Phonometrics, Inc.、原告−上訴人

Northan Telecom Inc.およびUnited Telephone Company of Florida、被告−被上訴人、ならびにSprint Corporation、被告−被上訴人

96-1469

合衆国連邦巡回区控訴裁判所

1998合衆国控訴LEXIS 702

1998年1月15日判決

これまでの履歴:合衆国フロリダ州南部管轄区地方裁判所から控訴No. 93-6561-CTV-RYSKAMP. Ryskamp.判事[*1]

処理:上訴棄却

訴訟代理人:John P. Sutton, Bryan Hinshaw Cohen & Barnet, of San Francisco, California, 原告−上訴人を代理して弁論 同人とともに、Lance D. Reichが弁論

Marvin S. Gittes, Cobrin Gittes & Samuel, of New York, New York被告−被上訴人Northern Telecom, Inc.他を代理して弁論。同人とともに、David A. Jacobsが弁論

Kevin J. Murray. Kenny Nachwalter Seymour Arnold Critchlow & Specter, of Miami, Florida、被告−被上訴人Sprint Corporationを代理して弁論。同人とともに、Harry R. Schaferが弁論

判事:巡回裁判官MICHEL, CLEVENGERおよびBRYSON

理由作成:MICHEL

理由:

MICHEL、巡回裁判官 

Phonometrics, IncはPhonometrics, Inc.対Northern Telecom Inc.事件、No.93-6561-CTV-RYSKAMP(S.D. Fla、1996年6月28日)における合衆国フロリダ州南部管轄区地方裁判所のSummary Judgmentおよびいくつかのその他の終局決定に対して上訴した。巡回裁判官はNorthern Telecom, Inc.(NTI)およびUnited Telephone Company of Florida(United)側に立ったPhonometricsの米国特許第3,769,463号('463号特許)の侵害がないとのSummary Judgmentを与え、特許の無効性および法的無拘束性についてのNTIおよびUnitedの反訴を無意味なものとして退け、人的管轄権について退けるようにとのSprint Corporation(Sprint)の申立てを受け入れた。[*2]Phonometricsは3つの決定すべてに対して上訴した。この上訴は本件および2つの随伴事件に関する拡張口頭弁論に引き続いて1997年12月4日に当裁判所の判断を求めて提出された。n1 '463号特許のクレームに関する巡回裁判官の解釈が適切なものであったから、均等の原則に基づくSummary Judgmentの巡回裁判官の記入は適切なものであった。さらに、反訴を無意味なものとして退けるという巡回裁判官の判断はその裁量の範囲内のものであった。最後に、フロリダのロングアーム法についての巡回裁判官の解釈が適切なものであったため、またカンザス州の法人であるSprintがフロリダ州に存在しておらず、また活動していなかったため、被告としてのSprintを巡回裁判官が退けたのは適切なものであった。したがって、当裁判所は下級審の判決を支持する。

----------------------------脚注----------------------------

n1同日、当裁判所はPhonometricsが起こした他の2件の上訴に関する口頭弁論も聴取した。本件はPhonometrics, Inc.対Siemens Information Systems, Inc.上訴番号第95-1495、-1496号およびPhonometrics, Inc.対Tadiran Electronic Industries, Inc.、上訴番号第96-1549号とともに随伴事件である。当裁判所がこれらを統合することを拒否したため、個別の措置が欠く上訴に発行されることになろう。それに関わらず、当裁判所は当裁判所の判決がこれらの他の2つの上訴に影響を及ぼし、またいくつかの連邦地方裁判所で継続している'463号特許に関して主張している一連の他の侵害の申立てに影響を及ぼすと期している。

--------------------------脚注終り--------------------------[*3]

背景

Phonometricsは当初1973年10月30日付でPhillip GrahamおよびLawrence Reichに対して発行された'463号特許を侵害しているとして、1993年7月8日、NTIとUnitedを訴えた。n2 Phonometricsは1994年6月に補正した告発状を提出し、Sprintを追加の被告として挙げた。

