原告COOLSAVINGS COM. INC. v. 被告IQ COMMERCE CORPORATION
No. 98 C 7750

イリノイ州北部地域の米国地方裁判所東部担当

1999 U.S.Dist. LEXIS 8852; 51 U.S.P. Q 2D(BNA)1136

1999年6月10日判決

処分: [*1] 人的管轄権の欠落を根拠とするIQの却下申し立てと、カリフォルニア北部地域への裁判地の移転を求める申し立てを否認する。

主な用語:人的管轄権、技術、isave、サイト、Web、クーポン、裁判地、クーポン発行、居住者、商店主、消費者、特許、電子メール、侵害、訴訟、証言録取書、故意に、インタラクティブ、便宜、特許侵害、侵害、軽微、故意の、開示、ボタン、電話、購入、却下申し立て、裁判地の選択、司法的判断

弁護士:COOLSAVINGS COM. INC、原告:イリノイ州NIRO, SCAVONE, HALLER & NIROのThomas G. Scavone、Christopher J. Lee、David J. Skeikh、Sally Wiggins

IQ COMMERCE CORPORATION、被告:イリノイ州シカゴBRINKS HOFER GILSON & LIONEのLaura Beth Miller、Katherine Tabor

IQ COMMERCE CORPORATION、被告:カリフォルニア州サンフランシスコKEKER & VAN NEST L.L.P.のHenry Bunsow、Karin Kramer、David Silbert

判事:MARVIN E. ASPEN主席裁判官

作成者:MARVIN E. ASPEN

意見:簡易判決および命令

MARVIN E. ASPEN主席裁判官

原告のCoolSavings(シカゴに本社と主な営業所を有するミシガン州の企業)は、米国特許第5,761,648(「'648特許」)号の侵害に関して、被告のIQ Commerce Corporation(「IQ」)を訴えた。'648特許は、CoolSavingsにインターネットなどのインタラクティブなオンライン・ネットワークを通じて電子証券(広告とクーポン)を発行することを可能とさせるためのデータ処理システムをクレームしている。CoolSavingsのWebサイトで登録した顧客には、小売店やレストランなどの広告主から [*2] 特定の製品に関するオファーのリストが提供される。顧客は、このオファーをダウンロードし、パソコンのプリンターによってクーポン形式で印刷することができる。Webサイトでの宣伝のためにCoolSavingsに料金を支払った商店主は、そのクーポンを選択した消費者に関する統計情報およびその他の情報を入手できる。この情報は、顧客がCoolSavingsのプログラムに登録するときに提出したものである。

IQは1995年にカリフォルニアで創立され、その主要かつ唯一の営業所をカリフォルニア州サラトガに有する。IQは、インターネットを通じて、さまざまな節約プログラムやプロモーションを商店主から消費者に提供するためのシステムを開発した。これには、クーポン、くじ、割り引き、ギフト券がある。本件で問題になっているのは、IQのクーポン発行プログラムの「iSave」である。この訴訟が提起されたときに、iSaveはまだ試験段階にあり、IQはこのシステムからいかなる収益も得ていなかった。しかし、IQは、最終的にiSaveによって発生した売上げの一部を、登録商店主から受け取ることを計画している。

iSaveに登録するには、消費者はIQのWebサイトに自分自身に関する基本的な情報(名前、電子メール・アドレス、年齢、性別)を提供しなければならない。iSaveの「会員」がボタン [*3] をクリックすると画面にクーポンが「表示」される。クーポンが表示され、その製品に関心を持った消費者は、クーポンを電子的に「クリップ」して、後に使用するために自分の「アカウント」に保存したり、「購入」ボタンをクリックして商店主のWebサイトに直接に移動することができる。消費者は、商店主のWebサイトで、クーポンによる割引料金で商品を購入することができる。CoolSavingsはこのシステムが'648特許を侵害していると考えている。このクーポン・クリッピング・サービスはiSaveの会員に無料で提供されている。

