原告−被上訴人:OVERHEAD DOOR CORPORATION および GMI HOLDINGS, INC.

被告−上訴人:THE CHAMBERLAIN GROUP, INC.

98 - 1428

合衆国連邦巡回区控訴裁判所

1999 U.S. App. LEXIS 25514

1999年10月13日決定

事前経過: [*1] テキサス州北部地区連邦地方裁判所、判事Sidney A. Fitzwaterからの上訴

措置: 一部維持、一部取消、差戻し

弁護士: 原告 − 被上訴人側:Kenneth R. Glaser、Akin, Gump, Strauss, Hauer & Field, L.L.P. 法律事務所、テキサス州ダラス。摘要書協力者、Michael Lowenberg、Steven E. RossおよびAlex Chartove。

被告-上訴人側: John F. Flannery、Fitch, Even, Tabin & Flannery法律事務所、イリノイ州シカゴ。摘要書協力者、Robert J. FoxおよびKarl R. Fink。

裁判官: MICHEL、RADERおよびSCHALL巡回判事

意見者: RADER

意見: RADER巡回判事

              テキサス州北部地区連邦地方裁判所は、サマリジャッジメントにおいて、Overhead Door Corp.およびGMI Holdings, Inc.は、合衆国再発行特許第35,364号(第 '364号特許)を侵害しなかったと判決した。Overhead Door Corp. v. Chamberlain Group, Inc, No.95-CV-1648-D(テキサス州北部地区、1998年4月30日)(決定)。第 '364号特許は、車庫扉開閉機の遠隔制御システムの改善をクレームしている。同地裁は、問題のクレームが、均等論の下で、または構造上の均等物として [*2]、提訴された装置は対象ではないと法律問題として結論付けた点において誤りを犯したので、本法廷は一部維持し一部取消し差し戻す。

I.

              Chamberlain Group, Inc. は第 '364号特許を有している。ChamberlainもOverhead Doorも、遠隔制御の車庫扉開閉機システムを生産している。遠隔制御の車庫扉開閉機システムは、通常、手に持って運べる送信機と、処理装置および受信機が付いた車庫扉開閉用固定モーターを含む。車庫扉を開閉するには、使用者は送信機のボタンを押して信号を受信機に送る。受信機は信号を、車庫扉を開閉するモーターに命令を与える処理装置に送る。

              別の送信機の信号により扉が開かないように、システムはコード化された信号を使う。各送信機とそのシステムは独自のコードによって結び付けられており、車庫扉開閉機の処理装置は、開閉用モーターを動かす前に、信号コードが自身の送信機から来たものであることを確認する。

              第 '364号特許までの車庫扉システムでは、使用者は、送信機のコードを手動でインストールしなければならなかった。通常のコード・インストール・システムでは、使用者は、送信機のディップ・スイッチをセットしなければならなかった。このようなマニュアル・コードには、慣れていない人によるインストールの誤り [*3]、ディップ・スイッチのサイズによるコードの長さの制限など、短所があった。

              第 '364号特許は、車庫扉送信機の手動コード・スイッチをなくし、車庫扉開閉機が、異なるコードをもつ複数の送信機を識別し対応することができるようにした。第 '364号特許第4欄11. 15 - 22行参照。第 '364号特許で説明されている発明の実施例には、長い、工場でプログラムされたコードをもつ複数の送信機がある。受信機のマイクロプロセッサーは、「プログラム」モードと「操作」モードを切り換える。「プログラム」モードではマイクロプロセッサーはメモリー内に、送信機から受け取ったプログラムされているコードを記憶する。同上第3欄11. 40 - 48行参照。マイクロプロセッサーはこのようにして複数のコードを記憶することができる。「操作」モードではマイクロプロセッサーは、信号が、記憶された送信機のコードのいずれと一致するか確認する。第3欄11. 49 - 58行参照。

              第 '364号特許には8つのクレームがあり、本裁判においてはChamberlainはそのすべてを主張している。クレーム1 - 4は、原特許である合衆国特許第4,750,118号(第 '118号特許)の一部であった。Chamberlainは再発行手続きにおいて、クレーム5 - 8を加えた。2つの独立クレームは次のように述べる。

1. 以下のものから構成される、車庫の扉のための車庫扉 [*4] 操作機:

              車庫扉を開閉させるためにそれに接続されたアウトプット・シャフトが付いた車庫扉操作機構

              無線受信機

              上記受信機のアウトプットを受け取るために接続された解読機

              上記解読機のアウトプットを受け取り、上記車庫扉操作機構を起動させるために接続されたマイクロプロセッサー

              上記マイクロプロセッサーを操作モードまたはプログラム・モードにするために上記マイクロプロセッサーに接続された、プログラムと操作の各ポジション間を動くスイッチ

              上記スイッチがプログラムのポジションにあるときに、上記マイクロプロセッサーに接続された複数のアドレスを記憶するためのメモリー手段

              上記マイクロプロセッサーに接続されたメモリー選択スイッチ

              異なるコードをもつ複数の無線送信機。その無線送信機の最初のものが起動されたとき、その最初の送信機のコードが上記メモリー手段に記憶されるように上記メモリー選択スイッチは第一のポジションに設定され、その無線送信機の二番目のものが起動されたとき、その二番目の送信機のコードが上記メモリー手段に記憶されるように上記メモリー選択スイッチは第二のポジションに設定される。

