原告 SHETLAND TIMES LTD v 被告 DR JONATHAN WILLS 他1名


民事上級裁判所:第一審部

(1996)第一審部事件

1996年10月24日

訴訟代理人:原告側:Milligan, Brodies; 被告側:MacLeod, Dundas & Wilson

パネル:

Lord Hamilton

判決:

Lord Hamilton:

原告は The Shetland Times を所有し発行する。同紙は、地方、全国、および国際ニュースを報道する新聞である。第2被告は、ニュース報道サービスを提供し、「The Shetland News 」の名称で営業する。第1被告は第2被告の業務執行取締役である。

The Shetland Times には、関連するヘッドラインの下で本文より成るニュース記事が載る。写真もまた出る。

The Shetland Times 紙の 1996 年10月11日、金曜日号には、シェトランドの Fraser Petersonセンターについて財政困難に関する数パラグラフにわたる記事が載った。それは「審議会の資金提供『失敗』後、センター救済のための入札」というヘッドラインの下に載っていた。その号には他にもいくつかの記事があり、それぞれに関連するヘッドラインがついていた。

インターネットは情報交換に用いられる全世界的電子システムである。その情報は広告資料を含むこともある。情報は電話システムと結合してコンピュータを通じてアクセスされる。インターネット上で情報を伝えたり、または広告しようと欲する者は、自ら「ウエブサイト」を設立してそれを行うことができる。ウエブ・サイトで利用できる情報へのアクセスは、コーラー(caller[電話をかける人])が関連「ウエブ・アドレス」にアクセスすることによって得られる。

原告は最近そのようなウエブ・サイトを設立した。この手段により原告は、写真を含む記事で、 The Shetland Times の印刷版に出ているものをインターネット上で利用できるようにしている。その記事は、関連ヘッドラインの索引を参照することにより電子的に記憶される。そのヘッドラインは印刷版の記事の上に出たものである。印刷された記事の本文へのアクセスは、コーラーが「フロント・ページ」に現れる関連ヘッドラインをクリックすることにより得られる。フロント・ページは、原告のウエブ・サイトへのアクセスが得られるとまず現れるディスプレー(display)である。原告のフロント・ページには「The Shetland Times」という見出し(heading)がついている。記事がアクセスされると、本文の下に次の言葉の注意書が現れる。

   「このサーバーに関する The Shetland Times コメントまたは提案への接触は、
    ウエブマスター £ shetland- times.co.uk へどうぞ」
    (Contacting The Shetland Times Comments or suggestions on this server
     (sic) please to webmaster £ shetland- times.co.uk)

原告はこのウエブ・サイトを設立するために資金を投入した。その期待するところは、一旦この情報サービスをインターネット・ユーザーが知って用いるならば、原告は自分のウエブ・サイトのフロント・ページ上に広告スペースを売ることができるであろうということであった。

被告もまたそのウエブ・サイトを関連するウエブ・アドレスを用いて運営する。そのウエブ・アドレスでコーラーがアクセスするフロント・ページの題は「The Shetland News 」で、その副題は「Main Headline Page」である。そのページにはいくつかの広告が現れる。その下にいくつかのニュース・ヘッドラインがある。

1996年10月14日頃以来、被告はそのフロント・ページのヘッドラインの中に、The Shetland Timesの最近号に出たいくつかのヘッドラインで、原告のウエブ・サイトに複製されたものをいくつか含めた。これらのヘッドラインは、原告のヘッドラインで上記のように複製されたものの逐語的複製である。被告のウエブ・サイトにアクセスするコーラーは、被告のフロント・ページに現れるこれらのヘッドラインの1つをクリックすることによって、原告が発行し複製した関連本文にアクセスできるであろう。アクセスはこのようにして得られ、その後の他のヘッドラインへのアクセスも、そのコーラーはいかなる段階においても、原告のフロント・ページへのアクセスを必要としないで、得られる。故に、原告の記事(印刷版で発行され、原告のウエブ・サイトに原告が複製するもの)へのアクセスは、原告のフロント・ページを迂回して、従ってそこに現れるかもしれない広告資料を逸して、得ることができる。

