同委員会は教育上の適切性、 例えば、普遍的俗悪を理由に、書籍を撤去できるであろうと判示した。同上 457 U.S.at 872 (West Va. Bd. of Educ.v. Barnette, 319 U.S. 624, 642, 87 L.Ed. 1628, 63 S.Ct. 1178(1943)を引用)(内部の引用符省略)。

賛成意見において Blackmun 裁判官は、相対的多数意見の認める情報を受ける権利ではな く、教育委員会が好まない思想に対するその差別に焦点を当てた。Blackmun裁判官は、 Pico事件の事実が2つの重要で相争う利益、すなわち、公立高校の教化的使命と、内容に 基づく言論規制に反対する修正第1条の中心的禁止、を取上げたことを明示的に認めた。 参照、同上 457 U.S.at 876-79(Blackmun 裁判官の賛成意見)。Blackmun裁判官は、州は 通常内容に基づく規制を可とする抗し難い理由を示さなければならないが、公立高校の事 実関係の中ではもっと限られた形態の保護が適用されるべきである、と述べた。参照、同 上 at 877-78。上記2原則の均衡をとって、Blackmun裁判官は相対的多数意見に賛成して、 教育委員会は内容に賛成できないというだけの理由に基づいて書籍を撤去できないが、教 育上の適切性または予算の制限を理由とする書籍集めの制限はできるという。参照、同上 at 879。

反対意見のBurger長官は、賛成する裁判官3名とともに、言論を受ける修正第1条のいか なる権利も、当局に高校図書館で言論を提供せよと積極的に義務づけしていないと結論す る。参照、同上 at 888(Burger長官の反対意見)。Burger長官は、州は憲法上発言者が意 図された聴衆に話し掛けることを禁ずることはできないけれども、修正第1条の中には公 立高校に特定の言論の通路の役をせよと要求するものはない、と論じた。参照、同上 at 885-89。Burger長官は、そのような義務は公立高校の教化的使命と矛盾するであろう、そ の使命は高校がカリキュラムを作成し学生を教育するために、相争う思想の中での内容に 基づく選択を必然的に要求すると説明した。参照、同上 at 889 。

被告は、Pico事件の相対的多数意見は本件には適用がない、何故なら同事件は図書館から 資料を撤去する決定のみを取上げていて、資料を入手する図書館の決定を取上げることを 特定的に拒否しているからである、と主張する。参照、同上 at 861-63, 871-72( 相対的 多数意見)。被告はインタ−ネットを広い図書館間の貸借システムにたとえて、インタ− ネット・アクセスを選ばれた資料に制限することは、図書館の蔵書から資料を撤去する決 定というよりは、むしろそれを入手しない決定にすぎないと主張する。それ故被告は、本 件はPico事件の相対的多数意見の範囲に入らないと主張する。

これに答えて原告は、図書館の蔵書の個々の書籍とは異なり、インタ−ネットは「単一の、 統合的システム」であると主張する。原告意見書 at 14(ACLU v. Reno, 929 F.Supp. 824, 838(E.D.Pa.1996), aff´d, 138 L.Ed.2d 874, 117 S.Ct.2329(1997) を引用)。

原告が説明するように、「ウエブ上の情報は個々のコンピュ−タ内に含まれているけれど も、これらのコンピュ−タのそれぞれが[World Wide Web]プロトコルを通じてインタ− ネットに接続されているという事実は、その情報のすべてが知識の単一集合体の一部にな ることを可能にする」のである。原告意見書 at 15( Reno, 929 F.Supp. at 836を引用)。 従って、原告はインタ−ネットを1組の百科辞典になぞらえ、図書館理事会による同方針 の制定を成人および児童の利用者に不適当と考えられる選ばれた記事を「塗りつぶす」 決定になぞらえる。

