原告AMAZON.COM, INC.

被告BARNESANDNOBLE.COM, INC.およびBARNESANDNOBLE.COM, LLC

No. C99-1695P

ワシントン州西部地区シアトル部連邦地方裁判所

1999 U.S. Dist. LEXIS 18660

1999年12月1日提出

処分:[*1]被告Barnesandnoble.com LLCおよびBarnesandnoble.com Inc.、その役員、代理人、雇人、従業員および弁護士、ならびに、彼らまたは被告に積極的に協力または参加している者は、合衆国特許第5,960,411号の侵害の継続を差止められる。

弁護士:原告AMAZON.COM, INC側:David J. Burman、Jerry A Riedinger、Brian G Bodine、PERKINS COIE法律事務所、ワシントン州シアトル。Lynn H. Pasahow、J David Hadden、MCCUTCHEN DOYLE BROWN & ENERSEN法律事務所、カリフォルニア州パロアルト。Christopher B Hockett、MCCUTCHEN DOYLE BROWN & ENERSEN法律事務所、カリフォルニア州サンフランシスコ。

被告BARNESANDNOBLE.COM, INC.およびBARNESANDNOBLE.COM, LLC側:Warren Joseph Rheaume、Karen Koubourlis、FOSTER PEPPER & SHEFELMAN法律事務所、ワシントン州シアトル。Steven I Wallach、Jonathan A Marshall、Ronald M Daignault、Steven D Chin、Thomas A Canova、Bruce J Barker、Garland T Stephens、Kelly D Talcott、John J Lauter, Jr、William G Pecau、Andrew Sanders、PENNIE & EDMONDS法律事務所、ニューヨーク州ニューヨーク。

裁判官:Marsha J. Pechman、合衆国地方判事

意見者:Marsha J. Pechman

意見:予備的差止命令を求める原告の申立てに基づく命令

I. 序文

              1999年10月21日、原告Amazon.comは本法廷に、被告[*2]Barnesandnoble.com LLCおよびBarnesandnoble.com Inc.(以下、総称して「Barnesandnoble.com」という)による特許侵害を提訴する訴状を提出した。問題の特許は、1999年9月28日に交付された合衆国特許第5,960,411号(第 '411号特許)である。第 '411号特許は、「通信ネットワークにより注文を行うための方法およびシステム」であり、26のクレームを含む。

'411号特許は基本的に、商品を特定する情報が消費者に表示されたら、消費者はインターネットを通じて単一の行為(single action)により(たとえばコンピューターのマウス・ボタンを一回クリックするだけで)当該商品の注文を行える方法およびシステムについて説明している。この方法およびシステムは、すでに小売業者がそのファイルの中に購入者についてのさまざまな情報をもっており、購入者のクライアント・システム(たとえばパーソナル・コンピューター)が、小売業者のサーバー・システムが購入者を識別できる識別子をすでに提供している場合にのみ、利用できる。

              Amazon.comは、被告の「Express Lane」の注文機能が、第 '411号特許のさまざまなクレームを侵害していると主張する。その訴状と同時にAmazon.comは、Barnesandnoble.comによる第 '411号特許侵害の予備的差止命令[*3]を求める申立てを提出した。Amazon.comは、本法廷地方規則に基づき、1999年11月12日の予備的差止命令を求める申立ての審理に適切に言及した。2000年1月への審理延期を求める被告の申立てを本法廷が棄却した後に、両当事者はその弁論の要旨を十分に説明し、多くの証言録取書を含む迅速な開示を行った。原告の申立てに関する証拠審理が1999年11月16日に開始され5日間行われた。

              Amazon.comは審理において、元特許商標庁長官Henry Manbeck弁護士、Amazon.comの会長兼最高経営責任者Jeffrey Bezos氏、および電子商取引の専門家として提示されたGeoffrey Mulligan氏による直接の証言を提示した。Barnesandnoble.comは審理において、ワシントン大学セントルイス校のコンピューター科学助教授でありWeb Basketと呼ばれるプログラムの開発者でもあるJohn Lockwood博士、CompuServe Inc.の技術顧問で元社員のAlexander Trevor氏、Barnesandnoble.comの最高情報責任者Gary King氏[*4]、およびBarnesandnoble.comの最高経営責任者Jonathan Bulkeley氏による直接の証言を提示した。さらに両当事者は共同で、第 '411号特許の発明者と記されているShel Kaphan氏、電子商取引問題の専門家として提示されたコロンビア・ビジネス・スクールのEric Johnson教授、ジョージ・ワシントン大学ロー・スクールのMartin Adelman教授、および電子商取引関連のサービスを提供しているNima Hunter, Inc.の創立者で会長のDonald Carli氏からの証言録取書を提出した。

              被告はその訴答および審理において、幾つかの抗弁を提起した。Amazon.comは実体的事項に関して勝訴しないだろうという立場の根拠として、被告は第 '411号特許は自明性および予測性によって無効であり、Express Lane機能は第 '411号特許のどの機能も侵害していないとの主張を、特に強調した。被告はより少ない程度で、第 '411号特許は実施不能であるとも指摘した。さらに被告は、Amazon.comは回復不能な損害を立証できず、困難のバランスは[*5]Amazon.comの有利には傾かず、予備的差止命令を出すことは公益に役立たないと主張した。

              1999年11月22日、すべての証人の証言および証拠の提出の後、両当事者は、事実認定および法律問題に関する結論の案を本法廷に提出した。本法廷は1999年11月23日に最終弁論を行った。両当事者が提出した書面、訴答、証言、証拠および主張に基づき、本法廷は、原告は以下の事項を立証したと認定する:(1) 実体的事項に関して勝訴する相当の可能性、(2) 予備的差止命令が発せられなかった場合に回復不能な損害を受けること、(3) 困難のバランスは原告の有利に傾くこと、(4) 求めた予備的差止命令は公益に寄与すること。被告は、特許の有効性および特許侵害に関して幾つかの抗弁を提起したが、原告は、被告による抗弁は実質的実体をもっていないことを示した。したがって本法廷はここに、予備的差止命令を求める原告の申立てを認める。

              予備的差止命令は、1999年12月4日土曜日太平洋標準時午前12時01分に、Amazon.comによる[*6]総額一千万ドルの保証金の提出とともに発効し、本訴訟の係争中、有効であり続ける。しかし、被告はExpress Lane機能が第 '411号特許の侵害を避けられるように、本命令に合致した態様で修正されるのであれば同機能を提供し続けることができる。

              連邦民事訴訟規則52 (a) に基づき、本法廷の事実認定および法律問題に関する結論を以下に記す。

II. 事実認定

背景

1. 原告Amazon.com Inc.(「Amazon.com」)は、ワシントン州シアトルにその主たる事業場所をもつ、デラウェア州の法人である。同社はそのウェブサイトwww.amazon.comを通して、顧客が書籍、音楽、ビデオ、家電製品、ゲーム、玩具、ギフト、電子的グリーティング・カードその他の品目を、ワールド・ワイド・ウェブによって見つけて購入できるようにしている(証拠物11 Bezos供述P 3)。Amazon.comは、大手のオンライン書籍小売業者である(証拠物A-18 at 19、P 2)。

2. 被告Barnesandnoble.com LLCは、ニューヨーク州ニューヨークにその主たる事業場所をもつ、デラウェア州有限責任会社である。Barnesandnoble.com LLCは、書籍、ソフトウェア、音楽その他の販売するウェブサイトを運営している(証拠物36 at 6)。

3. 被告Barnesandnoble.com Inc.は、ニューヨーク州ニューヨークにその主たる事業場所をもつ、デラウェア州法人である[*7]。Barnesandnoble.com Inc.は持株会社であり、その唯一の資産はBarnesandnoble.com LLCの株式の20%であり、その事業は、Barnesandnoble.com LLCの唯一の経営者として行動することである。Barnesandnoble.com Inc.はBarnesandnoble.com LLCのすべての主たる事業上の決定を支配する。両被告はここに総称して、「Barnesandnoble.com」として言及される(証拠物36)。

4. 1997年5月以前のある時、Amazon.comのCEO、Jeffrey Bezos氏は、Amazon.comの顧客が、コンピューター・マウス・ボタンを1回クリックするだけで商品を購入できるようにするアイデアを考え付いた(Tr. at 123:4-22、124:1-12(Bezos))。Amazon.comはこのアイデアを、1997年9月に事業に導入した(Tr. at 125:9-13(Bezos))。

5. 1999年9月28日、「通信ネットワークを通じて注文を行うための方法およびシステム」という表題の合衆国特許第5,960,411号(「第 '411号特許」)が交付された(訴状、証拠物A)。第 '411号特許の提出日は1997年9月21日(同上)。同特許はAmazon.comに譲渡されAmazon.comが所有している。

6. 証拠によれば、同特許の交付前に担当審査官は、特許商標庁(PTO)で利用できる特許データベースを検索し[*8]、PTOの科学技術情報センター(「STIC」)を通じて、民間のデータベースを検索した。さらに審査官は、第三者の検索会社に、特許のない先行技術の検索を委託した(Tr. at 62:20-25(Manbeck);証拠物13、Manbeck供述at PP 8、9)。審査官はまた、先輩の検査官および弁護士と相談し、同特許が特許性のある主題を含んでいることを確認した(Tr. at 60:16-63:14;65:2-10;72:20-73:9(Manbeck);証拠物13、Manbeck供述at P 10)。特許の審査経過およびManbeck元長官の証言からの証拠に基づけば、PTOは同特許を十分に審査した(Tr. at 73:10-13(Manbeck);証拠物13、Manbeck供述at P 11)。

