連邦巡回裁判所に対する合衆国控訴裁判所

95-1214

当事者:    GRUMMAN DATA SYSTEMS CORPORATION     控訴人

海軍長官  John H. Dalton                                    被控訴人
  および
INTERGRAPH CORPORATION                            参加人

控訴人側弁護士:

                  Wiliam W. Thompson, Jr.  −バージニア州アレキサンドリアの
                                             Thompson & Waldron事務所所属

                  書類上の協力者   Michael A. Branca と John H. Tracy

被控訴人側弁護士:

                  Arnold M. Auerhan−ワシントンD.C.の司法省民事局商業訴訟部弁護士

                  書類上の協力者         Frank W. Hunger        副司法長官
David M. Cohen          局長
Kirk T. Manhardt        副局長
Thomas L. Frankfurt   ワシントンD.C.海軍省
Lis B. Young               海軍情報システム管理センター

参加人の弁護士:

                  Rand L. Allen−ワシントンD.C.の Wiley, Rein & Fielding事務所所属

                  書類上の協力者         Christine E. Connelly

一般サービス管理局契約異議審議会に対する控訴

連邦巡回裁判所に対する合衆国控訴裁判所

95-1214

当事者:    GRUMMAN DATA SYSTEMS CORPORATION     控訴人

海軍長官    John H. Dalton                                 被控訴人
  および
INTERGRAPH CORPORATION                            参加人

判決:        1996年7月28日

裁判官:    RICH, RADER, SCHALLの各巡回判事

意見:    SCHALL巡回判事

Grumman Data Systems Corporation(Grumman)は、Grumman Data Systems Corp.対海軍省事件(注1 )における、一般サービス管理局契約異議審議会(「審議会」)の 1994 年10月27日の決定に対して控訴している。その決定の中で、審議会は、海軍省が自動データ処理機供給契約をIntergraph Corporation(Intergraph)に授与したことに対するGrumman の異議を却下した。我々は、それを認容する。

背景

本件で問題となっているのは、48 C.F.R. §15.605(c)(1994)(「一定の範囲の取得においては、政府は、履行およびその他の点で、政府に最大の価値を与える提案を出した供給源を選択することができる」)によって認められている最大価値調達である。1991年7月15日、当局は、                   に対する要望を出した。

入札募集要綱は、供給源選択評価委員会(SSEB)、供給源選択諮問会議(SSAC)、供給源選択責任者(SSA)を招聘している。SSEBとSSACは、入札募集に応じて提出された提案を検討し、SSAに勧告するためのものである。SSAは、どの入札者が契約を落札するかを決定する、最終的な決定者の役割を果たす。

Grumman、Intergraph、および他の二つの会社が、入札募集に応じて提案を出した。SSEBが、技術的な優秀さと価格に関して、それぞれの提案に評価を下した。提案の技術的優秀さを評価するにあたって、SSEBは、各入札者の機械に、5日間のテストを行った。稼働能力基準点実証(“OCBD”)として知られるテストは、各入札者の機械に対して、大体、4000のMMRの4分の1を検査した。OCBDの他に、SSEBは、仕様書の要件と比較する形で、入札者の技術的提案文書を分析した。それは更に、入札者の管理案も査定した。提案の技術的優秀さの評価によって、SSEBは、4社のすべてがMMRに適合しているとの結論に達した。その評価に基づいて、SSEBは、各入札者に技術的優秀さの総合的な得点を付けた。SSEBがSSACに出した報告書の中で、Intergraphは、総合的な技術的優秀さに関して最高得点を取っていた。これに対して、Grummanは第三位の得点であった。SSEBの報告書は、価格評価の結果も提示した。SSEBは、Intergraphが最も低い価格を出し、Grummanが二番目に低い価格を出していると認定した。要するに、SSEBは、4つの提案の中で、Intergraphの提案が、最も高い技術的優秀さと最も低い価格を提供していると結論づけた。SSACは、SSEBの報告書を検討し、SSEBから状況説明を受けた後で、--入札募集要綱では必要とされていないが--影響分析作業班(IAWG)に、提案の間の技術的な差異の比較を委嘱した。IAWGは、技術的な差異について16の領域(「識別要素」)を特定し、その16の領域を2 つの範疇、即ち、計量可能と計量不可能に分けた。IAWGは、4 つの計量可能な識別要素を特定し、分析した。IAWGは、機械のユーザーが普段行う可能性の高い仕事と、一般的にどれくらいの時間がその仕事に費やされるかを分析の基礎とした。この情報と連邦政府の賃金基準を用いて、IAWGは、各入札者の提案を採用するについて、当局にかかる費用を見積り、各提案の政府にとっての価値を採点した。IAWGは、当局がIntergraphの提案ではなくて、Grumman の提案を選択すれば、契約期間全体で、9,700 万ドルの節約になるだろうと報告した。