双方の主張を考慮した上、当裁判所は被告がインタ−ネットの性質を誤解していると結論 する。インタ−ネット・アクセスを買うことによって、各Loudoun 図書館はその利用者に すべてのインタ−ネット刊行物を即座にアクセスできるようにした。図書館間の貸借また は書籍購入そのものとは異なり、図書館利用者に特定のインタ−ネット刊行物を利用でき るようにするために、図書館の時間または財源の目に見える費消は必要ではない。これに 反して、制限がなければ直ちに利用できる刊行物へのインタ−ネット・アクセスを制限す るために、図書館は現実に財源を費やさなければならない。要するに、そのような刊行物 1個を買うことによって、図書館はそれらを全部買ったことになる。故にインタ−ネット は、原告がたとえる百科辞典の1セットにもっと似ている。被告はそこから苦労して、図 書館利用者に不適当と思われる部分を編集したのである。故に、図書館理事会の行為は撤 去決定と呼ぶのがもっと適当である。従って、当裁判所はPico事件の相対的多数意見で論 じられた原則が、同方針を公布し実施する図書館理事会の決定に関連性があり、適用があ ると結論する。

原告はまた、Pico事件の相対的多数判決は図書館の撤去決定が略式判決で解決されてはな らないという包括的原則を確立すると主張する。当裁判所は原告の Pico 事件の解釈が単 純化しすぎると認める。なるほど Pico 法廷の多数側は同事件を、教育委員会の動機を決 定させるため差戻すと票決し、黙示的に被告の主張する拘束なき裁量権を退けている。参 照、同上 at 875 。しかしながら同時に、最高裁判所の多数側は学校図書館が行使し得る 裁量権の程度については一致できなかった。参照、同上 at 856 (相対的多数意見); 875(Blackmaun 裁判官の賛成意見);比較、同上 at 883 (White 裁判官の賛成意見)。 また Pico 事件の裁判官の誰も、公共図書館における特別な事情を直接取上げてはいない。 だから当裁判所が、内容に基づき資料を撤去するために図書館理事会が行使し得る裁量権 の範囲をまず決定しないで、被告の申立を拒否することは適当ではないであろう。

被告は、資料を撤去する彼らの裁量権にいかなる制限が加えられても、彼らに情報の 不本位な通路として行動することを強要することになるであろうと論じて、当裁判所が  Pico事件の反対意見を採用することを強く主張する。被告は反対意見を、どんな資料を図 書館利用者に利用させるべきかを決定するに当たって、拘束のない裁量の権利があるとい う意味に解釈する。

しかしながら、被告の主張を採用すれば、当裁判所は上に論じたように、 Pico 事件の相 対的多数の差戻し判決を無視しなければならなくなるであろう。その上 Pico 事件の裁判 官はすべて、反対意見者も含めて、学校図書館に与えられた裁量権は、教育者としての公 立学校の役割と独自につながっていることを認めていた。参照、同上 at 863-64, 869-71 ( 相対的多数意見);875-76, 879 (Blackmun裁判官の賛成意見)(「確かに、学校とい う独自の環境は、公的決定が修正第1条の価値によって制限される程度に、実質的な限界 を加える」。);比較、同上 at 889-92(Burger長官の反対意見)(「当局が情報の通路 としてどのような役割を演じようとも、学校は殊に、第三者の資料の奴隷的運び屋にされ るべきではない… 。学校図書館とカリキュラムに資料を保持することの適切性に関して、 教育委員会に内容に基づく決定をさせること以外に、どのようにして『基本的価値』を教 え込むべきであるのか[?] 」);909-10(Rehnquist裁判官の反対意見)(「当局が教育者 として行動する時 … 当局は比較的感受性の強い若者に、社会的価値と知識を教え込む ことに従事しているのである…。要するに、教育者としての当局の行動は、主権者として の当局の行動と同じ修正第1条問題を提起しない。」);921( O´Connor裁判官の反対意 見)(「本件において当局は、教育者としてのその特別な役割において行動している」と いう)。本件にとってもっと重要なことは、高校図書館は公共図書館とは異なる取扱いを 受けなければならないという Rehnquist裁判官の言葉である。参照、同上 at 915 ( Rehnquist 裁判官の反対意見)(「大学図書館または公共図書館と異なり、小学校や中 学校の図書室は自由な研究のためのものではない。」)。実際、Burger長官とRehnquist 裁判官はその資料は公共図書館でも利用できるといって、書籍の一部を撤去する広い裁量 権を公立学校に与えることを正当化した。参照、同上 at 892(Burger長官の反対意見) (「書籍は、… 公共図書館、または地方の公立学校の独特の環境とむすびつきのないそ の他それに代る所から入手できる。」);915 (Rehnquist 裁判官の反対意見 (「上告人による書籍の撤去が、被上告人の情報を受ける権利を侵害しない最も明白な理 由は、書籍が他の場所ですぐに入手できるということである。… 書籍は公共図書館から 借りることもできる。」)従って、Pico事件の反対意見も相対的多数意見も、公共図書館 はその蔵書から資料を撤去する無制限の裁量権を有するという被告の主張を支持するとは いえない。