先行技術

7. 単一操作注文(single-action ordering)およびショッピング・カード・モデルなしでの単一操作注文の実現を除けば、第 '411号特許の独立クレーム(クレーム1、6、9および11)内のすべては先行技術の中にあると、原告側の専門家Geoffrey Mulliganは証言した(Tr. at 180:14-181:3)。

8. 被告は、自明性および予測性が理由で第 '411号特許の単一操作注文要素は無効であるとの主張の裏付として[*9]、幾つかの先行技術の参考資料に関する証拠を提示した。先行技術についてのこの証拠は、大きく2つのカテゴリーに分けられる。(食料雑貨類やコンピューター装置などの)有形物をオンラインで注文するシステムと、電子文書配布システムである。前者には、John Lockwood博士のWeb Basketシステム、参考資料「仮想店舗の創出」で説明されているNetscape Merchant System、および「Oliver's Market」ウェブ・ページがある。後者には、「Trend」機能に関するAlexander Trevor氏の証言で説明されたCompuServeの財務情報サービス、および合衆国特許第5,708,780号(第 '780号特許)がある。第 '411号特許が審査されていたときこれらの先行技術の参考資料はPTOの手元になかったことは、争われていない。

Web Basket

9. 被告は、被告の専門家John Lockwood博士が1996年8月頃に開発した、「Web Basket」と呼ばれるオンライン注文システムに関する証拠を提出した(Tr. at 214:23-216:2;218:13-229:18(Lockwood);証拠物A-56、Lockwood供述P 9)。被告は、Web Basketは少なくとも第 '411号特許のクレーム6-8を予測しており、この参考資料はそれだけで、または[*10]他の先行技術の参考資料との組合せで、第 '411号特許のクレームを自明なものとすると主張する。

10. Web Basketは使用者に、商品を仮想ショッピング・バスケットに集め、ショッピングが終わったときにそれらをチェック・アウトすることを要求する。(Tr. at 175:6-17;176:7-179:13(Mulligan);証拠物12、Mulligan補足供述at P 29)。Web Basketはまた、買物を完了するには登録済みの使用者にも幾つかの確認ステップを要求する(証拠物12、Mulligan補足供述at PP 18-22;証拠物A-56、Lockwood供述PP 41-44)。

11. Web Basketは、購入される商品が表示された時点以降、複数のステップからなる注文プロセスを用いていると本法廷は認定する(Tr. at 275:7-276:5参照)。この複数のステップは、第 '411号特許の単一操作要件とは合致しない。

12. Lockwood博士は反対尋問において、コンピューター・マウスを一回クリックしただけで商品を購入できれば、Web Basketで購入している人にとってもっと簡単に「なりえた」が、単一操作注文というオプションを使用者に提供することは考えなかったと認めた。

Netscape Merchant System

13. 被告はまた、先行技術の参考資料として、1996年に著作権を得た「仮想店舗の創出」という表題の本[*11]の抜粋を提出した(証拠物A-63;証拠物27)。被告はこの資料の中で、以下の表現に焦点を当てる:「商人は買物客に、幾つかのまたはすべての商品に対してインスタント購入ボタンを提示し、チェックアウト時の再検討を省略させることもできる」(証拠物27 at 7;Tr. at 309:23-310:18;312:3:20(Lockwood))。被告は、Netscape Merchant Systemの参考資料第 '411号特許の各独立クレームを予測しており、この参考資料はそれだけで、または他の先行技術の参考資料との組合せで、第 '411号特許のクレームを自明なものとすると主張する。

14. Netscapeの文章の他の部分は、チェックアウトおよびチェックアウト時の再検討を必要とする、複数ステップのショッピング・カート注文モデルを説明している(証拠物27)。第一段階は、商品を使用者のカートに入れることを要求する。すると商品を特定する情報が使用者のコンピューターに記憶される。チェックアウトの再検討という第三段階は、チェックアウト段階中の購入商品のリストの[*12]商人のコンピューターへの送信後に起こらなければならない。したがって標準的なNetscapeは、少なくとも三段階を使用者に要求しているように見える(Tr. at 324:12-327:18(Lockwood))。

15. 文脈から読み取ると、被告が依拠した数行は、チェックアウト時の再検討の取り除きのみを説明しており、少なくとも購入完了のための他の2段階は残っているようである(Tr. at 327:10-18(Lockwood);証拠物27 at 7も参照)。したがって、「インスタント購入」という用語の他には、第 '411号特許のクレーム6と9が要求するような単一操作注文要素、あるいは第 '411号特許のクレーム1と11が要求するような単一操作を、Netscapeシステムが実現していると示唆するものはない。さらに被告の専門家は、Netscapeのインスタント購入機能がどのように作動するのかわからないことを認めた(Tr. at 312:3-20;350:7-12(Lockwood))。

Oliver's Market

16. 被告は、「Oliver's Market注文システム」という表題のウェブサイトからの数ページを提出した(証拠物A-106)。このウェブは、www.sonic.net/[ほぼ]raptor/current/how2ordr.htmlでアクセスできる。Oliver's Marketシステムは第 '411号特許の独立クレームすべてを予測しており、この[*13]参考資料は、それだけで、または他の先行技術の参考資料との組合せで、第 '411号特許のクレームを自明なものとすると、被告は論じる。

17. Oliver's Marketの参考資料は、「その図を一回クリックするだけで商品を注文できます」という文から始まっているが、そこで説明されている注文システムは複数段階のショッピング・カート・モデルである(証拠物A106)。

18. 最初の文で言及されている「一回クリック」は、商品を使用者のショッピング・カートに加えるのに必要なクリックであり、注文プロセスを完了させない。この資料で説明されている方法は、一回の操作によって商品を選択した後で、注文を完了させるための別の諸操作を明確に要求する。つまり (1) 商品を取りに行くか配達かを指定し、(2) 取りに行くまたは配達してほしい時間を指定し、(3) 使用者がショッピングを終わったことを示す。これは標準的なカート・モデルで要求されるチェックアウト手続きだと思われる。これらの操作は、独立クレーム1、6、9および11の単一操作という要件とは合致しない。

'780号特許

19. 被告はまた、[*14]合衆国特許第5,708,780号(第 '780号特許)が第 '411号特許のクレームを予測するまたは自明にするという主張の裏付けとして、Lockwood博士の証言を提出した。第 '780号特許は1995年6月7日に提出、1998年1月13日に交付となっている(証拠物A-67)。第 '780号特許の表題は「インターネット・サーバー・アクセス・コントロール・モニター・システム」である。第 '780号特許の説明は、特定のドメイン内のウェブ文書へのアクセスをコントロールするサービスに向けられている。第 '780号特許は第 '411号特許のクレーム1と11を予測すると被告は主張する。

20. 第 '780号特許の好適な実施例においては、使用者はウェブを普通に走査する(証拠物A-67、第3欄、II 21-22)。コンテンツ・サーバーはウェブ文書を使用者に提供し、使用者が「管理された」コンテンツ、つまり使用者が走査の許可を必要とするウェブ・ページへのアクセスをいつ求めるか判断する(同上、第3列、II 22-25;図2A)。

21. 第 '780号特許は、商品の注文を生成するとは明示的には示していない。第 '780号特許のシステムが商品の注文を生成するか否か、いかにして生成するかに関する記録は、Lockwood博士の証言のみから構成される。この点に関するLockwood博士の証言は混乱しており、同証人は[*15]、説明されているシステムがいかに機能するか、理解していないように思われる。サーバー・システムが制御されたページを読むためにそのディスク・ドライブのファイルを開けたときに注文の生成は行われると、Lockwood博士は証言した(Tr. at 305:1-19)。Lockwood博士はまた、使用者は制御されたページへのリンクを選択することによって、注文をするとも証言した(Tr. at 302:5-303:5)。

22. 本特許に関するLockwood博士の証言、および特許第 '780号自体は、認められた要請がコンテンツ・サーバーによって受け取られたときに、制御されたページが単に使用者のブラウザーに戻るシステムを説明する(証拠物A-67、図3;Tr. at 309:2-16)。

23. 第 '780号特許においてもし請求がなされるとすれば、それは記録された取引に基づいてなされると思われる(Tr. 306:9-15)。この点に関して第 '780号特許は、LEXISやWESTLAWといったオンライン情報サービスの使用者がどの文書を要請したかを追跡し、その要請に基づいて請求をするための方法以上のものは示していない。

CompuServeのTrendシステム

24. 被告は、CompuServeは1990年代の中頃から、CompuServeの加入者が追加料金を支払って株式チャートを得るという、「Trend」と呼ばれるサービスを提供したとの証拠を提出した。被告は、現在のシステムからの画面ショット、および、その現在の画面ショットが1990年代中頃にCompuServeの加入者に提供されていたものと実質的に同一であるとのCompuServeの元社員の証言を、[*16]提出した(Tr. at 369:12-20(Trevor))。Trendシステムは第 '411号特許を予測しており、同特許のさまざまなクレームを自明なものとすると、被告は主張する。

25. CompuServeのシステムは、ワールド・ワイド・ウェブのアプリケーションではない(Tr. at 380:21-381:7(Trevor))。そうではなく、使用者がログインした後、使用者のコンピューターとCompuServeとの間が持続的に接続され、それは使用者がログオフするまで続く(Tr.at 368:24-369:8;380:25-381:16(Trevor))。したがってCompuServeは、使用者を特定するという問題を解決しなかった。