IAWGの報告を検討した後、SSACは、「IAWGの計量には、合理的な論拠があるとの確信が持てない。」とした。SSACは、「計量できない識別要素の領域も検討される必要がある」と説明した。SSACは、補足的な分析を提出するように、IAWGに指示した。

更に研究を行った後、IAWGは、Grumman が「機械の分野では、全体的に最善の選択であり、・・・その次が〔Intergraph〕である。」とSSACに報告した。IAWGは、更に、Intergraphではなく、Grumman の提案を選択すれば、当局は、契約期間全体で、9,800 万ドルから24,200万ドルの節約ができるだろうと報告した。IAWGは、この見積り節約額に大きな幅があるのは「基礎となっている一定の仮定」に変動の幅があるからであると説明した。

SSACは、SSEBの報告書と、IAWGの報告書を検討し、IAWGの数量化した価値判定を否定した。SSACは、「IAWGの数量化した価値判定は、価値を十分に具体化させているとは思えない」と述べている。SSACは、この結論について4つの理由を挙げている。SSACが挙げた第一の理由は、IAWGの試算では、各入札者の機械について、たった1人の人間がモデル試算を完了したということである。「モデル試算を数人で行っていたら、あるいは、モデル試算に関して入札者の情報の入力を得ることができていたら、その結果の信頼性はもっと高くなっただろう」と説明した。SSACの第二の理由は、IAWGの分析に用いられているソフトウエアのバージョンが、OCBDで用いられているのと異なっているということだった。SSACが挙げた第3 の理由は、IAWGの「プロセス・スタディ」のために実行された仕事が「比較的単純だった」、そして「もっと包括的な試算であれば、もっと公平な形で入札者の差別化ができただろう」ということである。第4 に、SSACは、IAWGの2つの識別要素に関する数量化プロセス・スタディは、入札募集要綱の中に記載されている仕事量全体の3分の1に当たるものしか「試算」していないと説明している。

最終的に、SSACは、取引の価格/技術分析を行うに当たり、Grumman とIntergraphの両方の提案を見直した。そうした後で、SSACは、「IntergraphとGrumman の技術的提案は、両方ともが、潜在的な利益と価値を提供している」と結論づけた。しかし、「その価値を実現するという高度の信頼が無いため」、SSACは、〔ずっと〕価格の低いIntergraphの提案が、全体として最も良い価値・費用・その他の要素を政府に提供している」と判断した。結果として、SSACは、SSA がIntergraphに落札を決定するように、勧告した。

SSA は、SSACの勧告の他、SSEBやIAWGの分析も検討した。それを終えて、彼は、自分が「IAWG  が行った数量化プロセス・スタディと、その結果である数量化された価値判定」に検討を加えたことを説明した。SSA は次のように述べている。「IAWGのプロセス・スタディの信頼性に対する私の確信のレベルは次のような程度である。・・・私は、数量化された価値判定と関連して見積られた節約金額が実現されるとか、数量化された価値判定が各提案の技術的価値の違いの指標になっているとかについて、合理的に納得したわけではない」。SSAは、この結論について、2つの理由を挙げている。即ち、(1)IAWG の数量化プロセス・スタディは、わずか1つのソフトウエアの使用しか分析されておらず、各入札者の機械についてわずか一つの簡単な仕事しか行われていないという点で「十分に包括的でない」、又 (2) キーストロークの数が、数量化プロセス・スタディ全体の基礎となっているが、各入札者について査定されたキーストロークに、いくつかの変動要素が影響を与える可能性があるので、この研究は疑わしい。

SSA は、次のように述べた。

「4社の入札者のすべてが、技術的に受け入れ可能な提案を提出している。全体な技術的優秀性の評価と得点、および、数量化されない識別要素に関連する影響分析に基づけば、Intergraph・・および・・Grumman の両社が、異なった技術を用いた質の高い解決策を提示している。私は、IntergraphとGrumman の両方の提案の技術的優秀性を検討したが、両方に利点があるとの結論に達した。各提案の利点を比べると、私は、Grummanの提案の利点が、価格の高さを埋め合わせる程のものだという結論を出すことができない。」