Pico事件が本件に適用できる限度において、当裁判所は同判決が公共図書館の、その蔵書 中の憲法上保護されている資料へのアクセスに、内容に基づく制限を加えるその裁量権に 修正第1条は適用され、あるいはそれを制限するという命題を支持するものと結論する。 修正第1条の命ずるところに矛盾することなく、公共図書館は「州の行うその他の事業と 同様に、『政治、国家主義、宗教その他意見の問題において、何が正当であるかを定める』 ような方法で運営されてはならない。」。同上 at 876( Blackmun 裁判官の賛成意見) (Barnette, 319 U.S. at 642 を引用)。

さらに、Pico事件において高校図書館に資料を撤去する広範な裁量権を与えることを可と する諸要因は、本件には存在しない。本件の原告は児童ではなくむしろ成人である。児童 は、その精神も価値観もまだ成長期にあるのだから、特に公立高校という事実関係の中で は、伝統的に修正第1条の保護は手厚くなかった。参照、Tinker v. Des Moines Sch. Dist.,393 U.S.503, 506, 21 L.Ed. 2d 731, 89 S.Ct.733(1969)。これに引きかえ成人は、 民主社会に十分に参加するのに必要な成熟さを得たものとみなされ、彼らの言論の権利お よび言論を受ける権利は、修正第1条の十分な保護を受けるに値する。従って、成人は児 童には不適当な種類の言論、例えば「下品さに満ちた」言論でも、受ける権利を有する。 参照、Reno v. ACLU, 138 L.Ed. 2d 874, 117 S.Ct. 2329, 2346(1997); Sable     Communications v. FCC, 429 U.S. 115, 126, 106 L.Ed. 2d 93, 109 S.Ct. 2829(1989) 。

もっと重要なことは、高校の教化的役割と言論の内容に基づく規制に対する修正第1条に よる禁止との間に Blackmun 裁判官が認めた緊張関係は、本件には存在しない。参照、 Pico, 457 U.S. at 876-80(Blackmun裁判官の賛成意見)。公共図書館は、公立高校の指 導的目的である教化的使命を持っていない。そうではなくて、公共図書館は自由で独立の 研究の場である。参照、同上 at 914(Rehnquist 裁判官の反対意見)。成人の図書館利用 者は、市民として行動するのに必要な「基本的価値」をすでに獲得し、高校の教室のカリ キュラムよりはむしろその個人的知的興味を追求するために、図書館に来たものと推定さ れる。故に、カリキュラムの動機は、内容に基づくインタ−ネット資料へのアクセスを制 限する公共図書館の決定を正当化するものではない。

最後に、インタ−ネット上の言論の独自の利点は、それがなければ図書館が内容に基づく 差別を行うについて有するかもしれない財源に関連する理由づけを失わせる。連邦最高裁 判所はインタ−ネットを、「即座に利用でき、索引をつけられた何百万の刊行物を含む膨 大な図書館」で、その内容は「人間の思想と同様に多様である」ものにたとえた。Reno, 117 S.Ct. at 2335 。しかし、もっと旧式な図書館とは違って、インタ−ネット刊行物 の入手には限界的コストはない。そうではなくて、すべての、またはほとんどすべてのイ ンタ−ネット刊行物は1個の値段でまとめて入手できる。実際、図書館が遮断ソフトウェ アによって蔵書の内容を制限する方が、すべてのインタ−ネット刊行物へ無制限のアクセ スを与えるよりももっと費用が掛かるのである。またインタ−ネット刊行物は「サイバ− スペ−ス」の中にのみ存在するのであるから、書棚をふさぐわけでもなく、いかなる物理 的管理も要しない。従って、費用または有形の資源の考慮も、公共図書館がインタ−ネッ ト資料へのアクセス制限の決定をすることを正当化できない。比較、Pico, 457 U.S. at 909(Rehnquist 裁判官の反対意見)(予算の考慮から学校はどれかの書籍を選んで他を切 捨てる);879 n.1 (Blackmun 裁判官の賛成意見)(同上)。