26. CompuServeからチャートを注文するには、使用者はまず、自分のIDおよびパスワードでCompuServeにログインし、Trendアプリケーションのダイアログ・ボックスを選択しなければならない。ボックスが表示されたら、使用者は少なくともまず、(1) 株式ティッカー・テープのシンボルをタイプし、(2) 使用者がティッカー・テープのシンボルの最初の文字をタイプしたときに活動状態になる、チャート・ボタンをクリックしなければならない(Tr. at 377:25-378:18;388:4-14(Trevor))。本法廷は、[*17]この方法は一回ではなく二回の操作を含むと認定する。さらに、使用者のコンピューターが、要請されたチャート画像が実際にアクセスされたという確認をCompuServeへ送り返すというもう一つの操作をするまでは、CompuServeは使用者のアカウントへの課金は開始しない(Tr.at 384:5-14(Trevor))。

先行技術の要約

27. 被告が引用した各先行技術は、第 '411号特許のクレームで説明されている方法およびシステムとは重要な違いがある。本法廷は、被告が提示した先行技術のいずれも、第 '411号特許のクレームを予測しないと認定する。自明性の問題に関しては、本法廷は、被告が提示した先行技術の参考資料と第 '411号特許との間の相違は、大きいと認定する。さらに、電子商取引に通常の技能をもつ者にこれらの参考資料を組み合わせるような先行技術の教え、示唆あるいは動機に関して、記録には十分な証拠はない。本法廷は、単一操作注文が可能となるように自分のWeb Basketプログラムを修正することは考え付かなかったと、[*18]その実現は容易であると証言したにも関わらずLockwood博士が認めたことは、特に重要であると認定する。このことは、先行技術がこの分野に通常の技能をもつ人に、第 '411号特許の発明を教えるというLockwood博士の結論を、否定するものである(Tr. at 319:5-320:22(Lockwood))。

Barnesandnoble.comのShopping CartとExpress Lane

28. Barnesandnoble.comは顧客に、2つの購入オプションを提供している。一方はShopping Cartと呼ばれ、他方はExpress Laneと呼ばれる(証拠物9、Mulligan供述at PP 7、8.i、証拠物H)。この2つは別個のものであり、組み合せることはできない(Tr. at 429:6-10(King);証拠物9、Mulligan供述at証拠物I(「Shopping CartとExpress Laneは注文をするための2つの異なる方法である。組み合わせることはできない」と指摘))。Barnesandnoble.comのShopping Cartオプションには、商品の仮想ショッピング・カートへの投入、購入を完了するための「チェックアウト」など、標準的なショッピング・カート・モデルの諸段階が含まれる(証拠物9、Mulligan供述at P 14j)。

29. Barnesandnoble.comのExpress Laneではその機能に登録していた顧客は、購入される本やその他の商品を説明し特定している詳細ページまたは製品ページに示されているExpress Laneボタンを単にクリックするだけで、商品を購入できる(証拠物9、Mulligan[*19]供述at 証拠物R)。Express Laneボタンの下の文は、使用者に、「ワンクリックだけで買おう」と呼び掛けている(同上)。

30. Barnesandnoble.comはそのウェブ・サイトを通じて常に、Express Laneをワンクリック注文法として説明している(Tr.at 463:15-464:10(Bulkeley))。1999年5月のその事業説明書において、Barnesandnoble.comは一貫してExpress Laneを、ワンクリック注文を可能にするものとして説明している(たとえば証拠物36at 6、44、47参照)。1999年11月の株主への10-Q報告書において、Barnesandnoble.comはExpress Laneをワンクリック注文システムとして説明している(証拠物39 at 13)。Barnesandnoble.comがExpress Lane注文プロセスを、複数の操作を必要とすると説明したことは、本訴訟において以外にはなかったようである(Tr. 471:1-4(Bulkeley))。

31. Barnesandnoble.comは1998年5月に、Express Lane機能を使い始め、報道発表においてその機能を「Express Lane(SM)ワンクリック注文」として説明し、「訪問者は書籍、ソフトウェアあるいは雑誌を、ボタンをワンクリックすれば注文できる」と述べた(証拠物37)。

32. Barnesandnoble.comの各ページのトップにあるショッピング・カートのアイコンをクリックしても、使用者がExpress Laneを使って購入した商品は表示されない(Tr.[*20]at 430:14-17(King))。

33. Amazon.comのワンクリック機能と、その後にBarnesandnoble.comが採用したExpress Laneの機能の強い類似性は、Barnesandnoble.comがAmazon.comの機能をコピーしたことを示唆する(証拠物10、Johnson供述、P 13)。

非自明性の直接証拠

34. Amazon.comは、非自明性の直接証拠を提出した。Amazon.comの創立者であり第 '411号特許の発明者であるJeff Bezosは、「多くの顧客はオンライン購入には躊躇いがちであり、幾分危惧も抱いているので、徐々に購入時点まで導いていくというのが通常の知恵であった。さらに顧客は、正しい発送と請求に関する記憶された個人情報に、確認なしで依拠することに慣れていなかった」と証言した(証拠物11、Bezos供述、P 9)。

35. コロンビア・ビジネス・スクールのEric Johnson教授は、供述において、「Amazon.comのワンクリック(R)購入は、オンライン小売業における大きな革新であった。消費者のショッピング体験を中断させずに買物をすることを可能にし、また余分な確認要求を撤廃して、消費者がその買物を完了させる可能性を最大限にし[*21]、インターネットの機密という真のあるいは感覚的な問題に対する消費者の懸念を最小限にする方法で、無駄をなくした」と証言した(証拠物10、Johnson供述、P 12)。

36. さらに、オンライン購入の、先行技術のショッピング・カート・モデルでの経験にも関わらず、両当事者の技術専門家は、この発明を考えたことはなかったことを認めた。Mulligan氏は、ワンクリックでの注文は「過去に行われていたことに比べて大きな飛躍であった」と証言した(Tr. at 190:25)。Mulligan氏はさらに、「私は今まで何年も電子商取引に関わってきた。しかし私は、ショッピング・カートはなくせるというアイデア、つまり商品をクリックすると直ぐにそれが発送される、プロセスはそれで完了というアイデアは思いつかなかった」と証言した(Tr. at 199:3-7)。Mulligan氏はまた、「このようなことが実現したのは、ウェブサイトと消費者に対する信頼が飛躍的に増大したからである」と考えると証言した(Tr. at 199:12-14)。さらに、すでに指摘したように、Lockwood博士は、単一操作注文を行えるようにWeb Basketを修正することは一度も考えなかったと証言した(Tr. at 277:19-23)。

客観的要素

37. 原告の単一操作注文法は、大きな割合を占める、開始されたが完了されない、つまりショッピング・カーが放棄される回数を減らすためにオンライン注文プロセスを簡略化するという、長い間(少なくとも電子商取引が存在していた比較的短い期間において[*22])認識されてきた未解決の要求に対処した。オンライン消費者がショッピング・カーを使い始めるが放棄するという問題は、両当事者およびその専門家によって認識された(証拠物10、Johnson供述P 8;証拠物11、Bezos供述P 8;Tr. at 473:14-474:5;(Bulkeley);Tr. at 418:1-420:12(King))。

38. オンライン業界全般、そして特にAmazon.comにおいて、消費者が動かし始めたショッピング・カートの半分以上が、チェックアウトの前に放棄されている(Tr. at 418:9-11(King))。ショッピング・カートの放棄という問題を軽減する試みとして、Barnesandnoble.comはチェックアウトを、できる限り単純で容易にしようとしている(Tr. at 473:24-474:5(Bulkeley);Tr. at 419:24-420:8(King))。第 '411号特許という単一操作注文という発明は、チェックアウト・プロセスを完全に撤廃することにより、この問題を解決する。

39. Barnesandnoble.comは、他の多くの電子商取引による小売業者が、単一操作注文を使ってきたという証拠を提出した(Tr. at 453:11-456:15(Bulkeley))。

40. Amazon.comの単一操作注文は、[*23]数百万の顧客によって利用されており、この機能が商業的に成功したことを示唆する(証拠物11、Bezos供述、P 14)。Barnesandnoble.comatのExpress Laneも、その売上の重要な部分を占める(証拠物28)。単一操作注文の商業的成功のさらなる証拠は、Barnesandnoble.comがそのExpress Lane機能を、公表後の報道発表(証拠物37)や事業説明書(証拠物36 at 6、44および47)で宣伝したという事実によっても示される。実際、Barnesandnoble.comatはExpress Laneを、そのオンライン・ビジネスにおける「主な強化」の一つとして説明した(6に同じ)。

41. 業界のアナリストや大衆新聞も、Amazon.comの単一操作注文プロセスが革新的であると認めた。電子商取引のオブザーバーでコンサルタントでもあるPatricia Seyboldは、Amazon.comのワンクリック(R)購入を、「伝説的である」と表現した(証拠物11、Bezos供述P 14;証拠物A)。ニューヨーク・ポストのJoseph Gallivanは、Amazon.comのワンクリック(R)購入を、「魅惑的な革新」と表現した(証拠物11、Bezos供述P 14;証拠物B)。InfoWorldは、「ネット小売業者は、顧客がしばしば仮想チェックアウト・ラインにまで進まないことに、気付き始めている。オンライン・ショッピング・カートに製品を入れるが、[*24]それを単に放棄してしまう。これらの問題に直面したとき、小売業者がAmazon.comのワンクリック購入を羨望の目で見てきたことは、当然であろう」と指摘した(証拠物11、Bezos供述P 14)。