この理由付けに基づいて、SSA は、Intergraphに落札を決定することを承認した。

Grumman は審議会に異議を申し立て、Intergraphはそれに参加した。Grumman の主張は、とりわけ、次のようなものであった。即ち、(1) SSA がIntergraphの提案を「最善の価値」として選択したことは、IAWGの勧告を無視した点で、不合理且つ無分別である。又、(2) Intergraphは、入札募集のMMR の幾つかを満たしていない。

Grumman の異議を却下するにあたり、審議会は、次のように論じた。

SSA は、IAWGの勧告を心して受け止めたけれども、高技術/ 低価格の入札者としてIntergraphを選択した。これは、十分に彼の権限の範囲内の決定であるし、入札募集要綱の条件にも合致している。異議申立人はその選択に異議を唱えたが、それが誤っていることの証明責任を負っている。その努力に対して最も寛大な見方をしても、異議申立人が引き分けに持ち込んだという程度である。引き分けの場合は、常に海軍が勝利する。引き分けでは、異議申立人が成功する必要のある、証拠の優越には達しないからである。

審議会は、MMRに関してのGrummanの主張も否認し、異議を却下した。

議論

我々は、「事実問題については、・・・決定が、詐欺で出された場合、専断的もしくは恣意的であるような場合、または、必然的に不誠実を意味するような重大な誤りがある場合、あるいは、その決定が相当の証拠によって裏付けられていない場合を除き、」審議会の決定を支持しなければならない。」41  U.S.C.§609(b)(1994)。Grumman Data Sys. Corp.対 Widnall判決、15 F.3d 1044, 1046 (Fed. Cir. 1994) 参照。相当の証拠とは、「合理的な精神が、ある結論を裏付けるのに適切であると認めるような証拠」である。Frank 対運輸省判決、35 F.3d 1554, 1556 (Fed. Cir. 1994) 。我々は法律問題については、審議会の決定を独自に見直す。Caldwell & Santmyer, Inc.対Glickman判決、55 F.3d 1578, 1581 (Fed. Cir. 1995) 。問題の契約は、自動データ処理機の調達を内容としているので、Intergraphに契約を与えた当局の決定についての審議会の見直しは、修正ブルックス法、40 U.S.C. §759 (f)(5)(B)(1994) によって統制される。同条は、以下の通り規定する。

審議会は、異議を申し立てられた当局の行為が、法令もしくは規則、または、本条に従って出された調達権限の委任の条件に違反していると判断した場合には、長官の調達権限、または、異議の対象である調達における長官の調達権限の委任を、停止・取消・変更することができる。(注2)

I.

Grumman の控訴における第一の主張は、Intergraphの提案が「価格のその他の要素で、政府に最大の価値」を提供するとのSSA の認定を支持した点で、審議会が誤りを犯しているということである。これを主張するにあたって、Grumman は、Grumman の提案がIntergraphの提案より当局にかかる費用を抑えることになるというIAWGの結論をSSA が拒否したことは、不適法であり、SSA の決定を入札募集要綱の「最善の価値」要件から逸脱させることになったと強く主張している。

審議会ばかりでなく、本裁判所も、調達に関する当局の決定を、最大限、尊重しなければならない。Lockheed Missiles & Space Co. 対Bentsen判決、4 F.3d 955, 958-59 (Fed. Cir. 1993) 参照。(「効果的な契約締結は、広い裁量を必要とする。」)Tidewater Management Servs., Inc.対合衆国判決、573 F.2d 65, 73 (Ct. Cl. 1978)(当局は、「どの入札が政府にとって最も有利なものかを判定するのに大きな裁量権を与えられている」)。もっと細かく言えば、最近、我々が、Widnall 対 B3H Corp.判決、75 F.3D 1577 (Fed. Cir. 1996) で述べた以下のことが、本件に当てはまる。

「本件は、審議会が当局の最善の価値の選択を見直した、〔1984年の契約における競争に関する法律(“CICA”)〕の下の多くの先例に照らして検討されなければならない。先例は、見直しについての審議会の任務は、当局の調達に関する決定に合理的な根拠があるかどうかを判断することであると述べている。審議会は、当局の選択にそういう根拠があると判断したからは、たとえ、審議会自身は別の提案を選ぶとしても、当局の決定を尊重する。」