IQが人的管轄権の欠落を根拠として、この意見書の主な争点である却下申し立てを行った時点で、約299人がiSaveの会員としてサインアップし、そのうちの11人がイリノイ州の住民であった(n1)。この11人のうち一部はクーポンを「表示」させるだけで、一部はクーポンを電子的に「クリップ」し、一部は「購入」ボタンをクリックした。IQは「購入」を選択した消費者が実際に商店主のWebサイトで商品を購入したかどうかを確認していない。また、商店主はまだ登録していないため(このプログラムはまだ試験段階にある)、IQは実際に購入が行われていても通知を受け取らない。しかし、IQはシカゴに本社を持つ広告/マーケティング企業のFrankel & Companyを通じて、そのサービスを宣伝し、関心を持つ商店主 [*4] を見つけるために集中的な努力を行った。

n1   IQの最高経営責任者のCarl Meyerによる証言録取書は、その証言録取書の期日(却下申し立てが提出された2カ月後)までに367人がiSaveにサインアップし、そのうちの20人がイリノイ州の住民であったことを示している。またMeyerは、登録時に郵便番号を記入しなかった一部の会員も、イリノイ州の住民である可能性があることを認めた。Dep. Tr. of Carl Meyer, at 84-85, 95-96を参照。ただし、以下に簡単に説明するように、この技術を利用したイリノイ州の住民の正確な人数は、我々の分析にとって重要ではない。

人的管轄権の争点に関して開示手続きを受けた原告として(n2)、CoolSavingsは証拠の優越によって管轄権が存在することを証明しなければならない。Graphic Controls Corp. v. Utah Med. Prods., 149 F.3d 1382, 1383 n.1(Fed. Cir. 1998); Landoil Resouces Corp. v. Alexander & Alexander Servs., Inc., 918 F. 2d 1039, 1043(2nd Cir, 1990)を参照。イリノイ州の連邦地方裁判所として、我々はアメリカ合衆国憲法が許可する最大の範囲で、人的管轄権を行使する [*5] 。North Am. Phillips Corp. v. American Vending Sales, Inc., 35 F.3d 1576, 1578(Fed Cir. 1994); 735 ILCS 5/2-209(c)を参照。非居住者の被告を人的管轄権の対象とするには、法の適正手続きによって、「『訴訟の続行がフェアプレーと実質的正義の伝統的な概念』に反しないように(裁判地がある州)と最小限度の接触があったことが要求される」。International Shoe Co. v. Washington, 326 U.S. 310, 316, 90 L. Ed. 95, 66 S. Ct. 154(1945)(Milliken v. Meyer, 311 U.S. 457, 463, 85 L. Ed. 278, 61 S. Ct. 339(1940)を引用)。最高裁判所は、非居住者がその行為の結果として、その裁判地での訴訟の対象となることを予期できるように、要求される最小限度の接触は故意でなければならないことを明確にした。Burger King v. Rudzewicz, 471 U.S. 462, 472, 85 L. Ed. 2d 528 105 S. Ct. 2174(1985)を参照。

n2   原告の制限付き開示以降に提出された文書は、本裁判所が発行した開示制限命令の約定に従って、封印して提出されたことを確認する。ただし、我々の知る限り、この意見書のいかなる文言も「営業秘密、競争上重要な情報、その他の秘密情報」を開示していない。Protective Order of 4/9/99 at P3にて合意。我々は、封印された文書を公開することはなく、「封印して提出された文書によって支持される申し立てに関する意見書」を発行するにすぎない。S. Industries, Inc. v. Stone Age Equipment, Inc., 12 F. Supp. 2d 796, 799 n.2(N.D.Ill. 1998)。

[*6]