要するに、インタ−ネット刊行物へのアクセスを制限する公共図書館の決定に適用しなけ ればならない「修正第1条の精査の程度を定める根拠はない」。Reno、117 S.Ct. at   2344。故に、言論に対する内容に基づく制限は、当局の抑え難い利益によって正当化され なければならないし、しかもその目的を達成するためには厳重に構成されなければならな いという修正第1条の中心的法理が残ることになる。参照、Simon & Schuster, Inc. v. Members of the N.Y.State Crime Victims Bd., 502 U.S.105,118,116 L.Ed 2d 476, 112 S.Ct. 501(1991) 。この原則はインタ−ネット言論の事実関係の中で最近確認された。 参照、 Reno, 117 S.Ct. at 2343-48 。従って当裁判所は、図書館理事会は、抑え難い州 の利益とその目的を達成するために厳重に作成された方法がないならば、保護されている インタ−ネット言論へのアクセスに、内容に基づく制限を採用し、実施してはならない、 と判断する。

この判断は、被告に情報の不本意な伝達者として行動することを義務づけるものではない。 何故なら図書館理事会はインタ−ネットへのアクセスを全然提供しなくてもよいからであ る。しかしアクセスを提供すると決めた上は、以後インタ−ネット言論の特定の種類を、 その内容が気に入らないからといって、選択的に制限してはならない。この判断と一致し ているのが上に述べたLamont事件であって、同事件において連邦最高裁判所は、郵便局が 「共産主義の宣伝」と考える言論へのアクセスを憲法上制限できないと判断して、「合衆 国は、適当と認めれば郵便局を廃止することができるが、郵便局を運営する限りは、郵便 の使用は我々の舌を使う権利とほとんど同じ位、自由な言論の一部である。』」と述べた。 Lamont, 381 U.S. at 305(Milwaukee Soc.Dem.Pub.Co. v. Burleson, 255 U.S.407, 437, 65 L.Ed.704, 41 S.Ct.352(1921)を引用)(Holmes裁判官反対意見); 参照、同上 381  U.S.at 310( 「もし統治機関が補助または特権を止めようと思うならば、修正第1条の権 利を危うくしない方法と条件でそうしなければならない。」)(Brenann 裁判官賛成意見)。 同様に、本件において図書館理事会はインタ−ネット・アクセスを提供しなくてもよいが、 提供することを選んだ上は、そのサ−ビスを修正第1条の枠内で行わなければならない。

A.猥褻、幼児ポルノ、および「未成年者に有害な」言論

公共図書館は、保護された言論を内容に基づき規制する前に、厳重な審査を満足させなけ ればならないと決定したのであるから、同方針によって規制される言論をこれから考察す る。同方針は3つの言論のタイプへのアクセスを禁止する。すなわち、猥褻、幼児ポルノ、 および「未成年者に有害」とみなされる資料である。訴状 証 1。猥褻および幼児ポルノ には、修正第1条の保護を受ける権利はなく、当局はそのような資料へのアクセスを適法 に制限できる。参照、New York v. Ferber, 458 U.S. 747, 73 L.Ed.2d 1113, 102 S.Ct. 3348(1982)( 幼児ポルノ);Miller v. California, 413 U.S. 15, 37 L.Ed.2d 419, 93 S.Ct.2607(1973) (猥褻)。実際「猥褻および幼児ポルノを、インタ−ネットによるとそ の他の手段によるとを問わず、伝達することは、成人、未成年者いずれにとっても連邦法 上すでに違法である。」Reno, 117 S.Ct. at 2348 n.44。しかしながら、本件において原 告は、被告が選んだ X-stop 濾過ソフトウェアは猥褻でも幼児ポルノでもない多くの刊行 物を制限し、それには Quaker´s website のような性に全然関係のない資料が含まれる、 と主張する。参照、訴状 pp96-105 。その上原告は、X-stopが同方針によってカバ−され ているかどうかが議論の余地のあるポルノ資料へのアクセスを遮断していないと主張する。 参照、訴状 p127 。最も重要なことは、原告はどの資料を遮断すべきかの決定が、被告に さえ開示されていない秘密の基準、すなわち、猥褻または幼児ポルノの法的定義に関係が あるかもしれないし、ないかもしれない基準、に基づいてカリフォルニア州の会社が行っ ていると主張する。参照、訴状 pp95,128-29。故に原告は、同方針の求める方法が、猥褻 および幼児ポルノを規制するのに被告が持つかもしれない適法な利益には、厳重に構成さ れていないと主張する。