75 F.3d at 1580 (Oakcreek Funding Corp.判決、GSBCA No. 11244-P. 91-3 B.C.A.24, 200, 121, 041を引用)。SSA の最善の価値の判断に対するGrumman の攻撃は、見直しについての合理的根拠基準の下では功を奏しない。(注3 )

上述の通り、SSA がIAWGの結論を否定した第一の理由は、IAWGの数量化分析が「十分に包括的でない」ということだった。Grumman は、彼が入手できる最善の数量化可能情報を否定しているので、誤っていると主張している。Grummanによれば、16の識別要素のうち、数量化され得る4 つはすべて、IAWGが数量化したものであるという。Grumman の主張には欠陥がある。SSA は、「最善の数量化可能な情報」を得ていないからIAWGの検討を否定したわけではない。むしろ、彼が得た情報が「十分に包括的でない」から否定したのである。この点に関するSSA の結論は、記録によって裏付けている。Grumman は、IAWGが各入札者についてたった一つのソフトウエアの適用しか分析しなかったし、それぞれの適用について、たった一つの単純な作業しか行わなかったというSSA の認定を争ってはいない。IAWGのテストの範囲がかなり限定されていたことを理由に、IAWGの結論を否定したSSA の決定には、合理的な根拠がある。(注4 )

II.

Grummanの控訴における第二の主張は、MMRの一つに関わるものである。入札募集の第 C11.3.1.1項は、提供されるシステムにおいては、ハードウエア/ソフトウエア・シミュレーション・アクセラレータが、「システム全体の一つの要素として働」かなければならないと定めている。この項は更に、このアクセラレータが「同時に動く複数レベルのモデリング(スウィッチ、ゲート、調子、VHDL、ハードウエア)をサポートしなければならず、この「用具のセットが、1秒間に少なくとも100万のロジック・プリミティブをシミュレートし、少なくとも100万回の評価を実行しなければならない」と記載している。Grummanは、第C11.3.1.1項が、アクセラレータが、1秒間に少なくとも100万回の完全なシミュレーション・アルゴリズムを行う(言い換えると、A, B, C, Dの作業を行う)ことができることを要求していると主張する。更に、Grummanは、Intergraphの提案は、このMMRを満たしておらず、要件を満たさないことでIntergraphは、契約を与えられる資格がないと論じている。一方、当局とIntergraphは、第C11.3.1.1項の意味するところは、アクセラレータは単に、デバイス・インプットに1秒間に少なくとも100 万回の変化を記録する(言い換えると、単にAの作業を行う)ことができなければならないということであると解釈している。但し、当局もIntergraphも、Intergraphの提案が、Grummanの解釈による同項の要件を満たしていないとするGrummanの主張に、異議を唱えている。

審議会は、どちらの解釈も「説得力がある」という結論に達する一方、「この争いを解決する必要はなかった」と判断した。審議会は、「かかる状況では、異議申立人は、Intergraphと海軍が解釈において間違っていることを証拠の優越性によって証明してはおらず、従って、異議申立人は勝ち得ない。」と説明した。Grummanは、この点について3つの論拠を挙げている。(1) 第C11.3.1.1項は、多義的なものではなく、Grummanが審議会の前で主張した通りに解釈されなければならない。(2) もしこの条項が多義的であるなら、その多義性は潜在的なものであって、コントラ・プロフェレンテムの法理から、Grummanの解釈がこの場面を支配することが要求される。(3) たとえ当局とIntergraphの解釈に従っても、Intergraphの提案は、同項の要件を満たしていない。

A.