              上記の最初のおよび/または二番目の無線送信機が作動したとき、上記マイクロプロセッサーに上記車庫扉操作機構を起動させるように、上記スイッチが操作ポジションにあるとき [*5] 上記マイクロプロセッサーは操作モードに置かれる。

5. 以下のものから構成される、装置の操作を制御する操作機:

              無線受信機

              上記無線受信機のアウトプットを受け取るために接続された解読機

              上記解読機のアウトプットを受け取り、上記装置を起動させるために接続されたマイクロプロセッサー

              上記マイクロプロセッサーを操作またはプログラムのモードにするために上記マイクロプロセッサーに接続された、プログラムと操作のポジションを選択する最初のスイッチ手段

              上記の最初のスイッチ手段がプログラム・ポジションにあるときに、上記マイクロプロセッサーに接続される複数のアドレスを記憶するメモリー手段

              上記マイクロプロセッサーに接続されたメモリー選択第二スイッチ手段

              異なるコードをもつ複数の無線送信機。その無線送信機の最初のものが起動されたとき、その最初の送信機のコードが上記メモリー手段に記憶されるように、上記メモリー選択第二スイッチ手段は第一のポジションを選択するように適応し、[*6] その無線送信機の二番目のものが起動されたとき、その二番目の送信機のコードが上記メモリー手段に記憶されるように、上記メモリー選択第二スイッチ手段は第二のポジションを選択するように適応する。

              上記の最初のおよび/または二番目の無線送信機が作動したとき上記マイクロプロセッサーに上記装置を起動させるように、上記第一スイッチ手段が操作ポジションにあるとき上記マイクロプロセッサーは操作モードに置かれる。

'364号特許第5欄11. 11 - 35行、第6欄11. 7 - 30行(強調追加)

              「Intellicode」システムとして販売されたOverhead Doorの提訴された開閉機は、手動スイッチの代わりに工場でプログラムされた識別コードを使用し、複数の送信機の識別方法を「学ぶ」。第 '364号特許でクレームされた発明と同様に、Intellicodeは「プログラム」と「操作」のモードをもち、学習プロセス中に、選択された記憶場所に送信機のコードを記憶する。しかしIntellicodeは、手動の、機械的なメモリー選択スイッチは使用しない。Intellicodeは、新しい各コードに対して記憶場所を決定するソフトウェアをもつ。Intellicodeのマイクロプロセッサーは、このソフトウェアに制御されてメモリー中の未使用の場所 [*7] を特定し、利用可能な未使用の場所に新しいコードを自動的に記憶する。両当事者は、Intellicodeのソフトウェア主動のメモリー選択方式が、第 '364号特許の範囲外であるか否かを争っている。

              1995年8月7日Overhead Doorは、Intellicodeは第 '118号特許に違反していないという判決を求める確認判決訴訟を提起した。Chamberlainは反訴し、故意侵害を主張した。第 '118号特許は1996年10月に第 '364号特許として再発行され、Overhead Doorはその訴状を、追加されたクレーム5 - 8を含むように修正した。両当事者はサマリジャッジメントを求める反対申立てを提出した。裁判所は申立てを特別補助裁判官に付託し意見を求めた。

              特別補助裁判官は、法律問題として、Intellicodeは第 '364号特許を文言侵害していないと結論付けた。特別補助裁判官はこの結論に到達する際に、クレーム要素「メモリー選択スイッチ」(クレーム1)および「メモリー選択第二スイッチ手段」(クレーム5)が、「スイッチのポジションを選択するために使用者が操作するマイクロプロセッサーとは別個のスイッチ」を必要としていると解釈した。Overhead Door, No.95-CV-1648-D, at 36(テキサス州北部地区、1999年1月13日)(特別補助裁判官の報告書)(強調 [*8] 追加)。特別補助裁判官はさらに、クレームを「マイクロプロセッサーが制御するランダム・メモリー選択プロセスを含むほど広く解釈することはできない」と判断した。Intellicodeは記憶位置を手動スイッチではなくソフトウェアで選択するので、訴訟対象のクレームを文言侵害していないと、特別補助裁判官は結論付けた。

              特別補助裁判官は、また、法律問題として、Intellicodeは均等論の下で第 '364号特許を侵害していないと結論付けた。特別補助裁判官は、「メモリー選択スイッチ」および「メモリー選択第二スイッチ手段」の「機能」を、「送信されるコードのその後の記憶のために、受信機における特定の記憶位置の選択を可能にすること」と特定した。同上 at 46。特別補助裁判官によれば、マイクロプロセッサーが記憶位置を自動的に選択するソフトウェアを使用しているので、Intellicodeにはその機能はない。さらに、「使用者は記憶位置を・・・前もって決めることも、位置を新しいコードと置き換えることもできない」と指摘した。そして特別補助裁判官は、均等論の下でもIntellicodeは第 '364号特許を侵害しえないと結論付けた。

              地裁は特別補助裁判官の報告書全体を採用し [*9]、Overhead Doorのサマリジャッジメントの申立てを認め、Chamberlainの反対申立てを棄却した。Chamberlainは上訴する。

II.