回復不能の損害

42. 本件の係争中にBarnesandnoble.comの特許侵害によってAmazon.comが受ける損害は、回復不能である。第 '411号特許に説明されている発明は、Amazon.com、Barnesandnoble.com双方のウェブサイトで利用できる単一操作注文を利用する顧客が多いこと、あるいは単一操作注文を採用したとBarnesandnoble.comが主張する他の電子商取引小売業者が多いことなどから証拠立てられるように、商業上大きな価値がある(証拠物11、Bezos供述P 14;証拠物28;Tr. at 453:11-456:15(Bulkeley))。

43. 自身をその競争相手Barnesandnoble.comから区別するのにその発明を利用するという利益を否定された場合にAmazon.comが受ける損害は、金額では容易に測れない(Tr. at 474:19-475:19(Bulkeley))。

44. Amazon.comはそのショッピング体験を競争相手から区別するために革新的戦略を追求し、現代の電子商取引の成長段階中に顧客との関係を築き[*25]その顧客基盤を広げるためにかなりの投資をしてきた(Tr. at 107:22-109:1(Bezos);証拠物10、Johnson供述P 7)。

45. 顧客は、自分がなじんだサイトに忠実になる。使い易さや時間が節約できる機能などの比較は、オンライン事業の相対的な成功をもたらす重要な要素である(証拠物10、Johnson供述P 4;Tr. at 122:4-11;419:25 & 420:1-12)。使いやすく学びやすい消費者とのインターフェースの創造は、電子商取引での競争において主要な側面である。Amazon.comの商業上の成功は、ある部分、顧客がサイトを利用するときの時間と労力を削減する努力にかかっている(証拠物10、Johnson供述P 7;証拠物37 at 41も参照)。

46. 顧客の体験を改善し新しい顧客を引き付けるためのAmazon.comの投資の一つが、単一操作注文の開発であった(Tr. at 123:4-124:6(Bezos))。この機能はAmazon.comの顧客に人気があり、単一操作注文という革新は業界で称賛された(Tr. at 125:9-126:6(Bezos);証拠物11、Bezos供述at P 14、証拠物A、B)。

47. 被告を含む、他の電子商取引小売業者は、その後、Amazon.comの単一操作注文プロセスの機能に実質的に同一のシステムを採用した[*26]。Barnesandnoble.comに関しては、その単一操作注文システムExpress Laneの後からの採用により、そのウェブサイトとAmazon.comのサイトとの主要な相違点は解消したと本法廷は認定する。

48. Barnesandnoble.comの特許侵害の継続が1999年の休暇中のショッピング・シーズン中も認められたら、Amazon.comの損害は倍加するだろう(証拠物10、Johnson供述P 16;証拠物11、Bezos供述P 20)。ホリデー・シーズンが歴史的に、電子商取引での顧客の獲得にとって主要期間であったこと、そして電子商取引ビジネスの長期的な展望にとって重要な影響をもちうることは争われていない(Tr. at 474:9-18(Bulkeley)参照)。たとえば1998年、Amazon.comはその顧客基盤を、一年の最後の6週間だけでほとんど20%も増やした。この時期に顧客は百万以上も増えている(証拠物11、Bezos供述at P 20)。顧客の獲得にとって、今年はもっと重要なシーズンであると思われる(証拠物10 Johnson供述at PP 16-17;証拠物11 Bezos供述at P 20;Tr. at 108:3-16)。業界は、[*27]今年の11月と12月に消費者オンラインで使われる金額は、60億ドルから120億ドル、つまり1998年の同一期間中に使われた金額の2、3倍になると予想している(証拠物10;Johnson供述at P 16、証拠物C、D)。

49. 千万人もの新しい使用者が1999年のホリデー・シーズン中に最初のオンライン購入をすると予想される(証拠物10;Johnson供述P 16)。これらの新顧客のうちの数百万人は、初めてAmazon.comあるいはBarnesandnoble.comで買物をするだろう。電子商取引の長期的な成功は、2003年までには780億ドルに達するという推定もある将来の販売において有効に競争する能力を維持するために、これらの新しいオンライン購入者との積極的な関係を今築くことに、係っている(証拠物10;Johnson供述、証拠物C;Tr. at 474:9-18)。

50. Barnesandnoble.comが1999年のホリデー・シーズン中、そして本訴訟の係争中に、現在の構成でのExpress Laneを提供し続けられるとすれば、Amazon.comは単一操作注文を提供することによって、主要な競争相手から自身を差別化することができず、Barnesandnoble.comに市場占有率および顧客を奪われるだろう。この損失は損害賠償金によっては容易に補償できないと本法廷は認定する。特許を得た発明に対するAmazon.comの独占的権利は、[*28]そのサイトで提供されている顧客の体験をBarnesandnoble.comのような競争相手から差別化するAmazon.comの能力にとって重要である。

III. 法律問題に関する結論

1. 本法廷は28 U.S.C.§§ 1331および1338 (a) に基づき、Amazon.comの特許侵害の請求に関して事物裁判権をもつ。被告はワシントン州で事業を行うという特権を意図的に利用したので、この地区の人的裁判権に服する。

2. 裁判地は、被告はこの地区に居住しているので(28 U.S.C.§1391 (c))、28 U.S.C.§§1391 (b) および1400 (b) に基づきこの地区で適切である。

3. 1999年9月28日に、「通信ネットワークを通じて注文するための方法およびシステム」という表題の合衆国特許第5,960,411号が、適格かつ合法的に交付された。同特許はAmazon.comに譲渡されAmazon.comが所有している。

予備的差止命令の基準

4. 「35 U.S.C.§283に基づき予備的差止命令を得るには、当事者は以下の4つの要素に鑑みて、その権利を立証しなければならない:(1) 実体的事項において勝訴する[*29]相当の可能性、(2) 回復不能な損害、(3) 困難のバランスが自分に有利に傾く、(4) 差止命令への公益への影響」。Hybritech, Inc. v. Abbott Labs.、849 F.2d 1446、1451(連邦巡回、1988)

A. 実体的事項において勝訴する可能性

有効性

5. 有効性であるとの法律上の推定35 U.S.C.§282は、すべての特許に適用され、「特許権の付与の安定性に貢献する」ことを意図されている。Magnivision, Inc. v. Bonneau Co.、115 F.3d 956、958(連邦巡回、1997)。この推定は、特許侵害者とされる人に対する予備的差止命令の申立てを含む、訴訟のすべての段階で機能する。Canon Computer Systems, Inc. v. Nu-Kote Int'l, Inc.、134 F.3d 1085、1088(連邦巡回、1998)参照。しかし被告は、特許の有効性に関する「実質的な疑問」を提起し、差止命令を求めている当事者が、この抗弁は「実質的な実体」に欠けていることを示さなければ、この推定を覆すことができる。New England Braiding Co. v. A.W. Chesterton Co.、970 F.2d 878、883(連邦巡回、1992)(「有効性に対して特許権者に立証責任はないが[*30]、特許権者は特許侵害者とされる人の抗弁には実質的な実体がないことを示さなければならない」と指摘)参照。被告は、特許第 '411号の有効性に関して多くの疑問を提起したので、本法廷は以下でそれらを議論する。

予測性

6. 予測性は事実問題であり、Atlas Powder Co. v. Ireco Inc.、190 F.3d 1342、1346(連邦巡回、1999)、「単一の先行技術の中に同一の要素がすべて、正確に同一の状況で見出だされ、同一の方法で統合されている」場合にのみ抗弁となる。Perkin-Elmer Corp. v. Computervision Corp.、732 F.2d 888、894(連邦巡回、1984)。予測性は事実に関する調査なので、本法廷はその認定および準拠法を、便宜のためにここに繰り返す。

7. 本法廷は、Web Basketは第 '411号特許のどのクレームも予測しないと認定する。第 '411号特許の各クレームは、「単一操作注文要素」[クレーム1-10]、または「特定された商品を注文するための行われる単一の操作」[クレーム11-26]を要求する。Web Basket注文プロセスは、注文を完了するまでに使用者が少なくとも5つの操作をすることを要求する。したがってWeb Basketは、「単一操作[*31]注文要素」も「特定された商品を注文するための行われる単一の操作」も含まない。

8. さらに、クレーム1-5と11-26は、「商品はショッピング・カート注文モデルを使わずに注文される」[クレーム1-5]、または「商品はショッピング・カート・モデルとは独立に注文される」[クレーム11-26]ことを要求する。Web Basketはそれ自体がショッピング・カート・モデルなので、これらの要求されている要素にも欠けている。

9. 被告が提示したNetscape Instant Buyオプションの説明は、合計4行から構成される。被告側の専門家Lockwood博士は、この参考資料で説明されている機能に関してさらなる情報を提供できなかった。そして結局、この機能がどのように作動するのか知らないことを認めた(Tr. at 312:3-20;350:7-12)。したがってNetscapeの参考資料は、予測させる参考資料に対して要求されるようには、この分野に通常の技能をもつ人(たとえばLockwood博士)にこの発明を教えない。

10. さらに文脈から読み取ると、この参考資料は、必要とされるチェックアウト段階のうちの一つを省略するオプションをもつ、ショッピング・カート・モデルを説明しているように思える。被告にとって最も有利な見方で見ても、Netscapeの参考資料はWeb Basketと同じ理由で[*32]、第 '411号特許のクレームのどれも予測しない。単一操作注文要素を含んでいない。さらに、クレーム1と11が要求するようには、ショッピング・カート・モデルと独立にはなっていないように見える。