契約条項の解釈は、法律問題である。Fortec Constructors 対合衆国判決、760 F.2d 1288,1291(Fed.Cir.1985)。契約条項が多義的なものであるか否かも又、法律問題である。Community Heating & Plumbing Co.対Kelso 判決、987 F.2d 1575, 1579 (Fed. Cir. 1993)。合理的な解釈が一つしかない場合は、契約条項は多義的ではない。C.Samchez & Son, Inc.対合衆国判決、6F.3d 1539,1544(Fed.Cir.1993) 。二つ以上の意味が契約の文言と合理的に調和する場合、契約条項は多義的である。同上。上記の通り、Grummanは入札募集の第 C11.3.1.1項の「1 秒に100 万回の評価」要件が、明白且つ一義的で、彼が主張する意味を持つように解釈されなければならないと、主張している。当局とIntergraphは、その条項が多義的であるとの立場をとっている。

第 C11.3.1.1項が多義的であるとい主張を裏付けるため、Grumman は、Intergraphのユーザーの手引きにある、「評価とは、ドライビング装置のインプットの状態に基づいて、信号の将来の状態を予測することである。」という文章を指摘した。一方、当局は、入札者達のシミュレータ・ソリューションを評価した技術チームのリーダーの証言を引用した。その者は、この調達をする前は、シミュレータの作業として「1 秒当たりの評価」という言葉を聞いたことがないと証言していたのである。当局は、又、「更に多くの議論をしなくては、示そうとしているまたは話題にしようとしているものが何なのかを正確に把握することは難しい」ので、「評価」という言葉は、あまり使われないという、Intergraphの専門家である証人の証言を指摘した。その専門家は、続けて、シミュレーション・ビジネスに携わっている者は、その言葉が何を意味するかについて、もう少し議論しなければ、直観的な印象を得ることはできないと言った。更に、審議会は、上記の通り、両方の解釈が「説得力を持っている」と考えている。我々は、規定の多義性について、独自に、審議会の結論を再検討するが、その結論には「慎重な考慮と大きな尊敬」を捧げる。Community Heating & Plumbing Co.判決、987 F.2d, 1579。

我々は、「1 秒に少なくとも100 万回の評価をシミュレート」できるシミュレータを求めている契約文言には、複数の合理的な解釈があるという審議会の結論に賛成する。従って、我々は、法律問題として、その文言が多義的であると認定する。

B.

異議申立人が異議を唱えている契約文言が多義的であるという結論に達したからには、「我々は、その多義性が、解明を求める義務を課すほど明白なものか、または、潜在的なものかを認定しなければならない。」Interwest Constr. 対Brown判決、29 F.3d 611,614(Fed.Cir.1994) 。多義性が明白なものか、潜在的なものかというのは、法律問題である。同上。この認定は、ケース・バイ・ケースで行われる。Interstate Gen. Gov't Contractors, Inc. 対 Stone判決、980F.2d 1433, 1435 (Fed. Cir. 1992)。しかし、先例は、我々にこの判定をする際に参考となるものを示している。本裁判所の前任者のうちの一人は、明白な多義性とは「明白で、はなはだしく、目立っている」ものであると述べている。H & M Moving,Inc. 対合衆国判決、499 F.2d 660, 671 (Ct. Cl. 1974)。我々は、「多義性が‘目立っておらず、十分でなく、明白でもない’場合は、明白な多義性は、存在しない」と説明した。Community Heating & Plumbing Co.判決、987 F.2d, 1579(Mountain Home Contractors 対合衆国判決、425 F.2d 1260, 1264, 192 Ct. Cl. 16 (1970) を引用)。

Intergraphは、多義性は明白であると主張する。そして、Grumman のこの点についての異議は、Grumman が調達手続の途中で解明を求めなかったことを理由に、却下されるべきであると論じている。反対に、Grumman は、その多義性が潜在的なものであると主張している。(注5)。

上述の通り、ある専門家は、シミュレータの作業に関連する「1 秒当たりの評価」という言葉の使用は、聞いたことがないと証言し、もう一人の専門家は、その言葉は非常に曖昧なのであまり使われておらず、シミュレータ分野の人間がそれが何を意味するのか理解するには、その前に議論が必要であると述べている。更に、少なくとも、入札者4 社のうちの1 社が、特にその規定の意味について尋ねている。Grumman は、もし、その言葉が多義的なものならば、明白な多義性ではなく、潜在的な多義性であると述べるにとどまっている。Grumman は、この点に関する自分の意見に対して、論拠を提示したり、記録の中の証拠を指摘したり、更に詳しく説明したりしてはいない。我々は、「1 秒当たりの評価」という言葉が明白に多義的であるとの結論に達した。