              本法廷は、地裁によるサマリジャッジメントの付与について遠慮なく再検討する。Chiuminatta Concrete Concepts, Inc. v. Cardinal Indus., Inc., 145 F.3d 1303, 1307, 46 U.S.P.Q.2D(BNA)1752, 1755(連邦巡回、1998)参照。本法廷はまた、地裁のクレーム解釈を遠慮なく再検討する。Cybor Corp. v. FAS Techs., Inc., 138 F.3d 1448, 1456, 46 U. S. P. Q. 2D(BNA)1169, 1172(連邦巡回、1998)(大法廷)参照。提訴された装置が正確に、適切に解釈された各要素またはその均等物を含んでいるかは、事実についての判断である。Southwall Techs., Inc. v. Cardinal IG Co., 54 F. 3d 1570, 1575, 34 U.S.P.Q. 2D(BNA)1673, 1676(連邦巡回、1995)参照。Overhead Doorの主張を認めた地裁のサマリジャッジメントの再検討において、本法廷は、非申立て人であるChamberlainを有利とする証拠から、合理的な推論を行う。Anderson v. Liberty Lobby, Inc., 477 U.S. 242, 255, 106 S. Ct. 2505, 2513, 91 L. Ed. 2d 202(1986)参照。

              争点はクレーム1の3要素 [*10]、つまり「メモリー選択スイッチ」、「動くスイッチ」および「異なるコード」である。クレーム5の同様の要素も争点である。しかしクレーム5の最初の2要素は、ミーンズ・プラス・ファンクション形式、つまり「メモリー選択第二スイッチ手段」および「最初のスイッチ手段」である。

              「メモリー選択スイッチ」 − クレーム1

              地裁はクレーム1の「メモリー選択スイッチ」要素を、「スイッチのポジションを選択するために、使用者が操作するマイクロプロセッサーとは別個のスイッチ」を意味すると解釈した。このクレームは、「オン」や「オフ」など、異なる位置をもつ機械的装置を含意する単語である「スイッチ」という用語を使っている。クレーム1はさらに、メモリー選択スイッチを、マイクロプロセッサーに「接続された」、第一のポジションに「設定され」、そして第二のポジションに「設定される」と定義している。このクレームの表現は、マイクロプロセッサーにプログラムされたソフトウェアではなく、マイクロプロセッサーに付けられた機械的スイッチとの解釈に、よく合致する。

              特許権者は第 '364号特許の「図面の簡単な説明」で、「図2は発明をブロック図で説明する」としている。第2欄1. 43行(強調追加)。図2は、クレーム表現での定義を補完する。

              [原文の図2参照]

              図2 [*11] は、プログラム/操作スイッチ22を、プログラムと操作を切り替える機械的スイッチとして示している。さらにこの図面は、メモリー選択スイッチ23を、5つの番号付きポジションをもつ機械的スイッチとして表している。付随する文書の説明は、メモリー選択スイッチを23とし、第 '364号特許第3欄11. 9 - 11行、マイクロプロセッサー44とは別個の、それに「接続された」、5つのポジションをもつ可動スイッチとして説明している。同上第3欄11. 9 - 19行(強調追加)。図2も参照。特許のこの部分も機械的スイッチを示唆する。

              最後に、Chamberlainは、プログラム・モード「スイッチ」を機械的なトグル・スイッチとした特別補助裁判官の解釈に反対していない。クレーム内の「スイッチ」という用語を整合的に解釈し、図面の説明をクレームの表現と調和させることにより、本法廷は、地裁の「スイッチ」という用語の読み方を確認する。つまり「メモリー選択スイッチ」という用語は、マイクロプロセッサーとは別個の機械的装置を意味する。この解釈は、後で説明する、再発行の出願経過とも、最もよく整合する。

              本法廷は、このクレーム解釈に達する際に [*12]、図3がクレームの一部として、クレーム1のスイッチのソフトウェアによる実現を開示しているとの主張を検討し、棄却した。以下で示す第 '364号特許の図3は、この発明がコードをいかに受信し確認するかを示している。

              [原文の図3参照]

              図3において、右下隅の2つの枠では、「コード位置ポインター」によって「指された」位置にコードを記憶し、コード位置ポインターを「ずらし」、コード位置ポインターに1を「ロードする」と説明されている。しかし第 '364号特許は、「コード位置ポインター」がクレーム1の「スイッチ」の、または他の(クレームされていない)構成要素の特定の実施例であるとは指摘していない。「コード位置ポインター」はクレームのどこにも登場しない。さらに、文書での説明においてコード位置ポインターに言及しているのは、「送信機からの入力信号を受信したとき、図3に示されているように、スイッチ22が「プログラム」モードにあると、流れ図のように進み、コード位置ポインター23によって指されたコード位置に、その新しい入力信号が記憶される」、という、図3とは関係のない文一つだけである。第4欄11. 57 - 61行。図3の曖昧な用語を、[*13]「メモリー選択スイッチ」が機械的装置であると明確に示したクレームの表現および文書説明に優先させることはできない。本法廷は「メモリー選択スイッチ」を、メモリー中の各位置に対応するさまざまなポジションをもち、車庫扉開閉機がさまざまな記憶位置にコードを記憶することができるようにする、機械的スイッチを意味するものと解釈する。したがって本法廷は、再検討をした上で、「メモリー選択スイッチ」の地裁の解釈を維持する。