同方針はまた、「該当ヴァ−ジニア州法および判例上未成年者に有害とみなされる」資料 へのアクセスを禁じている。これは Verginia Code§18.2-390を指しているようであって、 その「未成年者に有害な」資料の定義は、次のような性的内容を含む:

(a)主として未成年者の猥褻で、恥ずべきまたは病的興味に訴えるもの、(b) 未成年者に 適当な資料に関して、成人社会全体としての一般的基準に明らかに反するもの、および (c) 全体から見て、未成年者にとって真面目な文学的、芸術的、政治的または科学的価値 を欠くもの。

原告は、同方針が成人のインタ−ネット言論を、児童に適するものに制限して不当である と主張する。その根拠として原告は Reno, 117 S.Ct. at 2329を引用する。Reno事件にお いて連邦最高裁判所は、未成年者に有害な資料の伝達を防ぐための、内容に基づくインタ −ネット規制は違憲である、何故ならそれは成人が憲法上送信し受信する権利のある言論 を禁圧するからである、と判示している。同裁判所は述べる:

なるほど当裁判所は、繰り返し児童を有害な資料から守るという当局の利益を認めてきた。 しかしその利益は、成人に向けられた言論の不必要に広い禁圧を正当化しない。上に説明 したように、当局は「成人人口を… 児童に適当なものだけに…減じて」はならない。

同上 117 S.Ct. at 2346(Denver Area Telecomm.Consortium v. FCC, 518 U.S.727, 116 S.Ct. 2374, 2393, 135 L.Ed.2d 888(1996))(引用省略)。連邦最高裁判所は Bolger v. Youngs Drug Products Corp., 436 U.S.60,77 L.Ed.2d 469, 103 S.Ct.1875 (1983) を続 いて引用して、「当局の児童を守る利益の重要性にかかわらず、『郵便受けに達する議論 の程度は、児童の砂場に適当なものに限られることはとてもできない』」という命題を挙 げた。Reno, 117 S.Ct.at 2346(Bolger, 463 U.S. at 74-75を引用)。Reno事件を本件に 適用すれば、被告が児童を保護するために成人に利用できる言論を「未成年者」に適当な ものに限ることは、明らかに許されない。原告が指摘するように、当局の内容規制が正当 な目的のために企てられる場合であっても、それが猥褻な言論または児童に有害な資料の 通信を防ぐためであろうと、当局が使用する方法は「その脅威に対する合理的な反応」で あって、「直接または実質的な方法」でその害を軽減するものでなければならない。 Turner Broadcasting v.FCC, 512 U.S.622, 624, 129 L.Ed.2d 497, 114 S.Ct.2445   (1994)。原告は、本件にはそのような合理的方法が欠けていることを適切に主張している。 故に原告は、有効な修正第1条の主張を述べており、それを進めることができる。

B。遮断解除方針

被告は、たとえ修正第1条が図書館理事会の資料撤去の裁量権を制限するとしても、遮断 解除手続は同方針の適憲性を守る、何故ならそれは図書館員に、憲法上保護されていない 資料だけの遮断を確実にさせるからであると主張する。[*40] 遮断解除方針の下では、 図書館利用者で、あるサイトへのアクセスを拒否された者は、氏名、電話番号、および遮 断されたサイトへのアクセスを希望する理由の詳細な説明を含む要請書を提出することが できる。図書館員はその上で「その要請を認めるべきかどうかを決定する」。被告意見書 at 3。[注 4]

原告は、遮断解除手続が図書館利用者の、保護された言論へアクセスする権利に対する憲 法違反の負担であると主張して、Lamont, 381 U.S.at 301事件を引用する。Lamont事件で 争われた制定法は、郵便利用者がその氏名、住所を記し、特定的にその資料の送付を求め る葉書を郵便局にまず返送しなければ、「共産主義の宣伝資料」を配達しないことを、郵 政長官に命じていた。参照、同上 at 302-04。連邦最高裁判所は、同制定法を「違憲」と 判断した。「何故ならそれは公的行為(すなわち、返信葉書の返送)を受信者の修正第1 条の権利の自由な行使に対する制限として要求していたからである」。同上 at 305 。特 に同裁判所は、当局が明らかに好まない言論へのアクセスを求めて、市民が当局に公けに 陳情することを強制することの、厳しい冷却的効果をあげた。参照、同上 at 307。