入札募集要綱に、明白に多義的な契約文言が含まれている場合、異議申立人は、調達手続の終了までに、当局にその文言の明確化を求めていない限り、自分の解釈が適切であることを、審議会の前でも、本裁判所の前でも主張することができない。Grumman Data Systems判決、15 F.3d, 1047、Lockheed Missiles & Space Co. 判決、4 F.3d, 958、Community Heating & Plumbing Co.判決、987 F.2d, 1579を参照。48 C.F.R. §6101.5(b)(3)(i)(1994) も参照のこと(「何らかの入札募集における不適切と主張される部分があり、それが、入札の開封、または、第1次申込みの受領の締切りの前に明白であった場合、それに基づく異議の根拠は、入札の開封、または、第1次申込みの受領の締切りの前に提出されなければならない)。Grummanが、調達手続の終了前に、その規定の明確化を求めなかったということについて、争いはない。

上述の通り、調達手続の途中で、少なくとも入札者のうちの1 社が、「1 秒当たり100 万回の評価」の意味について、問い合わせをした。その問い合わせは、次のようなものであった。

「政府は、どのようにして「1 秒当たりの評価」を定めるのか。我々は、何らかの装置のインプットが変化した場合に、評価が記録されるのだと推定する。例えば、インバータを構成するため、同一のネットに接続された両方のインプットがあるa2インプット・ゲートは、nandインプットを送るネットの変換の度に、2 回の評価を記録することになる。上の推定は、正しいだろうか? 」

当局は、以下のように応答した。

「入札者の推定は、正しい。評価は、シミュレータがデザインの要素を検査し、そのインプットの価値に基づいて、アウトプットの価値を判定する時に、成立する。」

Intergraphは、問い合わせに対する当局の答えは、それ自体、明白に多義的であり、Grumman がその答えの意味の明確化も求めなかったことは、その規定についての自分の解釈が適切であるとの主張を妨げる、と主張している。この主張に対して、Grumman は、返事をしていない。

当局の答えは、表面上、複数の意味を受け入れる余地がある。それは、何らかの装置のインプットが変化した時に評価が成立することを示していると読み取れる。それは、又、装置のアウトプットが変化した時に評価が発生することを表しているとも読める。実際、Grumman の専門家の「1 秒当たりの評価」という言葉の意味についての証言は、答えが「肯定および否定」の答えで、「読む者の解釈によって影響を受ける」ものだったことを示している。審議会は、「その質問に対する答えは、全体として、双方の見方を支持している」と説明した。上述の通り、我々は、その結論に「慎重な考慮と大きな尊重」を捧げる。Community Heating & Plumbing Co.判決、987 F.2d, 1579。我々は、当局が、返信の第一の文で、問い合わせをした者の推定を肯定していることは、その返信の第二文で、いつ評価が発生するのかについての当局の説明と、著しく不調和であると考える。

こうして、我々は、第 C11.3.1.1項も、その規定の意味についての入札者のうちの1 社からの問い合わせに対する当局の答えも、その両方が多義的であると認定する。Grumman は、明白に多義的な規定についても、明白に多義的な答えについても、明確化を求めなかった。この懈怠により、Grumman は今、自分のその規定の解釈が正しい解釈であると主張することを禁じられる。

C.

入札募集要綱は、「[MMR] を満たしていない場合は、入札者は、それ以降の検討から除外される。」と定めている。当局が主張した第 C11.3.1.1項の解釈に従って、審議会は、Intergraphの提案が、同項の要件を満たしていると認定した。しかし、Grumman は、たとえ当局とIntergraphの第 C11.3.1.1項の解釈を用いても、Intergraphの提案は、同項の要件を満たしていないと主張している。

ある提案が特定の入札募集の規定を満たしているという判定を含め、審議会の事実認定を覆そうとする異議申立人は、その認定が「詐欺によって出された、または、専断的もしくは恣意的である、または、必然的に不誠実を意味するような重大な誤りがある、あるいは、相当の証拠によって裏付けられていない」ことを証明する責任を負っている。41 U.S.C. §609(b) (1994) 。CACI Field Servs., Inc.対合衆国判決、854 F.2d 464, 466 (Fed. Cir. 1988)。Grumman は「審問で、Grumman は、Intergraphが、1 秒に100 万回の‘インプット評価’さえ実行できないことを決定的に証明した。」と述べている。このように主張するについて、Grumman はIntergraphのホワイト・ペーパー(Intergraphの提案の実現を説明した提出文書)を参照しているが、それが記録に存在することを示していない。そればかりか、Grumman は、この点に関する立証責任を果たすために、審問で提出された証拠も、記録に存在するその他の証拠も、指し示すことをしていない。一方、当局とIntergraphは、Intergraphが「1 秒あたり100 万回の評価」という規定を満たしているという審議会の結論を裏付ける、記録の中の証拠を挙げている(注6 )。従って、我々は、相当の証拠によって裏付けられている通り、Intergraphの提案は「1 秒あたり100 万回の評価」という要件を満たしているという審議会の認定を支持する。

III.