              本法廷はこのクレーム解釈を提訴された装置に適用し、クレーム1の文言害はないとの地裁のサマリジャッジメントを維持する。「クレームの文言侵害は、クレームで述べられたすべての限定が提訴された装置に登場している、つまり適切に解釈されたクレームが、提訴された装置に正確に読み取れることを必要とする」。Amhil Enters.,Ltd. v. Wawa, Inc., 81 F.3d 1554, 1562, 38 U.S.P.Q. 2D(BNA)1471, 1476(連邦巡回、1996)。クレーム1は機械的な「メモリー選択スイッチ」を対象としている。一方、提訴されたIntellicodeシステムは、記憶位置を、機械的スイッチではなくソフトウェア・プログラムで選択する。したがって正しく解釈された「メモリー選択スイッチ」は、文言上、Intellicodeにおいては存在しない。[*14] つまりIntellicodeはクレーム1を文言侵害していない。

しかし、地裁はサマリジャッジメントにおいて、Intellicodeが均等論の下でも侵害をしていないと判断した点で、誤りを犯した。均等論は、提訴された装置がクレームの各限定、またはその均等物を含んでいることを要求する。Warner - Jenkinson Co. v. Hilton Davis Chem. Co., 520 U.S. 17, 40, 41 U.S.P.Q.2D(BNA)1865, 1875, 137 L.Ed.2d 146, 117 S. Ct. 1040(1997)参照。提訴された製品の要素とクレームの要素は、当業者にとって両者の差が「実質的でなければ」、均等である。Warner - Jenkinson, 520 U.S. at 39 - 40; Hilton Davis Chem. Co. v. Warner - Jenkinson Co., 62 F.3d 1512, 1517, 35 U.S.P.Q.2D(BNA)1,641(連邦巡回、1995)(大法廷)、他の根拠により破棄、520 U.S.17, 137 L. Ed. 2d 146, 117 S. Ct. 1040(1997)。地裁は法律問題として、Intellicodeが、メモリー選択スイッチというクレーム要素の均等物をもっていないと認定した。

              「均等性は通常、事実認定者に任される事実問題だが、いかなる合理的な事実認定者も均等性を認定できない場合 [*15]、第一審裁判所はサマリジャッジメントを下すべきである」。Sage Prods., Inc. v. Devon Indus., Inc., 126 F. 3d 1420, 1423, 44 U.S.P.Q.2D(BNA)1103, 1106(連邦巡回、1997)。本件は、この高尚な基準を満たさない。記録には、Chamberlain側の専門家Rhyne博士の幾つかの報告書と供述を含め、当業者がIntellicodeのソフトウェア主動のメモリー選択システムはクレーム1のハードウェアのスイッチと実質的に異ならないとの認定をすると思われる、かなりの証拠がある。Rhyne博士は1997年6月2日の報告書の中で、「「いかなるソフトウェア・プロセスも均等なハードウェア・プロセスに変換することができ、いかなるハードウェア・プロセスも均等なソフトウェア・プロセスに変換することができる」というのは・・・コンピューター技術において基本的、かつよく理解されている教えである」と主張した。ED KLINGLER, MICROPROCESSOR SYSTEMS DESIGN 5(1997)参照。「ハードウェア/ソフトウェア」のトレードオフとして知られるこの「相互変換可能性」は、実質的に、マイクロプロセッサーのソフトウェア・ポインターか、マイクロプロセッサー基盤のシステムを制御するハードウェア・スイッチかの選択が、単に設計上の選択の問題に過ぎないことを意味すると、Rhyne博士は述べた。この記録上の証拠は、当業者が [*16]、両者を交換可能な代替物と認識することを示す。非侵害のサマリジャッジメントの再検討において本法廷がすべき、Chamberlainにとって有利なすべての合理的な推論に基づき、本法廷は、Rhyne博士の表明および、裏付けとなるコンピューター科学の文献の引用は、サマリジャッジメントを禁じる、重大な事実問題に関する真正な争点があることを示すと、結論付ける。