11. 同様に、Oliver's Marketの参考資料も全体として読むと、明らかに、多段階のショッピング・カート・モデルを開示している。したがってこれも、ショッピング・カート・モデルとは独立の単一操作注文要素という、Web BasketやNetscapeに欠けている要素に欠けている。

12. 「インターネット・サーバーのアクセス・コントロールおよびモニター・システム」という表題の第 '780号特許も、第 '411号特許のどのクレームも予測しない。すでに議論したように、第 '780号特許で説明されているシステムは、ある種のウェブ・ページへのアクセスをコントロールする。ウェブ・ページが、第 '411号特許のクレームで使用されている意味での注文される「商品」だと仮定したとしても、第 '780号特許で説明されているアクセス・コントロール・システムは注文システムではない。

13. 第 '411号特許の各クレームは、サーバー・システムが、顧客が要求した商品の注文を生成することを必要とする。この要件は、各独立クレームでやや異なる言葉で説明されているが、趣旨は同一である:「要求された商品を購入する注文を生成する」(クレーム1[*33]);「注文を完了するのに必要な追加情報を見出だし、サーバー・システムが生成された注文を実行できるように」(クレーム6);「検索情報を使って、指示された使用者のために商品の注文をする」(クレーム9);「それにより商品はショッピング・カート・モデルとは独立に注文され、商品の購入を完了させるために注文が実行される」(クレーム11)。

14. 第 '780号特許で説明されたシステムは、他のどのウェブ・サーバーもするように、単に、要求されたウェブ・ページを、認められた使用者に送る。訪問したページの記録に基づき使用者は後で請求されるかもしれないという事実は、クライアントが要求したウェブ・ページの標準的な転送を、第 '411号特許のクレームが必要とする、注文の生成や実行システムに転じることはない。

15. さらに第 '411号特許のクレーム6-10は、単一操作注文要素に加えて、ショッピング・カート注文要素を必要とする。第 '780号特許は、ショッピング・カート注文要素を開示していない。ショッピング・カート・モデルを使ってウェブ・ページを「注文」することは不可能と思われるということが、ウェブ・ページが、第 '411号特許のクレームの意味で注文される商品ではないことを示唆する。いずれにしろ第 '780号特許のアクセス・コントロール・システムは[*34]、第 '411号特許のクレームが必要とする他のクレーム要素、つまり注文生成段階/要素およびショッピング・カート注文要素に欠けており、したがって、それを予測しない。

16. 最後に、CompuServe Trendサービスは、第 '411号特許のクレームを予測しない。第 '411号特許の各クレームは(9と10を除き)、(やや異なる表現で)注文される商品を特定する情報の表示、および商品の注文のために取られる単一操作を要求する:「商品を特定する情報の表示、および単一操作のみの実行に応答して、商品注文の要請を送る」(クレーム1);「商品を特定する情報を表示するための表示要素;単一操作注文要素;単一操作のみの実行に応答して、特定された商品を注文する要請をサーバー・システムに送る」(クレーム6);「商品を特定する情報の表示、および特定された商品を注文するために実行される単一操作の指示を表示」(クレーム11)。

17. CompuServe Trendシステムにおいては、チャートを受け取るには使用者は、チャートを注文したいと思う[*35]株式を特定するティッカー記号の中にタイプしなければならない。したがってこのシステムは、一回の操作では使用者が注文する商品を特定しない。つまりCompuServeは、クレーム1-8あるいは11-26を予測しない。

18. 第 '780号特許に関してすでに説明したように、第 '411号特許のクレーム6-10は、単一操作注文要素に加えて、ショッピング・カート注文要素を必要とする。CompuServe Trendサービスがショッピング・カート要素を含んでいたという証拠はない。したがって、被告が認めるように、これはクレーム6-10を予測しない。

自明性

19. 「35 U.S.C.§ 282が指示する有効性の推定の中には、特許への異議申立て者が、明確かつ納得できる証拠により事実を証明することによって覆さなければならない、非自明性の推定が含まれる。この推定は、特許商標庁(PTO)が先行技術を引用しなかったことを証明しても影響を受けないが、その技術が、引用されたものよりも、より重要であるならば、異議申立て者はその立証責任を果たせるかもしれない。」Perkin-Elmer Corp. v. Computervision Corp.、732 F.2d 888、894(連邦巡回、1984)(引用省略)。

20. 自明性の問題は、法律と事実との混合問題である。最終的には法律問題となるが、[*36]それは幾つかの事実に関する調査に基づく:(1) 先行技術の範囲と内容、(2) 先行技術とクレームとの相違、(3) 関係する分野における通常の技能のレベル、および (4) 適用される二次的考慮。Weatherchem Corp. v. J.L. Clark, Inc.、163 F.3d 1326、1332(連邦巡回、1998)参照。

21. 自明性を根拠とした第 '411号特許のクレームの無効性に関する被告の証拠は、主としてLockwood博士による、自分は自分のWeb Basketシステムを実際に単一操作注文システムとなるように修正することができ、そうすることはWeb Basketの「自明な」修正であるという供述から構成される(Tr. at 229;証拠物A-56、Lockwood供述P51)。しかしLockwood博士は(Mulligan氏と同様に)、そうしようと考えたことはなかったと証言した(Tr. at 277;19-23(Lockwood);Tr. at 199:2-15(Mulligan))。Mulligan氏はさらに、発明がなされた時点でなぜ、その分野で技能をもつ者がこの修正を考えなかったか、信頼できる証言を提示した(Tr. at 190:21-191:2;199:2-15)。

22. いずれにしろ、第 '411号特許の「単一操作」機能を含めることが現時点でWeb Basketシステム[*37]の「自明」な修正であるか否かは、法律上は意味がない。自明性の判断のための時期が「発明がなされた時点」であることは、法律上明確である。35 U.S.C.§ 103 (a)。In re Dembiczak、175 F.3d 994、998-99(連邦巡回、1999)も参照。

23. 「客観的情況証拠は、「しばしば、記録における、非自明性の最も証明力および説得力のある証拠である」」。Gambro Lundia AB v. Baxter Healthcare Corp.、110 F.3d 1573、1579(連邦巡回、1997)Stratoflex, Inc. v. Aeroquip, Corp.、713 F.2d 1530、1538(連邦巡回、1983)を引用);Arkie Lures Inc. v. Gene Larew Tackle, Inc.、119 F.3d 953、957(連邦巡回、1997)(「実際、二次的考慮における証拠はしばしば、記録において最も証明力および説得力がある。しばしば、先行技術に鑑みて自明に見えた発明がそうでないことを立証する」)も参照。

24. 「商業上の成功、長く感じられていたが未解決の要求、他の人の失敗などの二次的考慮」は、自明性の証拠として適切である。Graham v. John Deere Co.、383 U.S.1、17-18、86 S. Ct. 684、15 L. Ed. 2d 545(1966)[*38]。Arkie Lures Inc.、119 F.3d at 957(商業上の成功、ライセンス活動およびコピー行為の考慮は、「非自明性の問題に非常に証明力がある」かもしれない)も参照。

25. Barnesandnoble.comやその他の会社による発明のコピーは、非自明性のさらなる証拠である。「それは先行技術に称賛という贈り物を与える。そして他の人がしたように、その発明に、その模倣という贈り物を与える。」Diamond Rubber Co. v. Consolidated Rubber Tire Co.、220 U.S. 428、441、31 S. Ct. 444、55 L. Ed. 527(1911)

26. 単一操作注文のAmazon.comによる導入の後の、他の電子商取引小売業者による同機能の採用は、電子商取引の顧客によるショッピング・カートの放棄という問題を解決する必要性と組み合わせると、非自明性のもう一つの証拠になる。Hayes Microcomputer Prod, Inc. v. Ven-tel, Inc.、982 F.2d 1527、1540(連邦巡回、1992)(「発明の商業上の成功、特許を受けた発明が対処した問題を他の人が解決できなかったこと、そしてその発明が業界の標準となったことは、クレームされた発明の非自明性の、説得力のある客観的な証拠である[*39]」)。

27. 自明性の問題に関連した以上の諸要素および証拠の検討に鑑みて、Barnesandnoble.comが第 '411号特許のクレームが自明であるという明確で納得できる証拠を示すことに成功する可能性は少ないと、本法廷は認定する。発明の単純さへのBarnesandnoble.comの依拠は、意味がない。「解決策の観点から問題を定めるのは、自明性に関係する先行技術の選択において、不適切な後智恵をもたらす」。Monarch Knitting Machinery Corp. v. Sulzer Morat GMBH、139 F.3d 877、881(連邦巡回、1998)

実施不能性

28. 予備的差止命令を求める原告の申立てに対する最初の異議において、被告は第 '411号特許は発明者の一人Shel Kaphanによる不公正とされる行為のため、実施不可能であると主張した。特に被告は、Kaphan氏が著者によって貢献者として感謝されている、「州管理メカニズム」という表題のインターネット・エンジニアリング・タスク・フォース草案(「IETF草案」)を彼がPTOに引用しなかったのは、不公正な行為を構成したと提訴した。被告はKaphan氏の証言を録取し、その録取書の抜粋を本法廷に提出した。[*40]その抜粋のいずれの部分も、IETF草案に関する彼の知識、あるいは特許庁を欺く意図を説明していない。被告はその不公正な行為という主張を、少なくとも予備的差止命令の申立てに対する異議の目的では放棄したと、本法廷は認定する。実際、被告は、最終弁論においても、事実認定および法律問題に関する結論の提案においても、実施不能性に基づく主張を提示しなかった。