入札募集要項は、提案が、標準質問言語(“SQL”)データベースの言語を使用することを要求している。それは更に、すべてのSQL のインプリメンテーションが「国立コンピュータシステム研究所(NCSL) 」のテストを受けていなければならず」、「その道具が本書に記載された---FIPS (連邦情報処理基準)が合致していることを確認するためには、そのテストが用いられる。」と定めている。入札募集要項は、次のように説明する。

有効な応答とみなされるために、入札者は次のことを行わなければならない。

(1)  (a)  入札文書において、本書への応答として提出されるFIPSのインプリメンテーションが、それまでにテストされ、または、実証されて、NCSLが保管する現在の実証済製品のリストに記載されていることを証明する。

            テストの証拠は、NCSLから--NCSLの登録された実証概要報告書の形で提出されなければならない。実証の証拠は、NCSLの実証証明書の形でなければならない。

      (b)  入札者が、上記の第1項(a)を遵守することができない場合は、最低限として、入札者は、NCSLのテストの日程を組んでおかなければならない。そのテストは、落札の決定までに完了されなければならない。

(2)        実証概要報告書に示された、適用されるべきFIPSからの逸脱で、それ以前の免除の対象となっていないものをすべて修正することを約束する。逸脱はすべて、落札決定の日から6 カ月以内に修正されなければならない。

Intergraphが、落札の決定前にSQLテストを終了していなかったことに争いはない。Grumman は、SQLテスト要件はMMRである、だから、Intergraphが要件を満たしていなかったという事実が、法律問題としてIntergraphには落札の決定を受ける資格がないとする宣言を命じると主張する。Intergraphは、SQL テストの要件は、欠陥が6 カ月以内に修正される限り、入札者がテストを受けていないことを認めていると応じている。従って、Intergraphは、この要件がMMRでないと主張しているのである。当局は、この要件は、入札の時点でテストの予定が組まれていることだけを要求していて、Intergraphはそれをしているとする立場を維持している。

SQLテスト要件は、入札者は、要請に対して正しく応答しているとみなされるためには、二つのことを実行「しなければならない」と定めている。即ち、(1)(a)入札者の製品がそれまでにテストされもしくは実証され、NCSLの現在有効な実証済製品のリストに載っていることを証明するか、または、(b) NCSLのテストの予定を組んでいて、「落札の決定までに」そのテストを完了する、そして(2) 入札文書に、実証報告書に示されている適用されるべきFIPS要件からの逸脱で、免除の対象となっていないものをすべて修正することを約束する旨を記載することである。Intergraphは、SQL テスト要件の(1)(a)を満たしていることを主張しようとしていない。(1)(b)は、単純に、(1)(a)が満たされていない場合に、テストが「落札の決定までに」完了されなければならないことを規定している。SQL テスト要件が、そこまでの手続に成功した入札者に、一定の欠陥を修正するための期間を6 カ月与えているという点では、Intergraphは正しいが、これは、入札者をテストが「落札の決定までに」完了されなければならないという要件から解放するものではなく、その要件からMMR の地位を奪うものでもない。従って、我々は、Intergraphが、落札を決定される前にSQL テストを完了しなかったことで、入札募集要綱のMMR を満たさなかったと認定する。

Intergraphと当局は、別の選択肢として、たとえSQL テスト要件がMMR であっても、落札の決定は、認容されるべきであると主張している。Intergraphは、それがSQL テスト要件を、落札の決定を受けてから36日以内に通過したことは争いがないと指摘した。Intergraphと当局は、Intergraphが落札決定の前にテストを完了していなかったことは、落札決定のすぐ後に成功裏にテストを完了したことや、入札募集要綱の要件からの逸脱がささいなものであったことに照らして考えると、非常に小さな誤りであったと主張する。Intergraphと当局は更に、経済的且つ効果的な調達という方針と目標は、小さな事柄のために落札の決定を無効にすることを許しはしないと述べている。