          この真正な事実問題の認定において、本法廷は、機械的スイッチは必然的に操作する人間を必要とするという地裁の解釈も考慮した。機械的スイッチの操作において、操作する人間は実際、メモリー選択スイッチを5つのポジションのいずれかに設定する。しかし、機械的スイッチの「使用者が操作する」という特徴は、ソフトウェアが人間の操作と均等な機能を果たすという認定を必ずしも妨げない。実際、他の文脈で本法廷は、ハードウェアとソフトウェアの互換性を指摘した。たとえばPennwalt Corp. v. Durand - Wayland, Inc., 833 F. 2d 931, 935, 4 U.S.P.Q. 2D(BNA)1737, 1740(連邦巡回、1987)(大法廷)(「提訴されたシステムが、ハードウェアの回路をコンピューターに置き換えたという点だけで異なっているならば、[特許権者は] [*17]、提訴されたその装置がクレームを侵害していると主張する、強い立場にたつことになるだろう」)参照。さらに最高裁は、互換性は均等物となるための1つの証明書となりうると認識した。Warner - Jenkinson, 520 U.S. at 37(「特許における構成要素の・・・置換可能性(interchangeability)が認識されている場合、提訴された装置が実質的に特許発明と同一であるか否かに関係する・・・明示的な客観的要因の1つである」);Graver Tank & Mfg. Co., Inc. v. Linde Air Prods. Co., 339 U.S. 605, 609, 85 U.S.P.Q.(BNA)328, 331, 94 L. Ed. 1097, 70 S. Ct. 854(1950)(「 [均等性の判断において] 1つの重要な要因は、当業者が置換可能性を認識できたか否かである」)参照。

              本法廷は、特に機械的要素においては、「機能-方法-結果(function-way result)」テストが均等物の判断の助けとなると説明した。Dawn Equip. Co. v. Kentucky Farms Inc., 140 F.3d 1009, 1016, 46 U.S.P.Q. 2D(BNA)1109, 1113(連邦巡回、1998)参照。機能 − 方法 − 結果テストは、「同じ結果を得るために [*18]、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を行うならば」、提訴された装置における要素はクレームの構成要素と均等であるとする。Graver Tank, 339 U.S. at 608。地裁は機能 − 方法 − 結果テストをクレーム1に適用し、「メモリー選択スイッチの機能は・・・マイクロプロセッサーに接続されたスイッチを使用することによって、送信されたコードを記憶するために受信機における特定の記憶位置の選択を可能にする」ことと認定した。Overhead Door Corp, No.95-CV-1648-D, at 24(テキサス州北部地区、1999年1月13日)(強調追加)。そして地裁は、「使用者は、特定の、望んだ記憶位置の選択を前以て決定することはできない」ので、この機能は、提訴された装置には「まったく欠けている」と認定した。この機能-方法-結果テストの適用は、機能の定義をクレームの構成要素の「方法」に誤って組み入れ、結果的に、クレームの要素を、その文言に限定している。

              クレームの表現および明細書は、「メモリー選択スイッチ」が記憶位置を選択する機能をすると説明する。このクレーム要素は、その機能を、機械的スイッチにより果たす。このスイッチは、クレーム要素のメモリー選択機能自体ではなく、その機能を達成する「方法」を構成する。[*19] この要素の結果は、さまざまな記憶位置でのコードの記憶である。審理に先立つこの段階での記録は、Intellicodeが実質的に同じ結果を達成するために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を実行するか否かという重大な事実に関する真正な争点を生み出す。

              さらに、地裁の判断とは異なり、Sage Products訴訟における本法廷の判断は、本件では均等物の範囲をメモリー選択スイッチに限定しない。Sage Products訴訟において本法廷は、「容器の上部」および「上記スロットの上」というクレームの限定が、「比較的単純な構造装置」における「構造要素の精密な配置」および「明確な構造の限定」を構成すると指摘した。Sage Prods., 126 F.3d at 1425。本法廷は、均等性に関するSageの理論、すなわち、その上部の下に二つのくびれをもつ容器は、上下に1つずつくびれをもつクレームされた容器と均等であるという主張は、「「容器の上部」および「上記スロットの上」という限定をクレームから完全に取り除いてしまう」と認定し、侵害ではないとする地裁のサマリジャッジメントを維持した。同上 at 1423-24 [*20]。Sage Productsによる均等論の上記適用案は、クレームから1つだけではなく、少なくとも二つ(おそらくはそれ以上)の明示的な限定を完全に消し去る。実際、Sage Productsによる均等論に基づけば、1つの限定(「上部に」)に関する均等物の認定は、必然的に、他の限定(「上記スロットの上に」)をクレームから消し去ることを必要とする。均等論に基づき、どのように特許権者がクレームを提訴された装置に適用しようとしても、常に少なくとも1つの限定が欠ける。したがって、クレームの表現が、特許権者の均等論を明確に否定する。さらに、Sage Products訴訟において本法廷は、「後に開発された技術などの、最新技術のその後の変更」は、均等論に基づく保護の範囲に入ると指摘し、少なくとも1つのタイプとして、均等論に基づく拡大されたクレームの範囲を明確に定めた。同上 at 1425

              Sage Products訴訟における事実とは異なり、第 '364号特許のクレーム1は、ソフトウェア・システムが、クレームされたシステムと均等であると合理的に陪審が認定するのを妨げるような、明確な構造上の限定を含まない。定義から均等物は、文言上はクレームの表現内に入ることはない [*21]。「メモリー選択スイッチ」の文言上の意味は、ソフトウェアで実現されたIntellicodeを含まないが、本件では、Sage Products訴訟における法理の適用が阻まれることはない。同法理をどのように適用しても、提訴された装置においてクレームの何らかの側面が欠けることはないからである。Intellicodeのソフトウェアを含むように均等論を適用しても、「メモリー選択スイッチ」要素を害なうことはない。同上 at 1423 - 24参照。