CoolSavingsは、当裁判所がIQに対する特定管轄権を持っていると主張している。この管轄権は、被告と裁判地との間の「継続的で組織的な」業務上の接触に基づく一般的な管轄権ではなく、「被告と裁判地との接触を原因とし、またはそれに関係する」管轄権である。Helicopteros Nacionales de Colombia. S.A. v. Hall, 466 U.S. 408, 414 n.8 416, 80 L. Ed. 2d 404, 104 S. Ct. 1868(1984)。我々が解決すべき争点は、IQがその活動を故意にイリノイ州の住民に向けていたかどうかと、CoolSavingsの主張がその活動を原因とし、またはその活動に関連しているかどうかである。Burger King, 471 U.S. at 472-73を参照。IQがイリノイ州で故意に最小限度の接触を持ったと判断したとしても、我々は人的管轄権の主張が合理的で公正であるかどうかを判断するために、その他の要素に照らしてその接触を検討しなければならない。同上 at 476を参照。これは特許の侵害に関する事件であり、特許審判では連邦巡回控訴裁判所が専属管轄権を持つため、人的管轄権の争点に関してもSeventh Circuit法ではなくFederal Circuit法に従う。3D Systems, Inc. v. Aarotech Labs., Inc., 160 F.3d 1373, 1377-78(Fed. [*7] Cir. 1998)

すべての州の住民が使用することを知り、かつ希望して米国全体に向けてインタラクティブなWebサイトをセットアップし、さらに紛争中の技術を使用している機能をプロモートするためにシカゴに本社を持つマーケティング企業を利用することによって、我々は、IQが故意にイリノイ州で最小限度の接触を持ったと判示する(n3)。IQがすべての州の住民によってそのプログラムをアクセス可能にすることを意図し、何人かのイリノイ州の住民が実際にiSaveの会員になったことは明らかである。サイトでのイリノイ州住民の活動は、サイト全体の活動の0.5%を占めるにすぎないため、イリノイ州との接触は考慮するに値しないとするIQの主張には説得力がない。我々は特定の人的管轄権を問題としているのであり、IQの裁判地に関連する活動(イリノイ州の居住者がその技術を利用できるようにしたこと)は、主張されている侵害の基礎を形成している。IQの接触が実質的で継続的であるかどうかは無関係である。すべての州の居住者を対象とするIQのクーポン発行プログラムが、イリノイ州の居住者によってアクセスされた事実だけで十分である。連邦巡回控訴裁判所と最高裁判所は共に、原告の主張に直接に関連し、単なる「希薄な関係」ではなく、裁判地との「実質的な接触」 [*8] を生じる場合は、「1回の行為でさえも、管轄権の根拠となりうる」との見解を示した。Red Wing Shoe Co., 148 F. 3d 1355, 1359(Burger King, 471 U.S. at 475を引用)。米国内のほとんどあらゆる地域でIQを人的管轄権の対象とすることは、不公正に思われるかもしれない。しかし、米国全体にそのプログラムを紹介しても、人的管轄権の対象となるのは地元の州だけで、侵害を訴えようとする国内の全地域の特許権者に、カリフォルニア州に出向くことを要求する方がはるかに不公正であると思われる。Digital Equip. Corp. v. Altavista Tech., Inc., 960 F. Supp. 456. 471(D. Mass. 1997)にて和解。

n3   「Web」での接触に関係する事件で、人的管轄権の争点を扱ったほかの裁判所は、このような事件を3つのカテゴリーに分類している。第1のカテゴリーは、被告がインターネットを通じて活動的に取引(物品の販売など)を行っていた場合には、人的管轄権が認められる。第2のカテゴリーは、被告がWebサイトで「受動的に」情報を掲載して、その情報をインターネット・ユーザーに提供するだけの場合で、人的管轄権は不適切と見なされる。第3のカテゴリーは、ユーザーがホスト・コンピューターと情報を交換できるインタラクティブなWebサイトに関係する「中間的な」事件である。Vitullo v. Velocity Powerboats, Inc., 1998 U.S. Dist. LEXIS 7120, No. 97 C 8795, 1998 WL 246152, at *5(N.D. Ill. Apr. 24, 1998)などを参照。本件はどのカテゴリーにもぴったりと適合しないように思われる。iSaveのWebサイトでは、情報の交換はできるが、取引活動は行っていないため、最も近いのは第3のカテゴリーであるようにも思われる。しかし、本件はインタラクティブ技術自体の使用が原告の特許を侵害している疑いがあるため、例外的なケースである。特定人的管轄権は、被告と裁判地との接触の性質および質によって決定される。このため、接触自体が違法行為である事件は、接触行為が違法行為と関係しているだけの事件よりも、管轄権を認めるための強力な根拠を持つ。我々は本件を上記のカテゴリーに無理に当てはめることは生産的でないと考える。