29. いずれにしろ、実施不能性に関する被告の主張は実質的な実体に欠けていると本法廷は認定する。IETF草案は、IETF草案を参照している「Dobbs博士のジャーナル」という表題の出版物内のものを含む引用された参考資料と比較して、第 '411号特許との関係は少ないという、IETFのメンバーであるMulligan氏の証言は、異議を申立てられておらず決定的である(Tr. at 174:13-25(Mulligan))。「特許権者は、単なる繰り返しであるか、審査官にすでに提示された他の参考資料よりも重要でないならば、その他の点では重要な参考資料であってもPTOに引用する必要はない」。Baxter Int'l, Inc. v. McGaw, Inc.、149 F.3d 1321、1328(連邦巡回区、1998)

侵害の分析

30. 被告はまた、「Express Lane」機能が第 '411号特許のクレームを侵害しているとは、原告は[*41]立証していないと主張した。「特許侵害の分析は二段階からなる。つまり、(1) クレームが何を対象としているか、つまりその範囲を決定するためのクレーム解釈、そしてその後の、(2) 適切に解釈されたクレームが提訴された構造を含むかである」。Cole v. Kimberly-Clark Corp. 102 F.3d 524、528(連邦巡回、1997)。前者は法律問題であり、後者は事実問題である。Voice Techs, Group v. VMC Sys, Inc.、164 F.3d 605、612(連邦巡回、1999)参照。便宜のため本法廷は、侵害分析全体を、法律と事実に関する混合問題ではあるが「法律問題に関する結論」の項に含める。

クレームの解釈

31. 両当事者は、「クライアント・システム」、「サーバー・システム」および「注文の方法」を含む、特許クレーム中の大部分の用語の意味を争っていない(Tr. at 434:1-435:13(King)参照)。しかし両当事者は、「ショッピング・カート・モデル」、「実行(fulfillment)」、「単一操作」および「単一操作注文要素」という用語の意味については合意していない。

32. クレームは、それが含まれる明細書に鑑みて読まれなければならない。[*42]Markman v. Westview Instruments, Inc.、52 F.3d 967、979(連邦巡回、1995)。明細書で定義された用語は、クレームでも同じ意味を与えられなければならない。McGill, Inc. v. John Zink Co.、736 F.2d 666、674(連邦巡回、1984)、裁量上訴棄却、469 U.S. 1037、105 S. Ct. 514、83 L. Ed. 2d 404(1984)、他の根拠におり破棄、Markman、52 F.3d at 967Standard Oil Co. v. American Cyanamid Co.、774 F.2d 448、452(連邦巡回、1985)(明細書はクレーム解釈の主たる根拠である)も参照。

33. 「ショッピング・カート・モデル」という用語は、第 '411号特許の第2列17行目から始まる「発明の背景」の項に記されている:「さまざまな商品の選択は、一般に、「ショッピンング・カート」モデルに基づく。購入者が電子カタログから商品を選択すると、比喩的意味でサーバー・コンピューター・システムはその商品をショッピング・カートに加える。購入者が商品の選択を終えると、次に、購入者が請求および発送情報を提供しショッピング・カート内のすべての商品が「チェックアウト」(つまり注文)される」。第2列34行目から43行目までに説明されているように、場合によっては請求および発送情報[*43]は商人が予め設定しておき、チェックアウト・プロセスを終わらせるために確認だけすればよい。

34. 第 '411号特許の背景の項におけるショッピング・カート・モデルの定義は、Amazon.comの電子商取引の専門家、Johnson博士とMulligan氏が提示した定義と合致する(証拠物10、Johnsonat供述at P 14;証拠物12、Mulligan供述at P 7;Tr. at 167:19-168:9(Mulligan)参照)。

35. Lockwood博士は、オンライン購入のすべての方法を含みうるように、ショッピング・カート・モデルをより幅広く定義した(Tr. at 279:5-282:4)。全般的に本法廷は、「ショッピング・カート・モデル」という用語のLockwood博士による説明は、混乱しており整合的でないと認定する。Barnesandnoble.comの最高情報責任者King氏は、同様に幅広いショッピング・カート・モデルの定義を提示した(Tr. at 428:1-21)。同社の専門家であるLockwood博士によれば、ショッピング・カート・モデルの被告による定義の下では、クレーム1と11は、内部矛盾しているように見える(Tr. at 284:22-285:22参照)。同様にKing氏は、ショッピング・カート・モデルのBarnesandnoble.comによる定義では、クレーム1と11は、第 '411号特許に説明されている単一操作購入法を含まないと証言した。[*44](Tr. at 428:1-21)。

36. 有効な実施例を排除するクレーム解釈は、「まず誤り」である。Vitronics Corp. v. Conceptronic, Inc.、90 F.3d 1576、1583(連邦巡回、1996)。「クレームで複数の解釈が可能な場合、合理的に可能ならば、その有効性を保つように解釈されるべきである」。Modine Mfg. Co. v. U.S. Int'l Trade Comm'n、75 F.3d 1545、1557(連邦巡回、1996)。したがって本法廷は、被告が提示する「ショッピング・カート・モデル」の定義を棄却する。

37. 本法廷は、特許明細書と合致し、クレームの有効性を維持し、特許明細書で説明された有効な実施例にクレームが読み取れるような定義を採用する。したがってクレームの解釈においては本法廷は、「ショッピング・カート・モデル」という用語は、使用者が商人のサイトを走査しながら購入商品を選択し貯め、次に、購入を完了するために一回または複数回のチェックアウトまたは確認段階に進まなければならないという、オンライン注文の方法を意味するとする(証拠物12、Mulligan補足供述PP 5-6)。

38. 意見が一致しない第二の点は、[*45]クレーム6および9の「実行」および「注文実行要素」という用語の意味、特に、「実行」がコンピューター・プロセスと物理的プロセスのどちらに言及しているのか、である。特許明細書はこの用語を明示的には定義していないが、注文の「実行」は、Amazon.comの注文統合アルゴリズムの文脈の中で、第8列および図7で詳しく議論されている。その議論、および明細書全体はコンピューター・プロセスのみを説明しており、注文は「すべての商品がその時点で在庫にあり発送可能なときに」実行されると定められている。さらに、Amazon.comの専門家Mulligan氏は、クレーム9で要求される「サーバー・システム」の「注文実行要素」は、「使用者情報のデータベースおよび在庫データベースによって提供される情報を受け取り、それを組み合わせて発送注文にしそして、注文の発送準備ができたと通知するソフトウェア」であると証言した(Tr. at 165:7-12)。

39. Mulligan氏による、コンピューター・プログラムとしての「注文実行要素」の上記の定義は、業界紙との最近のインタビューでのBarnesandnoble.comの最高情報責任者King氏による、Barnesandnoble.comの[*46]「実行アプリケーション」に関する裁判所外での表明と合致している(証拠物8参照)。反対尋問においてKing氏は、「実行アプリケーション」は、実行プロセスに関係するコンピューター・プログラムに言及するために業界で一般的に使われている用語であると証言した(Tr. at 432:25-433:8)。したがって本法廷は、クレーム9で使われている「注文実行要素」は、Mulligan氏およびKing氏が説明した注文実行アプリケーション・ソフトウェアを指すと認定する。

40. 同様に本法廷は、クレーム6で「サーバー・システムが生成された注文を実行できるように」という表現で使われている「実行する」という用語は、サーバー・システムの注文実行要素(またはサーバー・システムで実行されている注文実行アプリケーション)によって実施されるプロセスを指し、有形物を取り扱いあるいは包装する物理的段階を含まないと認定する。

41. 意見が一致しない第三の点は、クレーム1、6、9および11で使われている「単一操作」および「単一操作注文要素」という用語に関係する。

42. 「単一操作」という用語は特許明細書では定義されていない。しかし特許明細書は、「いったん商品の説明が表示されたら、購入者はその商品を購入するのにすべきことは[*47]単一の操作だけである」と記している(証拠物A-1第3列、II. 64-66)。明細書はまた、「単一操作には購入者の複数の物理的動き(たとえばマウス・ポインターがボタンの上にくるようにマウスを動かす)が先立つことがある」とも記している(証拠物A-1第10列、II. 2-4)。さらに明細書は、「一般に購入者は、単一の操作で商品は注文され、注文するのには単一の操作のみが必要であることだけを認識すればよい」と指摘する(証拠物A-1第4列、II. 14-17)。結局、第 '411号特許で使用されている「単一操作」という用語は、(1) 商品の説明、および (2) 使用者がその商品の注文を完了させるために取るべき単一操作の説明が使用者に表示された時点で、使用者が商品を購入するために取るべき単一の操作(マウス・ボタンのクリックなど)に言及しているように思える。

43. 両当事者は、第 '411号特許のクレームの単一操作要件が満足されるか否か判断する際に、どのマウス・クリックが勘定に入るかについて争っている。本法廷は、商品を特定する情報、および使用者がその商品の注文を完了するために取るべき単一操作の説明が、[*48]使用者に表示された後でのクリックが「勘定」されると認定する。

'411号特許のクレームと被告のExpress Lane機能の比較

44. Amazon.comは冒頭の文書において、クレーム1、2、3、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、21、22、23、24の各要素がBarnesandnoble.comのExpress Lane注文システムのどこに存在しているのか詳細に説明する、その専門家Mulligan氏による供述を提出した(証拠物9、Mulligan供述)。Mulligan氏は本法廷における証言で、独立クレーム9と11に関して彼の分析を説明した(Tr. at 161:2-169:4)。