異議申立人は、救済を正当化するに十分な調達手続上の誤りを提示する責任を負っている。CACI Field Servs. 判決、854 F.2d at 466 。すべての誤りが、落札決定を否定するわけではない。SMS Data Prods. Group. Inc. 対合衆国判決、900 F.2d 1553, 1557 (Fed. Cir. 1990)。Excavation Constr. Inc.対合衆国判決、494 F.2d 1289, 1293 (Ct. Cl. 1974)。40 U.S.C. §759(f)(5)(B)(1994)。審議会は、落札決定を覆すことが適切かどうか判定する時には、誤りの調達手続における重要性を考慮しなければならない。Data General Corp.対 Johnson判決、78 F.3d 1556, 1562 (Fed. Cir. 1996) 。Andersen Consulting 対合衆国判決、959 F.2d 929, 932-33, 935 (Fed. Cir. 1992)。我々は、非常に小さな誤りは、落札決定を覆すことを要求しないと考えている。Andersen Consulting 判決、959 F.2d, 932-33, 935。「非常に小さな誤りとは、入札募集を全体として考えた場合、危険を伴わずに無視することができ、予定されている契約の主たる目的が、その誤りがあっても、影響を受けない程度の重大さしか持たないものを言う。」同上、935。

審議会は、Intergraphが落札決定の前にSQL テストを受けなかったことは、「些細な事柄であると認定した。入札募集要綱の規定によれば、この点についての懈怠は落札の決定を妨げないし、懈怠した入札者はその欠陥を修正するため6 カ月の期間が与えられている、そして、修正をしなかった場合でも、それは契約違反とはならないという理由からである。」我々は、この点についての審議会の判定に賛成する。我々は、更に、SQL テストは、4000のMMR のうちの一つで、Intergraphが満たさなかった唯一のものであったことに注意を喚起する。従って、我々は、IntergraphがSQL テスト要件を満たしていなかったことは、落札決定を覆すことを正当化するには不十分な、非常に小さい誤りであったと結論づけた点で、審議会に誤りはなかったと考える。

結論

上記の理由で、海軍の自動データ処理機の供給契約をIntergraphに与えたことに対するGrumman の異議を否定した審議会の決定は、認容される。

費用

各当事者はそれぞれ、自分の費用を負担しなければならない。


認容

脚注

1.   GSBCA No. 12912-P-R, 95-1 B.C.A.27, 314 (Oct. 27, 1994)

2.   1996会計年度の国防承認法は、1996年2月10日の180 日後の施行で、40 U.S.C. §759 を削除した。これにより、審議会の、自動データ処理機の契約に関する入札異議申立の管轄は消滅した。Pub. L. No. 104-106§§5101, 5701, 110 Stat. 186, 680, 702 (1996)。

3.   Lockheed Missiles & Space Co.判決において、裁判所は「もう一つの提案より、得点が1 点高いが、費用が100万ドル余分にかかる提案は、当局が、その提案の付加価値が価格の高さを補って余りあるということを、相当の確実性の範囲内で証明することができる場合には、選択することができる。」4 F.3d, 960。Grumman は、--本件の事実とはその事実が異なる事件から--この表現を捕らえて、SSA によるIAWGの認定の否定によって、合理的な基礎という判定基準に合致するためには、Intergraphの提案の選択が正当化されることを「相当の確からしさ」で証明する責任が、当局に課されたと主張する。この主張は、認められない。B3H 判決において、裁判所は、同一の主張を否認した。「Lockheed判決----は、審議会の最大価値調達を見直すという任務が、当局の決定に合理的な基礎があるか否かを独立に判定することに限定されるという原理に合致している。当裁判所が、このずっと以前からある原理を変更したいと望む場合は、それを裏付ける合理的な理由を添えて明示的にするであろう。」75 F.3d, 1584。

4.   我々は、SSAが、この理由だけにもとづいてIAWGの結論を否認することができたとの結論を得たので、SSAから提出された(キー・ストロークに関する)第2の理由は、取り上げない。

5.   当局の議論において、多義性が明白であるという当局の見解が暗に示されているが、当局は、この点に関して、明示的な主張は一切行っていない。

6.   例えば、一人の専門家、Mr.Abdulrazzaqは、Intergraphは C11.3.1.1の要件を満たしていると証言した。

95-1214