[*9]

しかし、特定人的管轄権を認定する根拠はこれだけではない。IQは直接に電話や電子メールで、シカゴに本社を持つ広告/マーケティング企業と定期的に打ち合わせを行い、本件で紛争中のiSave商品への関心を高めるために協力している。IQとFrankelは、IQの技術をFrankelのクライアントにプロモートし、販売するための戦略を練り、そのクライアントの一部はシカゴに本社を有していた。Frankelは、シカゴでプレゼンテーションを行い、IQはそのプレゼンテーションがIQの技術に関するものであることを認識していた。また、IQの役員はFrankelの代表者と会うためにシカゴに赴いている。これらは、最高裁判所が管轄権に関して被告の責とすることを警告している「他の当事者または第三者の一方的な活動」ではなく、故意の接触である。Burger King, 471 U.S. at 475 & n.17; およびRed Wing Shoe Co., 148 F.3d 1355, 1361(Fed Cir. 1998)も参照。

IQの主張に反して、そのFrankelとの接触は「任意」、「偶然」、「軽微」なものではない。Burger King, 471 U.S. at 475。当初、Frankelのクライアントの1社であるVISAが、IQの技術を使用したクーポン発行プログラムの実施に興味を持ち、IQをFrankelに紹介した。これは、VISAカードを使用してオンラインで商品を購入した消費者が割り引きを受けられるものであった [*10] 。このプロジェクトは、最終的に契約上の折り合いがつかずに実現しなかったが、IQは約6カ月から7カ月にわたってFrankelと緊密に協力し、運営上の詳細を詰め、プログラムを実現しようとした。さらに、シカゴでこの件に関して2、3回の会議に出席し、電話と電子メールの両方でFrankelの代表者と定期的に通信している。

その後、IQはVISAプロジェクトとは独立に、Frankelとの関係を築いた。IQはFrankelとのビジネスに熱心であり、Frankelがほかの企業クライアントにそのクーポン発行技術をプロモートすることを希望した。IQの役員とFrankelの代表者間には、電子メールが数回交わされた。これにはCoolSavingsのクーポン発行プログラムの成功に関する記事をIQに知らせるメールも含まれていた。Frankelは、シカゴに本社を持つクライアントの1社、Rolling Stone Network/JAMtvにIQの技術を紹介し、シカゴの会議でRolling Stoneにそのプレゼンテーションを行った。IQはこの会議に代表者を送っていないが、FrankelがIQの代わりにこのプロモーション活動を行っていることを認識していた [*11] 。また、Frankelは潜在的な提携先として、シカゴの£Homeという企業にIQの技術のプレゼンテーションも行っている。