45. 審理前の説明会において被告は、クレーム6と9における実行の意味、およびクレーム1と11の「ショッピング・カート・モデル」の意味に関するMulligan氏の分析にのみ、異議をとなえた(証拠物A-16、King供述 PP 8-12)。King氏は、Barnesandnoble.comのExpress Laneは、クレーム11のすべての要素を、商品はショッピング・カート・モデルと独立に注文されることを要求している最後のものを除き含んでいると認めた(Tr. at 434:1-435:13)。

46. 本法廷は、Mulligan氏の証言と合致した、「ショッピング・カート・モデル」という用語の特許明細書での説明を採用したので、本法廷はBarnesandnoble.comが[*49]クレーム1、2、3、5、11、12、14、15、16、17、21、22、23、24を侵害していると認定する。

47. 本法廷はまた、クレーム6と9の「実行する」および「注文実行要素」という用語は、注文が完了した後での有形物としての商品の物理的な発見、包装および発送という小売業者の行為を含まないとも認定した。したがって本法廷は、Barnesandnoble.comは特許第 '411号のクレーム6-10も侵害していると認定する。

48. この申立ての審理において被告は、Barnesandnoble.comのExpress Laneの使用者は、商品に関する情報が初めて表示されてから複数の操作をする必要があるので、Express Laneオプションはクレーム1、3、5、6、7、8、9、10が要求する「単一操作注文要素」ではないと主張した。本法廷は、この主張は無効であると認定する。ウェブ・サイト、証券取引委員会に提出された株主への通知など法廷外では、Barnesandnoble.comは常に、そのExpress Laneオプションを「ワンクリック注文」として説明してきた(Tr. at 464:3-8;Tr. at 464:24-467:22(Bulkeley);証拠物36 at 6、44、47)。さらに本法廷は、サイトの走査は注文ではなく[*50]、ホームページを通った後で商品の注文の機会を提示されるまでは注文プロセスは始まらないというMulligan氏の証言に同意する(Tr. at 185:3-8;Tr. at 191:7-15)。このプロセスは、Barnesandnoble.comサイトの製品ページまたは詳細ページで初めて生じる(同上、および証拠物9、Mulligan供述、証拠物R)。Barnesandnoble.com自身のウェブ・ページに記されているように、そこからはExpress Laneオプションでの注文は一回のクリックだけですむ(同上)。

49. King氏は、1999年10月初めにBarnesandnoble.comの社外顧問から第 '411号特許のコピーを提供されたと証言した(Tr. at 417:9-19)。King氏がBarnesandnoble.comの社外顧問から特許を受け取ったのは初めてであった(Tr. at 417:20-22)。「本件のように、特許侵害者となるかもしれない人が他の人の特許権に実際に気付いた場合には、その人は、自分が特許侵害をしているか否かを判断するために相当の注意を払う積極的義務をもつ」。Underwater Devices, Inc. v. Morrison-Knudsen Co.、717 F.2d 1380、1389(連邦巡回、1983)

要約

50. 以上のことに基づき本法廷は、原告は審理において、実体的事項において勝訴する相当の可能性を立証したと認定する。

B. 回復不能の損害[*51]

51. 第 '411号特許が有効であり被告のExpress Lane機能は同特許を侵害していると原告は強く立証したと、本法廷は認定する。したがって原告は、回復不能の損害の推定を受ける資格がある。Smith Int'l, Inc. v. Hughes Tool Co.、718 F.2d 1573、1581(連邦巡回、1983)(「有効性および侵害の継続が明確に立証された場合直近の回復不能の損害が推定される」)。被告は有効性、非侵害および実施可能性に関する多くの抗弁を提起したが、これらの抗弁は実質的な実体に欠けていることを原告は立証したと、本法廷は認定する。

52. 原告による有効性と特許侵害の強い立証に鑑みて、被告は回復不能な損害の推定に、(1) 特許侵害とされる活動は終わったもしくは間もなく終わる、(2) 申立て人はある種のライセンス許諾に関わていた、または、(3) 申立て人は提訴を不当に遅らした、といった、本件には適用されない限定された状況でのみ反駁できる。Polymer Techs., Inc. v. Bridwell、103 F.3d 970、974(連邦巡回、1996)。これらの事実、あるいは被告による「同様の証拠の提出」がない場合、「有効な特許の侵害は内在的に、回復不能な損害を引き起こす」と[*52]連邦巡回裁判所は指摘した。同上 at 975

53. 被告は、Amazon.comはその訴訟を、特許交付時に直ちに提起すべきであったと主張し、不当な遅れという範疇を惹起しようとする。しかしAmazon.comは本訴訟を、特許交付の22日後に提起した。本法廷は、特許交付後1カ月以内の予備的差止命令を求める申立ての提出が不当な遅れを構成すると指摘した先例を知らない。不当な遅れを、予備的差止命令を求める申立てに関して考慮すべき要素として引用した判例は、数日ではなく、数カ月あるいは数年の遅れを対象としている。Mentor Graphics Corp. v. Quichturn Design Systems, Inc.、999 F. Supp. 1388(オレンゴン地区、1997)(特許侵害の提訴と予備的差止命令を求める申立てとの間の1年以上の遅れは、特許権者が予備的差止命令を得ることの阻却事由にはならない)、維持150 F.3d 1374(連邦巡回、1998);Rubbermaid Commercial Prods., Inc. v. Contico Int'l., Inc.、836 F. Supp. 1247(バージニア西部地区、1993)(8カ月は阻却事由にはならない);Motorola, Inc. v. Alexander Mfg. Co.、786 F. Supp. 808(アイオワ北部地区、1991)[*53](3カ月は阻却事由にはならない);SMI Indus. Canada Ltd. v. Caelter Indus., Inc.、586 F. Supp. 808(ニューヨーク北部地区、1984)(6カ月は阻却事由にならない)。

54. 被告はまた、Amazon.comが第 '411号特許の交付料を特許の許可通知を受けてから6週間支払わなかったことによって、不当な遅れに関わったと示唆する。被告は、この種類の遅れが不当であるあるいは問題となるとする先例を引用していない。さらに、元PTO長官Harry Manbeckが証言したように、許可通知から交付料の支払いまで6週間かかるのは特別なことではなく、おそらく平均よりも短いくらいである(証拠物13、Manbeck供述P 17)。

55. 回復不能な損害の推定の他に、回復不能な損害のその他の証拠が記録にある。回復不能な損害はまた、損害賠償額が不十分な救済であることを立証することによっても示される。連邦巡回区裁判所は、回復不能な損害が存在するか否かの判断にさまざまな要素を使う。Mills、「特許侵害を阻止するための予備的差止命令における、回復不能な損害についての発展する基準」、81 J. Pat. & Trademark Off. Soc'y 51、65-66(1999年1月)(要素のリストアップ)参照;Jacobson v. Cox Paving Co.、1991 U.S. Dist. LEXIS 17787、19 U.S.P.Q.2d 1641、1653(アリゾナ地区、1991)[*54](要素のリストアップ、および裁判所は2、3を認定しただけで差止命令を出してきたと指摘)、維持 949 F.2d 404(連邦巡回区、1991)も参照。

56. 以下のすべての要素は、回復不能な損害の認定に有利に働く。両当事者は同一の顧客グループに影響を与えようとしている直接の競争相手である。Amazon.comは市場開発にかなりの時間と努力を費やした。被告による特許侵害の継続はAmazon.comの市場での地位を脅かす可能性がある。被告による特許侵害がチェックされなければ、他の人に侵害を勧めることになる。Mills、同上参照;Atlas Powder Co.、773 F.2d at 1233(「金銭的救済が特許法で与えられる唯一の救済だとしたら侵害者は訴訟が続く限り、強制被許諾者となる」)も参照。これらのタイプの間接的効果が、法律が差止命令による救済を含んでいる理由である。Hybritech、849 F.2d at 1457(「特許法は、金銭では十分に補償できない市場への効果をもちうる将来の侵害に対して当事者の利益を維持するために、差止命令による救済を定めている」)参照。

57. Amazon.comは、その創始者であり会長でもあるJeff Bezos[*55]と電子商取引の専門家であるEric Johnson博士の、単一操作注文、および顧客のオンラインでのショッピング体験における「摩擦」を減らすことの意義を説明する、証言を提出した。彼らは、購入のために顧客が取らなければならない段階数を減らすことが、顧客がその購入を完了する可能性を増すという意見および経験的証拠を提示した(証拠物10、Johnson供述P 10;商好物11、Bezos供述P 8参照)。オンライン顧客が購入時に取らなければならない段階を減らすので、単一操作注文法には価値がある。ショッピング・カートが放棄されるという問題(「業界標準」で65%がチェックアウトされない)に関してBarnesandnoble.comから提示された証拠、そして単一操作のExpress Lane機能の人気は、第 '411号特許の商業的価値を強固にする(証拠物28;Tr. at 418:1-11;420:9-421:18(King);473:14-474:5(Bulkeley))。

58. Amazon.comの証人はまた、なぜそしていかに今からのホリデー・シーズンがオンライン小売業界にとって重要であるかを説明した(証拠物10、Johnson供述PP 16-17、証拠物11、Bezos供述P 20)。彼らは、特に電子商取引小売業にとって重要なこれからの2カ月間、被告に特許侵害の継続が許されたら、[*56]貴重な顧客の忠実性と好意が被告に奪われるとの証拠を提出した。連邦巡回区裁判所が説明したように、「競争相手は市場を変える。特許侵害が始まってから数年後では、特許権者の独占的立場は、損害賠償金の裁定と恒久的差止命令では回復不能だろう」。Polymer Tech、103 F.3d at 975-76。再度、Barnesandnoble.com側からの証言が、1999年のホリデー・シーズンがオンライン小売業者にとって商業的に極めて重要であるとのAmazon.comの主張を強固にする(Tr. at 474:9-18(Bulkeley)参照)。