              「メモリー選択スイッチ」は、適切に解釈されれば、記憶位置を選択する機械的スイッチである。Intellicodeのソフトウェア主動のメモリー選択方式が、機械的スイッチと均等であるか否かという疑問は残る。この争点は、記録にあるかなりの証拠に基づき、事実認定者が公判において判断しなければならない。

              「メモリー選択第二スイッチ手段」 − クレーム5

              クレーム5は、「メモリー選択第二スイッチ手段は第一のポジションを選択するように適応し・・・第二のポジションを選択するように適応する」と説明する。このクレーム要素は「手段(means)」という用語を利用しており、クレームは説明した機能の実行のための構造も材料も指定していないので、[*22]「メモリー選択第二スイッチ手段」は、35 U.S.C. § 112, P6(1994)に基づくミーンズ・プラス・ファンクション要素であると、地裁は適切に判断した。Al - Site Corp. v. VSI Int'l, Inc., 174 F.3d 1308, 1318, 50 U.S.P.Q. 2D(BNA)1161, 1166(連邦巡回、1999)(「クレーム要素の中に「手段」という単語が機能と組み合わさって登場すれば、それはミーンズ・プラス・ファンクション要素であると想定される」)参照。したがって、「メモリー選択第二スイッチ手段」は、「明細書に説明されている対応する構造、材料または行為、およびその均等物」を含む。35 U.S.C. § 112, P6(1994)

              地裁による対応する構造の判断は、クレーム解釈の問題であり、Chiuminatta, 145 F.3d at 1306、本法廷は改めて検討する。Cybor, 138 F.3d at 1456参照。図3が、クレーム5の「スイッチ手段」の「対応する構造」か否かの判断には、裁判所は、クレームの表現、およびクレームの意味を教える他の要因と相談しなければならない。もちろん、焦点はクレームの表現である。文書での説明、出願経過、および適切な外部証拠 [*23] も、クレーム表現を理解する文脈を提供だろう。Vitronics Corp. v. Conceptronic, Inc., 90 F. 3d 1576, 1582, 39 U.S.P.Q.2D(BNA)1573, 1576 - 77(連邦巡回、1996) Pitney Bowes, Inc. v. Hewlett - Packard Co., 182 F.3d 1298, 1309, 51 U.S.P.Q.2D(BNA)1161, 1169(連邦巡回、1999)参照。

              クレーム5の解釈において、地裁は、「メモリー選択第二スイッチ手段」という用語が、クレーム1の「メモリー選択スイッチ」と同じ範囲を含むと判断した。特に、地裁は、「メモリー選択第二スイッチ手段」は、図3のソフトウェアによる実現ではなく、図2の機械的スイッチのみを対象とすると判断した。しかし第 '364号特許の文書説明および出願経過は、「メモリー選択スイッチ手段」がより広い意味をもつことを明らかにする。

              既に本法廷によるクレーム1の分析で説明したように、図3は、「発明の操作およびプログラムのモード双方を説明する」流れ図を描いている。第 '364号特許第4欄11. 23 - 24行。図3の右下隅の二つの枠は、「コード位置ポインターが示す位置にコードを記憶し」、「コード位置ポインターをずらし、もしポインターが5以上ずれたら [*24]、コード位置ポインターに1をロードする」プロセスを説明する。同上、図3(強調追加)。Rhyne博士の専門家証言は、コンピューター技術の当業者であれば、ソフトウェアの操作を説明する、この強調された用語を理解することを示す。

              ソフトウェアの操作はクレーム1の「メモリー選択スイッチ」の文言上の範囲に含まれないが、再発行の出願経過も、クレーム5の「スイッチ手段」に対して、幅広い読み方を開示している。第一に、1989年11月29日の宣誓付供述における特許商標局に対する特許権者の表明は、スイッチ手段の「対応する構造」として、図3のアルゴリズムを含めるという彼らの意図を示している。特許権者は次のように述べている:

前述の特許は、我々が特許でクレームする権利をもつもの未満しかクレームしていないので、全体または部分的に効力を失っていると我々は考える。具体的には、唯一の最初の独立クレーム [つまり第 '118号特許のクレーム1、そして現在は第 '364号特許のクレーム1] は、三つの点で狭過ぎる。

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(c) クレームは、「動くスイッチ」および「メモリー選択スイッチ」を要求しているが、それぞれ − 第一スイッチ手段 − および [*25] メモリー選択スイッチ手段を要求すべきであった。スイッチ手段は、機械的スイッチばかりでなく電子的スイッチも含むからである。

J.A. at 5388(強調追加)。この表明は、クレーム1にソフトウェアによる操作を含める解釈には不利だが、クレーム5には幅広い読み方を与える。この表明は、特許権者による「スイッチ手段」という用語の使用が、ソフトウェア主動のマイクロプロセッサーの操作、つまり図2の機械的スイッチではなく「電子的」スイッチを含むことを明らかにする。クレーム5における、「スイッチ」ではなく「スイッチ手段」、そして「設定」ではなく「選択するように適応する」という表現の特許権者による使用は、幅広い解釈をさらに支持する。

再発行の手続きにおいて、特許権者は予想拒絶に応えて次のように論じた:

出願人の方法および装置は、コード送信機による装置の遠隔制御の単純化が意図されている。・・・かかる単純化は、受信機に複数の記憶場所を、そしてシステムのコード送信機から送信されるコードを受信し記憶するプログラミング・ルーチンを含めることによってもたらされる。

J.A. at 5822(強調追加)。[*26] この表明は、「スイッチ手段」が図3に対応する構造を含むとの読み方を、さらに支持する。

          クレーム表現の差は、再発行手続き中の特許権者の表明により拡大され、本法廷に、クレーム5をクレーム1よりも広く解釈させる。Vitronics, 90 F.3d at 1582参照。地裁は、図2の機械的スイッチのみが、クレームされた「スイッチ手段」に「対応する構造」と判断した点で、誤りを犯した。「スイッチ手段」は適切に解釈されれば、図3で説明されているソフトウェアに基づく実施例も含む。

              Chamberlainはその交差上訴において、図3のソフトウェアによる実施例を含むように本法廷がクレーム5を解釈すれば、文言侵害を認めるサマリジャッジメントを得る資格があると主張する。提訴された装置は、限定により要求されたものと同一の機能を行い、明細書で開示された構造またはその均等物を組み入れているならば、ミーンズ・プラス・ファンクション要素を文言上で満足する。Cybor, 138 F.3d at 1456参照。「スイッチ手段」の機能は、記憶位置を選択し [*27]、それによりマイクロプロセッサーが、その記憶位置に送信機識別子を記憶できるようにすることであることが、クレーム5の表現および文書説明によって確立する。両当事者は、Intellicodeのメモリー選択ソフトウェア・プログラムがこの機能を果たすことは争っていない。

              しかしIntellicodeは、説明された機能を行うために異なるアルゴリズムを使用するので、第 '364号特許で開示されたソフトウェアとは異なる「構造」をもつ。図3および対応する説明は、コード位置ポインターが一連の記憶位置の中を動き、その位置に新しい送信機コードを記憶するときに自動的に記憶位置の以前の内容を消去する。ポインターがそれ以上動けないとき、つまり最後の記憶位置を指しているとき、マイクロプロセッサーは「コード位置ポインターに1をロードし」、ポインターを元に戻して最初の記憶位置を選択させる。一方、Intellicodeは未使用の記憶位置をランダムに選択する。つまりIntellicodeのメモリー選択方式は、第 '364号特許の図3で開示された構造と同一ではない。

              さらにOverhead Doorは、そのメモリー選択方式が図3 [*28]のものと構造的に均等ではないとの証拠を提示した。提訴された装置の構造は、ミーンズ・プラス・ファンクション要素に対応する開示された構造と実質的に異ならなければ、開示された構造と均等である。Chiuminatta, 145 F.3d at 1309参照。Overhead Doorは、Intellicodeのソフトウェアはメモリーをより効率的に使用し、以前に記憶されていたコードを消去する機会を最小限にするので、そのソフトウェアはクレーム要素と実質的に異なると主張する。本法廷は、非申立て人であるOverhead Doorにとって最も有利な観点から証拠を見ることにより、Overhead Doorは、クレーム5の文言侵害を認めるサマリジャッジメントを禁じる、重大な事実に関する真正な争点を提起したと認定する。したがって本法廷は、Intellicodeが記憶位置の選択のために図2の機械的スイッチまたはソフトウェアで実現される図3のアルゴリズムに均等な構造を使用しているか否かを判断すべく、事実認定者に差し戻す。

              「動くスイッチ」 − クレーム1

          本法廷は、クレーム1の「動くスイッチ」つまりプログラム/操作スイッチは提訴された装置に存在するという点で地裁に同意する。地裁はこの要素を、「少なくとも二つのポジションをもつ、マイクロプロセッサーに接続された [*29] 動くスイッチ」であると、適切に解釈した。図2の機械的スイッチはこの解釈を支持する。Overhead Doorの主張とは異なり、クレームの表現も明細書も、スイッチの各ポジションが不動であるとも、使用者が自由に選択するとも要求していない。

              本法廷は第一審裁判所の正しい解釈を提訴された装置に適用し、二つのポジションをもつバネ付きのIntellicodeのプッシュボタン・スイッチは、「動くスイッチ」という限定を満たすとの地裁の認定を維持する。その際、本法廷は、提訴されたスイッチは使用者がプッシュボタンから手を離したとき、固定位置に戻ることを理解する。両当事者は、Intellicodeのプログラム/操作スイッチが、「機械的な、二つのポジションをもつ使用者が操作するスイッチ」であることは争わない。しかしOverhead Doorは、その瞬間的スイッチが操作ポジションをもたず、プログラム・ポジションは不動ではなく、使用者は「操作」モードを選択できないと主張する。この主張には説得力はないと本法廷は認定する。Intellicodeの2ポジション・スイッチは、「少なくとも瞬時に操作ポジションとプログラム・ポジション間を移動できる、マイクロプロセッサーに接続されている [*30] 」。したがって本法廷は、Intellicodeが「動くスイッチ」要件を、文言上満たすという認定に依拠している限りにおいて、地裁のサマリジャッジメントにおける判断を維持する。