IQとFrankelとの関係を「強固」にして、FrankelがクライアントからIQの技術への関心をもっと引き出せるように、IQは後にその役員の1人をシカゴに派遣している。IQの最高経営責任者は、その証言録取書で次のように供述している。このシカゴへの出張中にIQの役員はFrankel & Coの創立者Bud Frankelと会い、「両社による事業と、両社が協力できる事柄についてBudに説明し、インターネットビジネスの全体についてBudに興味を持たせようとした」。後にIQの業務開発担当副社長は、IQの技術を使用した共同プロジェクトの可能性について、FrankelおよびTargetと会議を開くためにシカゴに出張した。また、IQは、これもFrankelのクライアントの1社であるEncyclopedia Britannicaと、Frankelの支援によって協力することも試みている。このプロジェクトに関するIQとFrankel間の通信は、電話と電子メールによって行われた。Frankelの役員の1人は、後にeWallet.comというデジタルマネー企業とのクーポン発行/割引きプロジェクトを提案する電子メール・メッセージを送信した。 [*12] FrankelがMSNetworkのプロモーション案をMicrosoftに示したときに、Frankelはその取引パッケージにIQのクーポン発行、割り引き、くじの機能を加えた。IQは、その部分のプレゼンテーションの開発について、Frankelと打ち合わせを行った。これらのプロジェクトはいずれも実施には至らず、IQとFrankelは現在共同の事業を行っていない。しかし、IQの最高経営責任者はその証言録取書で、共同事業の過程で親しくなったFrankelの役員の1人と、証言録取書の1カ月前に最後に電話で話したことを証言した。

我々は、イリノイ州でのIQのWebサイト活動とFrankelとの接触が、この特許侵害事件に関して、イリノイ州で特定人的管轄権をIQに与えるために十分であると結論付ける。IQの接触は故意であり、その接触はこの訴訟の主題である技術の使用に関連するものであった。ここで分析しているの侵害の問題ではなく、人的管轄権であるため、IQとFrankelが計画したプロジェクトのいずれも実現しなかったこととは無関係である。

IQはイリノイ州と故意に最小限度の接触を持ったと判断されるが、人的管轄権の主張が「『フェアプレーと実質的正義』に適合しているかどうかを判断するために、その他の要因に照らして」この接触 [*13] を検討しなければならない。Burger King, 471 U.S. at 476(International Shoe, 326 U.S. at 320を引用)。「管轄権を認めることが憲法上不合理なケースである」ことを証明する責任はIQが負う。Akro, 45 F.3d 1541, 1546。連邦巡回控訴裁判所は、「一般にこのようなケースは、裁判地で紛争に司法的判断を下す原告の利益と州の利益が非常に軽微であるために、被告を裁判地の管轄に従わせる負担のほうが明らかに大きくなる稀な状況に制限される」と指摘している。Bevery Hills Fan, 21 F.3d 1558, 1568(Burger King, 471 U.S. at 477を引用)。

本件は上記のケースにはあたらない。イリノイ州は州内で発生した侵害に司法的判断を下す強い利益を有し、この利益は特許侵害訴訟にも適用される。同上を参照。イリノイ州で訴訟を防御するIQの負担は大きいかもしれないが、「通信と交通手段の進歩によって、他地域の裁判所で訴訟を防御する負担は比較的小さくなっている」21 F,3d at 1569 [*14] (World-Wide Volkswagen Corp. v. Woodson, 444 U.S. 286, 294, 62 L. Ed. 2d 490, 100S. Ct. 559(1980)を引用)。また、選択した裁判地での訴訟ではCoolSavingsに利益があるという事実によって、CoolSavingsが「その裁判所で訴訟を起こす権利が制限されることはない」。21 F.3d at 1568。IQは人的管轄権が憲法上不合理であることを主張する証拠を示していない。

また、IQは当事者および証人の便宜と正義上の利益のために、28 U.S.C.§1404(a)に従ってカリフォルニア州北部地域に裁判地を移転することも申し立てている。我々は、(1)当地域の裁判地が適切であり、(2)カリフォルニアの裁判地が適切であり、(3)裁判地の移転は当事者および証人の便宜と正義上の利益のために最善であることをIQが証明した場合に、裁判地を移転することができる。SRAM Corp. v. SunRace Roots Enter. Co., 953 F. Supp. 257, 259(N.D. Ill. 1997)を参照。「裁判地の争点は、人的管轄権の争点に包摂される」ため、我々は当地域の裁判地が適切であることを認識している。North Am. Philips Corp., 35 F.3d at 1577 n. 1VE Holding Corp. v. Johnson Gas Appliance Co., 917 F. 2d 1574(Fed. Cir. 1990)を引用)(特許侵害 [*15] 事件の裁判地には、「その訴訟が提起された時点で、企業の被告に対して人的管轄権を持つすべての地域が含まれる」)。我々は当地域でIQに人的管轄権を行使することは適切であると判断するため、当地域の裁判地は適切である。