本件においてはLamont事件と同様に、遮断解除方針は成人利用者に、保護された言論、例 えば「未成年者に有害な」言論へのアクセスを求めて、当局への陳情を強制している。実 際、Loudoun カウンティの遮断解除方針は、Lamont事件で争われた制限よりももっと冷却 的のようである。何故ならそれは図書館員に、保護された言論へのアクセスを拒否する、 基準のない裁量権を与えているからである。これに反して Lamont 事件で争われた制定法 は、郵便局員にアクセスの要請を自動的に認めることを求めているからである。それ故、 被告の遮断解除手続と主張されるものは、原告の修正第1条の主張をいささかも弱めはし ない。

X。結論



上述の理由によって、被告の被告各個人を除外する申立は認める。請求理由不備による棄 却の申立は、一部を一部の原告につき認め、その他すべての点において認めない。被告の 交替的に、略式判決を求める申立については、当裁判所は現時点では略式判決を不可とす るいくつかの重大な事実の争点が残っていると判断する。それは次のものを含み、それに 限られない。すなわち、被告が同方針を正当とする理由、X-stopによって遮断されたイン タ−ネット・サイトおよび X-stop が遮断するサイトについての被告の知識とそのコント ロ−ルの程度である。従って、交替的に略式判決を求める被告の申立もまた認めない。適 切な決定が下される。



書記官に本メモランダム意見の謄本を記録訴訟代理人に送付することを命ずる。
                                    

1998年4月7日登録

Leonie M.Brinkema
連邦地方裁判所裁判官
ヴァ−ジニア州アレキサンドリア

決定

添付のメモランダム意見に述べられた理由により、被告各個人を除外する被告の申立は認 める。よって、

被告 John Nicholas, Spencer Ault, Richard Black, Chris Howlett, Mary Ellen Vannederynenおよび Douglas Hendersonは本訴訟より除外することを決定する。

請求理由不備による棄却を求める被告の申立について、または交替的に略式判決を求める 申立については、申立の一部を認め、よって

原告 Judy Coughlin, Henry Taylor, Ann Curley, Judith Hines, Kathryn Kern-Levine, Michael Clay, Jerome Smith, および Mary Adams は本訴訟から除外することを決定する。 その他の点については申立は拒否する。

その他の被告、Loudoun カウンティ図書館理事会は 11 日以内に訴状に対する答弁書を提出することを命ずる。

書記官に本決定の謄本を記録訴訟代理人に送付することを命ずる。

1998年4月7日登録

Leonie M. Brinkema
連邦地方裁判所裁判官                              



[注 1] 1998年2月24日の決定において、当裁判所はインタ−ネット上に言論を発表して いる若干の個人および団体の提出した、原告として訴訟参加を求める申立を認め た。参加人は被告が、発表者としてLoudoun カウンティ 図書館の利用者と交信 する彼らの修正第1条下の権利を妨害して、憲法に違反すると主張する。参加人 の主張は、現在当裁判所で係争中の申立の中で明示的に争われてはいない。

[注 2] 連邦最高裁判所はその訴訟の継続を許したけれども、42 U.S.C§1988により裁判 費用および弁護士報酬を与えることは不当である、何故ならそのようなものを認 めることは、ヴァ−ジニア州裁判所の立法行為を前提するものであるからであり、 立法行為については同裁判所が絶対的免責を享受しているからであると判示した。 参照、同上 at 738-39。


[注 3] Consumers Union 事件におけると同様に、42 U.S.C. §1988による原告の裁判費 用および弁護士報酬の請求は、図書館理事会による同方針を採用する決定を前提 としているならば不当であろう。その決定は立法者の資格で行われたものである からである。参照、Consumers Union, 446 U.S. at 737-39 。当裁判所はこの訴 訟の早い段階でそのような決定をする必要もなければ、決定もしない。

[注 4] 被告の、請求理由不備による棄却を求める申立、または交替的に、略式判決を求 める申立に関して当裁判所は、原告の遮断解除方針の記述が正確であると認める。 参照、訴状 pp127-29 。