59. 被告は、損害は金銭的損害賠償によって補償されるのでAmazon.comは差止命令を求める資格がないと主張する。彼らが引用する判例はみな、特許権者は有効性と特許侵害の明確な立証をしていないので回復不能な損害の推定を受ける資格がないという、本件には該当しない認定に基づいている。Nutrition 21 v. Thorne Research, Inc.、930 F.2d 867、871(連邦巡回、1991);Eli Lilly & Co. v. American Cyanamid Co.、896 F. Supp. 851、860(インディアナ南部地区、1995)。回復不能な損害の推定[*57]が適用される場合、原告の損害は十分に補償されうるということだけでは、被告が回復不能な損害の推定に反駁したという認定を正当化できない。Polymer Tech.、103 F.3d at 975-76

60. 本件ではAmazon.comは、本法廷に阻止するように要請する損害--重要な時期に自身を差別化し顧客の忠実性を確立する機会を失う--は、簡単な公式には還元できないことの、豊富な証拠を提出した。Hybritech、849 F.2d at 1456-57(「特許付与ということの性質が、常に金銭的損害賠償が特許権者を傷付けないために十分であるという判断よりも優先することは確立している」)参照。今後数カ月間に数百万人の顧客がインターネット小売業者と確立する関係と忠実性の価値を判断する簡単な方法はない。

61. いずれの当事者も、損害賠償額の決定のために容易に使えるような公式を提示できない。

62. Amazon.comの特許はAmazon.comに、その単一操作注文発明を提供し、その機能がサイトに加える価値の利益を得る独占的権利を与える。被告による、現在の構成のようなExpress Lane機能の使用は、Amazon.comからその特許の利益を奪う[*58]。Barnesandnoble.comは、特許使用の価値が金額で計算できると立証しなかった。

63. Amazon.comは被告の特許侵害によって、推定上そして実際に回復不能な損害を受けている。本法廷は、予備的差止命令のみがその損害を阻止できると結論付ける。

C. 困難のバランス

64. 両当事者間の困難のバランスも、予備的差止命令を求めるAmazon.comの申立ての許可に有利に働く。本法廷は、差止命令による救済が認められなかった場合の特許権者が受ける損害と、差止命令が認められた場合の侵害者とされる人が受ける損害を比較しなければならない。Hybritech Inc.、849 F.2d at 1457。ここでも、困難のバランスはAmazon.com側に傾く。Barnesandnoble.comが受ける損害はすべて、Amazon.comが特許を受けた購入方法の不正目的使用から直接生じるものである。被告が「[原告の]特許を侵害しているかもしれないとの計算されたリスクを選択した」場合には、困難のバランスは被告の有利にはならない。Smith Int'l, Inc. v. Hughes Tool Co.、718 F.2d 1573、1581(連邦巡回、1983)

65. さらに証拠によれば、Barnesandnoble.com[*59]は第 '411号特許の侵害を避けられるように、「Express Lane」機能を比較的容易に修正できると示唆される。たとえば特許侵害は、単に使用者に、Express Laneを使った注文を確認するための追加操作を要求することによって回避される(Tr. at 530:8-13)。

66. Amazon.comへの損害は、より規模が大きい。この差止命令がなければ、Amazon.comはワンクリック(R)オプションの主たる価値、つまりAmazon.comのサイトを主な競争相手のサイトから差別化する役割を失うだろう(証拠物10、Johnson供述、PP 8-12)。

67. Express Lane機能を修正するための措置を取る必要がある他は、第 '411号特許の侵害を禁じられた場合の被告が受ける損害についての証言または証拠は、使用者の体験の変化のためにその顧客サービス用電話の通話量が増すことだけである(Tr. at458:15-19)。顧客サービス用電話、あるいはそのウェブ・サイト運営の一時的な中断についてのBarnesandnobleの懸念は、特許侵害している被告が有利なようにバランスを変えることはない。PPG Indus., Inc. v. Guardian Indus. Corp., 75 F.3d 1558、1567(連邦巡回、1996)(侵害者が、その製品の生産または販売を「一時的に中断」[*60]しなければならないことは、特許権者が予備的差止命令の拒絶から受ける大きな損害に比べれば負担が少ない)参照。

68. Johnson博士が指摘したように、オンライン小売業者は独自の消費者体験を生み出すための大幅な自由をもっている(証拠物10、Johnson供述P 15)。すでに指摘したように、Barnesandnoble.comはExpress Laneを修正し、複数の操作を必要とするものを含む非侵害の注文システムを採用することができる。さらに、「Express Lane」に加えて、Barnesandnoble.comは、多段階「ショッピング・カート」注文システムを提供しており、そのサイトの運営のためには単一操作注文を必要としない。他の多くのオンライン小売業者はその事業を多段階注文を使って行ったており、Barnesandnoble.comも同様のことができる(証拠物11、Bezos供述at P 21参照)。

69. King氏は、Express Lane機能をBarnesandnoble.comのサイトから取り除くことは可能であり、すでにそのことを討議するために開発者と会ったと証言した(Tr. at 435:14-19)。

70. 最後に、困難のバランスがAmazon.comの有利に傾くかという問題は、必然的に、実体的事項における勝訴の可能性の立証に関係する。「裁判所は、少なくともある程度は審理で何が起こりうるかを推定して困難のバランスを考えなければならないので[*61]、申立人による勝訴の可能性の立証を検討しなければならない」。Illinois Tool Works, Inc. v. Grip-Pak Inc.、906 F.2d 679、683(連邦巡回、1990)。Amazon.comによる勝訴の可能性の立証は、困難のバランスを、さらにその有利となるように傾ける。

D. 公益

71. 公衆は、特に現在まだインターネットや電子商取引が急速に発展していることを考えると、それらの革新によって利益を受ける。独自の効果的で楽しい消費者体験を提供する競争は、オンライン商取引における革新および多様性に結付く(証拠物11、Bezos供述P 22)。一方、競争相手が互いの特許を受けた発明を無料で利用することが認められたら、革新の努力に水をさす。革新における知的所有権の保護は、より大きな競争および革新を促進する(証拠物11、Bezos供述P 22;証拠物10、Johnson供述P 15)。

72. Amazon.comに予備的差止命令を認めることは公益に寄与する。公衆は知的財産権の行使に強い関心をもっている。特許制度の目的は、他の人による作品の利用を阻止することによって発明者に報い[*62]さらなる革新を奨励することである。E.I. du Pont de Nemours & Co. v. Polaroid Graphics Imaging, Inc.、706 F. Supp. 1135、1146(デラウェア地区、1989)、維持887 F.2d 1095(連邦巡回、1989)参照。Amazon.comに革新の継続を奨励すること、そして競争相手に自身の新アイデアを考えるように強いることは、間違いなく公益に寄与する。

73. 差止命令は公益に役立たないという被告の主張は、第 '411号特許が無効であり侵害されていないことを前提としている。Amazon.comは、被告の抗弁は実質的な実体に欠けていることを立証した。したがってAmazon.comの発明者は、「自分たちの労力の成果を受け取り」、「他の人が自分の発明を利用することを妨げる」権利をもつ。E.I. du Pont de Nemours & Co.、706 F. Supp. at 1146。電子商取引の発明に対する創造的な環境を考えると利益を得る機会が短期間になりがちなこのような急速に発展している業界では、このことは特に当てはまる。

E. その他の主張

74. 被告はまた、[*63]予備的差止命令に反対する他のさまざまな主張を提示した。たとえば、(1) Amazon.comは第 '411号特許が出願中であることを、その交付前に侵害者となりうる人に警告すべきであった、(2) Amazon.comは不公正に、1999年のホリデー・シーズン近くになるように特許交付日を設定した、そして、(3) 予備的差止命令を求めるAmazon.comの申立てに関する審理の準備に2、3週間しかもたないとしたら、被告の適正プロセスに対する権利は無効となる。被告はこれらの主張を裏付ける適切な判例を本法廷に提示しなかった。本法廷は、これらの主張には説得力がないと認定する。

IV. 結論

したがって本法廷はここに、被告Barnesandnobel.com LLCおよびBarnesandnobel.com Inc.、その役員、代理人、雇人、従業員および弁護士、ならびに、彼らまたは被告に積極的に協力または参加している人は、合衆国内での、現在の構成における被告のExpress Lane機能、または第 '411号特許の方法もしくはシステムを採用したその他の単一操作注文システムの作成もしくは使用の継続、および、第三者による合衆国内での、現在の構成における被告のExpress Lane機能、または第 '411号特許の方法もしくはシステムを採用したその他の単一操作注文システムの作成もしくは使用の継続の誘導を含め[*64]、合衆国特許第5,960,411号の侵害継続を差止められると命令する。被告はExpress Lane機能が第 '411号特許の侵害を避けられるように、上記の事実認定および法律問題に関する結論に合致した態様で修正されれば同機能を提供し続けることができる。

上記予備的差止命令は、1999年12月4日土曜日太平洋標準時午前12時01分に、Amazon.comによる総額一千万ドルの保証金の提出とともに発効し、本訴訟の係争中、有効であり続ける。

書記官は本命令のコピーを、記録に記載されたすべての弁護士に提供するように指示される。

日付:1999年12月1日

Marsha J. Pechman

合衆国地方判事