IQはカリフォルニアで設立され、カリフォルニアに主要な営業所を有するため、カリフォルニア北部地域の裁判地も適切である。28 U.S.C.§1391(b)を参照。ただし、§1404(a)に基づいて本件の移転を承認するためには、IQはカリフォルニアの北部地域が当地域よりも「明らかにより便利」であることを証明しなければならない。Greene Manuf. Co. v. Marquette Tool & Die Co., 1998 U.S. Dist. LEXIS 10656, at *3, No. 97C 8857(N.D. Ill. July 9, 1998)(Heller Fin., Inc. v. Midwhey Powder Co., Inc., 883 F.2d 1286, 1293(7th Cir. 1989)を引用)。移転の便宜性と公正さを評価する際に、我々は各当事者の私的利益と裁判所の公的利益の両方を考慮に入れる。

我々が検討する第1の私的利益は、原告による裁判地の選択である。裁判地の選択が主張内容と実質的な関係がない場合を除き、原告の裁判地の選択を尊重する。同上 at *4を参照。CoolSavingsの主な営業所 [*16] はシカゴにあり、ほとんどの役員と職員はそこに居住している。IQの役員と従業員の大半は、カリフォルニアに居住し、IQはそこでクーポンプログラムを開発した。しかし、すでに説明したようにこの訴訟原因を発生させた事象(event)は米国全体で発生し、IQはクーポン発行プログラムを商店主と消費者に提供するために、米国全体に向けて特許技術を使用した疑いがある。またIQは侵害の疑いのある技術を販売し、プロモートするためにシカゴに本拠を持つ企業のFrankelを選択した。従って、主張内容とシカゴの関係は十分であり、我々はこの分析でCoolSavingsによる裁判地の選択を尊重する。

第2に、我々は重要な事象の場所を検討する。同上 at *4を参照。一部の重要な事象(人的管轄権についての判断の根拠とした事象など)は当地で発生した。しかし、我々はCoolSavingsによる侵害の主張に関連する多くの事象は、カリフォルニアで発生したことを認識している。また、IQとのその従業員の居住地はカリフォルニアにあり、IQはカリフォルニアで侵害の疑いがある技術を組み込んでiSaveプログラムを開始したと思われる。IQが指摘しているように、知的所有権に関する事件は、一般に侵害者の営業地を重視する [*17] 。Gen 17, Inc. v. Sun Microsystems, Inc., 953 F. Supp. 240, 243(N.D. Ill. 1997)などを参照。従って、この要素は裁判地の移転を支持している。

検討すべき第3の要因は、各裁判地での証拠の相対的な入手しやすさである。これには裁判所が証人を出頭させる権限と、証人出頭の費用が含まれる。Greene Manuf. Co., 1998 U.S. Dist. LEXIS 10656, at *4を参照。本件では、両社のほとんどの役員と従業員は、カリフォルニア北部またはシカゴ地域に居住しているため、どちらの場所も証拠の発生源となりうる。しかし、議論の余地はあるが、侵害の疑いのあるIQの活動が本訴訟の対象であるため、IQの従業員と記録が開示手続きの中心となるであろう。他方で、CoolSavingsはシカゴに居住しているFrankelの従業員を証人として召喚することを主張している。当事者ではないこれらの証人は、カリフォルニア北部地域の召喚権の対象とはならないのに対して(同上, at *8-9を参照)、IQがこれまでに特定した証人はすべて、本裁判所で強制手続きの対象となる企業の従業員である。さらに、我々は [*18] 関連文書の場所に関しても、カリフォルニアへの移転による利益はあまりないとするCoolSavingsの主張に同意する。これはどこで審理を行っても、特許を与えられた発明と侵害の疑いがある技術の両方に関して、すべての関連文書を収集し、コピーし、サンフランシスコとシカゴにある弁護士事務所に送らなければならないためである。また、すでに指摘したように、現在の技術によって情報の伝達は以前よりも簡単で、安くなっている。従って、我々は証拠の発生源に関して、いずれも場所も特に有利ではないと結論付ける。