              「最初のスイッチ手段」 − クレーム5

              クレーム5は、「上記マイクロプロセッサーに接続された、プログラムと操作のポジションを選択する最初のスイッチ手段」と記される。このクレーム要素は「手段」という用語を使用しており、クレームは、記された機能を実行するための構造も材料も特定しない。そこで地裁は、「最初のスイッチ手段」は35 U.S.C. § 112, P6に基づくミーンズ・プラス・ファンクション要素であると、正しく判断した。Al-Site, 174 F.3d at 1318参照。したがって「最初のスイッチ手段」は開示された構造つまり機械的スイッチ22、およびその構造上の均等物を含む。特に、図2は機械的スイッチ22を、2ポジションをもつ動くスイッチとして示している。すでに議論したように本法廷は、Intellicodeには「動くスイッチ」要素が文言通りに存在すると認定する。同様に、2ポジションの機械的スイッチまたはその均等物として正しく解釈された「最初のスイッチ手段」も、Intellicodeに文言通りに存在する。したがって本法廷は、地裁の判断を [*31] 維持する。

              「異なるコード」 − クレーム1および5

              地裁はまた、クレーム1および5の「異なるコード」要素を検討し、これらの要素はIntellicodeに文言通りに存在すると認定した。特に、地裁は「異なるコード」を、「工場で定められ、無線送信機の中に記憶された、各送信機を特定する、車庫扉開閉機(「GDO」)システムの使用者が選択も修正もできないコード」と解釈した。地裁によるこの用語の解釈はクレームの表現と合致しており、文書説明内にその裏付けが見いだされる。クレーム表現は、各コードがそれぞれ異なる送信機に対応していることを要求する。文書説明には、各コードがそれぞれ1つの送信機を特定すると記している。明細書には、コードは工場で設定され使用者が変えることはできず、「送信機にコード選択スイッチの必要はない」と、付け加えられている。第 '364号特許第1欄11. 53 - 54行。

              クレームの表現は、「コード」の意味についてそれ以上の制限は与えない。Vitronics, 90 F.3d at 1582参照。クレーム1および5は、送信機と受信機に同一のコードがあることを要求しない。[*32] 両クレームの表現は、「その最初の送信機のコードが上記メモリー手段に記憶される」となっている。適切に解釈されれば、この表現は、メモリーが、「最初の送信機」に対応するコードを保持することを要求する。しかしクレームは、メモリーが、送信機から送信されたコード化されたビットの正確な配列を、その識別信号として記憶することは要求しない。クレーム表現のこの読み方は、コードは送信機に対応すると説明する文書説明内に、その裏付けを見いだせる。特定のフォーマット、暗号化、あるいは送信または記憶されたコードの改変は説明しない。地裁は、記憶する前での、コードの最後の1つのビットの単純な変更または追加が、クレーム1および5の文言上の範囲をはずれるようになるほど「コード」を狭く解釈することを避けた。

              Intellicodeシステムにおいては、送信機内の、工場でプログラムされた、独自の固定された二進数の列は、マイクロプロセッサーのメモリー内に記憶されたビットとは正確には一致しない。Intellicodeはむしろ、送信のために送信機のコードを暗号化し、いわゆる「ホッピング・コード」という異なるビットの列を作る。「プログラム」モードでのIntellicodeのマイクロプロセッサーは、秘密キー(もう1つの別のビット列)を記憶し [*33]、その後、認められた(つまり、すでに学んだ)送信機を確認するために、「操作」モードで秘密キーを使用する。しかしすでに説明したように、Intellicodeのこれらの特徴は、「異なるコード」要素の文言侵害を回避しない。つまり本法廷は、「異なるコード」要素の地裁の解釈、およびIntellicodeにはこの要素が文言通りに存在するとの認定を維持する。

III.

              結論として、本法廷は、クレーム1の文言侵害はないというサマリジャッジメントを求めたOverhead Doorの申立ての地裁による許諾は維持するが、均等論に基づく侵害もないというサマリジャッジメントは破棄する。特に地裁は、法律問題として、提訴された装置は「動くスイッチ」および「異なるコード」の要素を文言通りに含むが、「メモリー選択スイッチ」要素は文言通りには含まないと、正しく認定した。しかし地裁は、提訴された装置が「メモリー選択スイッチ」の均等物を含まないというサマリジャッジメントにおいては誤った。本法廷は、これは事実認定者によって判断されるべき、重大な事実に関する真正な争点であると結論付ける。

              クレーム5に関しては [*34]、本法廷は、侵害はないとする地裁のサマリジャッジメントは取消す。提訴された装置には「メモリー選択第二スイッチ手段」は、文言上も均等物としても存在しないという法律問題としての認定において、地裁は誤りを犯した。本法廷は、これは事実認定者によって判断されるべき、重大な事実に関する真正な争点であると結論付ける。しかし地裁は、法律問題として、提訴された装置は「異なるコード」および「最初のスイッチ手段」を文言通りに含むと、正しく認定した。

              したがって本法廷は本件を、以上の意見に基づくさらなる手続きのために、地裁に差し戻す。

費用

各当事者が各自の費用を負担する。

一部維持、一部取消、差戻し。