本訴訟において原告は、被告の行為が原告の所有する著作権侵害を構成することの確認を求める。本件は仮差止命令を求める原告の申立によって本官の扱いとなった。

請求原因は2つである。原告の主張によれば、彼らがそのウエブ・サイト上で利用できるようにしたヘッドラインは、1988年著作権、意匠および特許法(Copyright, Designs and Patents Act 1988)(以下「同法」)の7条にいうケーブル・プログラムであり、被告がそのウエブ・サイトで利用できるようにする設備(facility) は7条にいうケーブル・プログラム・サービスであって、それらの記事をそのサービスに含めることは同法20条により著作権侵害を構成する、というのである。原告はまたヘッドラインは彼らの所有する言語の著作物(literary works) であって、被告の行為は同法17条によってコピー行為による侵害を構成する、このコピー行為とは電子的手段による著作物の記憶の形式をとっているものである、と主張する。

原告代理人 Milligan 弁護士は、これらの請求原因のそれぞれについて原告に一応有利な事案(prima facie case) であり、便宜の比較考量(balance of convenience) は仮差止命令発付に有利である、と主張した。被告代理人 MacLeod弁護士は、原告がいずれの訴訟原因においても一応有利な事案を有しない、便宜の比較考量は仮差止命令拒否に有利である、と主張した。

MacLeod 弁護士は、原告が The Shetland Times の印刷版に載った記事の本文およびそこから取られた本文で原告のウエブ・サイトに現れるものに著作権を有することを争わなかった。これらが言語の著作物であることは認められた。しかしながら、そのヘッドラインには著作権はないと主張された。本官はいずれこの争点に立ち戻るであろう。

本件における主たる議論は、20条にいう侵害の主張に関するものであった。これは基本的に7条の解釈にかかっていた。同条は、(1) 項により「ケーブル・プログラム」を「ケーブル・プログラム・サービスに含まれるいかなる事項をも」意味すると定義し、「ケーブル・プログラム・サービス」は次のものを意味すると定義する。

  「完全に、または主として、視覚的映像、音響またはその他の情報を、無線電信以外の遠距離通信システムに
よって送信し、次のように受信させることより成るサービスである--

   (a) 2か所以上の場所において(異なるユーザーの要請に応えて、同時受信であろうと、または別々の時の
受信であろうと)、または

   (b) 公衆に対して提示するためであり、本条の次の規定によって、またはそれに基づいて、除外されていない
もの、または除外されていない限り」。

(2) 項の規定は、

  「次のものは『ケーブル・プログラム・サービス』の定義より除外される --

   (a)サービスまたはその一部であって、その基本的特徴が次のものであるもの。そのサービスを提供する者に
より視覚的映像、音響その他の情報が送信されている間、各受信場所から同じシステムによって、または (場合によって)その同じ部分によって、情報(サービスの運営または管理のために出される信号を除く) が、そのサービスを提供する者により、またはそれを受けるその他の者が受信するために、送信され、 または送信され得ること … 」。

被告代理人 MacLeod弁護士は次の通り主張した。(1) インターネット通信に関係するプロセスは情報の「送信」を伴わない、(2) そうだとしても、その送信は、この事情の下では、原告によって行われず、被告によって行われた、(3) ともかく、そのサービスは (2)項(a) によって除外されている「相互作用的」サービスであった。関係する電子的メカニズムに関して詳細な技術的情報は、本官に提示されなかった。通常の意味における送信がなかったこと、およびプロバイダーから顧客への転送による送信が行われるケーブル・テレビジョンとの対比ができるという主張があっただけである。インターネット上でコーラーは、全く受動的に提供される情報に、電子的にアクセスしたのである。