最後の私的利益の要因は、それぞれの居住地と、特定裁判地で裁判費用を負担する能力に照らした各当事者の便宜である。同上 at *4を参照。IQにとって、シカゴで訴訟を防御することが不便であることは理解できるが、CoolSavingsがカリフォルニアで訴訟を行うことも同様に不便であろう。裁判地を移転することが、「一方の当事者の不便を他方の当事者の不便に変えるだけ」である限り、我々は本件を移転しない。同上 at *3を参照(文中の引用を省略)。IQは、従業員24人だけの新しく小さな会社で、まだ赤字経営であることを考慮に入れれば、その負担は[*19] 大きすぎると主張している。しかし、CoolSavingsの従業員も60人だけであり、比較的新しい企業で、その収益または利益に関する情報は存在しない。CoolSavingsが遠い裁判地で訴訟を行うためにIQよりもはるかに有利な立場にあることを明確に示すものは何もない。IQがこの主張のために引用した事件は、本件とは区別すべきである。その事件では、原告は500人以上を雇用し、予想売上高が約50,000,000ドルであったのに対して、被告は従業員5人だけの企業であった。SRAM Corp., 953 F. Supp. at 260を参照。本件で示された差異は、これほど明確なものではない。

適用される法律に関する裁判所の知識や、特定の裁判地で事件を解決する適性などの公共利益の要因によっても、移転は支持されない。SRAM Corp., 953 F. Supp. at 260を参照。特許の侵害は連邦法の問題であり、どちらの地方裁判所も同様に連邦法の争点を審理し、司法的判断を下す能力を有する。Gen 17, 953 F. Supp. st 243を参照。さらに、前述したように、イリノイ州はその市民の知的所有権の侵害に司法的判断を下す [*20] ことに大きな利益を有する。我々は、本件をカリフォルニアに移転することにいかなる公的利益も見いだせない(n4)。以上をまとめると、移転を支持する唯一の要素は、カリフォルニアで一部の重大の事象が発生していることである。その他の要素は、どちらの場所も支持していないか、移転しないことを支持している。本件をカリフォルニア州北部地域に移転することが、当地で続行するよりも「明らかにより便利である」ことが示されないため、我々はCoolSavingsによる裁判地の選択を尊重する。

n4   IQは、その申し立てにおいて、イリノイ州北部地域よりもカリフォルニア北部地域でのほうが、事件は早く解決されると提案し、その提案を支持するために1つの事件を引用している。その事件では、当地方裁判所の判事は、カリフォルニア州北部地域よりも、イリノイ州北部地域のほうがより早く解決することを示す証拠がないことを指摘して、カリフォルニア州への移転を求める申し立てを認めた。SRAM Corp., 953 F. Supp. at 260を参照。しかし、実際上、1998年9月30日までの12カ月間で、当地域で提起された民事事件に処分が下されるまでの平均期間は6カ月で、カリフォルニア州北部地域で提起された民事事件での平均期間は8カ月であった。Judicial Caseload Profile(合衆国裁判所事務局出版)(1999年5月20日調査)<http://www.ilnd.uscourts.gov/Crtstats.htm>を参照。

我々は、人的管轄権の欠落によるIQの却下申し立てと、カリフォルニア州北部地域への裁判地の移転を求める申し立ての両方を否認し、以上のように命じる。

MERVIN E. ASPEN

米国地方裁判所判事

日付:1999年6月10日