本官の見解によれば、原告の提供するサービスが情報の送信を伴うという原告の主張は、一応十分な根拠がある。ある意味では、その情報はコーラーがアクセスするのを受動的に待つようであるけれども、それは、少なくとも一応、その情報はアクセスが行われるとコーラーの所へ伝えられて受け取られるという考え方を除外するものではない。そうだとすれば、そのプロセスは、議論の余地はあるが、情報の送信を伴うものということができよう。

もし情報が送信されているならば、その情報は原告のウエブ・サイト上で成立しているのであるから、一応原告が送信していることになる。その情報が被告のウエブ・サイトを通じてコーラーがアクセスすることによってコーラーに提供されるという事実は、私見によれば、その結果被告がその情報を送信している者となるものではない。

7条(2)(a)を根拠とする議論については、コーラーがインターネットによって原告にコンタクトすることは可能であったから、かつ本文の下の注意書によってこの方法でコメントや提案の電送(transmission)が奨励されているのであるから、いかなるケーブル・サービスも相互作用的であり、例外の範疇に入ると主張されたのである。コメントや提案による情報はまた、この方法で被告のウエブ・サイトへも送信できたと主張された。私見によれば、この例外は適用外であるということも明らかに議論できる。インターネットを通じてコメントをし、または提案をする設備は存在するけれども、これはサービスの本質的要素をなすものではないと思われ、その主要な機能はニュースその他の記事を配布することである。とにかく、その設備は原告のケーブル・プログラム・サービスの分離できる部分であると議論する余地がある。

上記の争点の解決は、結局仮差止命令に関する審理において本官に提供されていない技術的資料にかかるであろう。利用できた情報に基づき、かつ提示された議論を根拠として、私見によれば原告は、そのウエブ・サイトで提供されたヘッドラインを被告が自分のウエブ・サイトに編入したことは、保護されているケーブル・プログラムをケーブル・プログラム・サービスに含めることによって、同法20条の侵害を構成するという一応有利な事件を有する。

17条に関しては、MacLeod 弁護士は「審議会の資金提供『失敗』後、センター救済のための入札」その他のヘッドラインは召喚状中申し立てられているが、それらは同法にいうオリジナルな言語の著作物ではなく、従っていかなる手段によるコピー行為も侵害ではないと主張した。そのいずれをもオリジナルな言語の著作物とするほどの技術または労力の投入もなかった、それらは「極めて当たり前である」と主張された。MacLeod 弁護士は、新聞のヘッドラインでいまだかって著作権を得ることができたものはない、とまではいっていない。その主張は、申し立てられたものが著作権を得られない、というのであった。

この点に関して何らの先例も挙げられていない。文学的利点は言語の著作物の必要な要素ではないけれども、それが関係する記事の主題の本質的に簡潔な指標であるヘッドラインが、著作権によって保護されているかどうかは問題であろう。しかしながら、ヘッドラインが言語の著作物であり得ることが容認されていることに照らし、争われているヘッドライン(または、少なくともその一部)が情報を与えるために意図的に結びつけられた8語ほどの語に関するものであるから、少なくとも場合によっては、17条の侵害があったと論ずる余地があるように思われる。

この便宜の比較考量は明らかに仮差止命令発付に有利であると思われる。但しその結論を構成するにあたっては、若干の修正を要する。訴えられている被告の行為は始まったばかりである。被告がこの方法で原告の資料を用いることを当分差止められても、何らの損害を被ることはほのめかされていない。原告がそのウエブ・サイトを設立するためには、彼らの資料のアクセスはそのウエブ・サイトに直接アクセスすることによってのみ得られることが根本であった。これまで損害はなく、予見できる将来に得られるべき広告収入喪失の見込みは明らかに存在する。損失の程度は限定しがたい。現状の下では、原告が被告のウエブ・サイトを通じて原告の新聞記事がもっと早く利用できるようになることによって、原告が利益を得るという主張は取るに足らないと思われる。

若干の修正を第2の結論に加えて、そのように修正された結論の言葉で仮差止命令を発付する。

処置:

仮差止命令はこれを発付する。