----------------------------脚注----------------------------

n2 17年間の特許期間が1990年10月30日に満了となっており(35 U.S.C. @ 154(1994)参照)、侵害を主張した民事訴訟を6年以内に提出しなければならないため(35 U.S.C. @ 286(1994)参照)、訴訟は1987年7月8日から1990年10月30日までの間に生じた申立てのある侵害活動だけを対象としている。

--------------------------脚注終り--------------------------

'463号特許は、たとえば、ホテルにおいて個々のホテルの部屋からかけられた長距離電話呼の長さとコストを追跡するために使用するように設計されたコンピュータ装置をクレームに記載している。この装置により、ホテルの交換手はそれぞれのこの「時間と料金」をAT&Tの交換手に照会することなく、長距離使用の正しい料金を宿泊客に請求できるようになった。具体的にいうと、'463号特許の唯一の独立クレームであるクレーム1は以下の事項を記載している。[*4]

発呼電話機を持ち上げ、戻すことによって始動されて、発呼電話機に結合されているスイッチ手段を動作させ、さらに被呼者が被呼電話機で応えたときに電話システムで発生する呼確立信号によって動作させられる、所与の発呼電話機から開始される各長距離電話呼のコストを計算し、記録する電子ソリッドステート長距離電話呼コスト・コンピュータ装置において、

確立した各呼の継続期間の時間を測定する呼計時手段と、

所与の所定初期呼期間に対する初期固定料金データおよびその後の追加所定増分呼期間に対する増分料金データを格納する設定可能料金セレクタ手段と、

累積呼コストをドルおよびセントでほぼ瞬時に表示する、ディジタル表示装置を含む呼コスト・レジスタ手段と、

前記スイッチ、前記計時手段、前記料金セレクタ手段、および前記呼コスト・レジスタ手段に結合された、発呼電話機から行われた各長距離呼のコストを呼コスト・レジスタ手段に自動的に記録するコンピュータ回路手段とを備えており、該コンピュータ回路手段が[*5]

前記呼確立信号の発生時に直ちに前記計時手段および前記呼コスト・レジスタ手段をリセットするリセット手段と、

前記呼計時手段の動作を開始させ、前記呼計時手段と前記初期コスト・レジスタのリセット時にほぼ瞬時に、完全な初期固定料金データを前記料金セレクタ手段から、前記呼コスト・レジスタ手段に適用する初期コスト転送手段と、

初期呼期間のタイムアウトの完了時にほぼ瞬時に、前記呼計時手段により完全な増分料金データを前記料金セレクタ手段から前記呼コスト・レジスタ手段へ適用し、前記初期呼期間後の各増分呼期間のタイムアウトの完了時にもほぼ瞬時に、完全な増分料金データを前記料金セレクタ手段から前記呼コスト・レジスタ手段へ適用する増分コスト転送手段と、

発呼電話機を元に戻すことによる前記スイッチの動作時に、前記コンピュータ装置の動作を中断し、累積呼コストを前記呼コスト・レジスタ手段によって保持し、表示する終了手段とを備えている電子ソリッドステート長距離電話呼コスト・コンピュータ装置。[*6]

Col. 8, 11.24-68, col. 9, 11. 1-8(強調付加)。Phonometricsは製品の製造も、その単独の資産である'463号特許に基づくライセンスの授与も行っていない。しかしながら、Phonometricsは十数件の侵害訴訟を起こしており、その多くはフロリダ州南部管轄区地方裁判所において本上訴の措置待ちとなっている。

デラウェア州の法人であるNTIは構内交換機(PBX)およびボタン・サービス・ユニット(KSU)を含む電話交換機器を国内およびフロリダ州で製造および販売しており、フロリダ州においては顧客に直接およびUnitedを通じて販売している。PBXは多数本の電話回線を互いに、また中央位置を通して公衆電話網に相互接続するように設計された高速遠隔通信交換システムである。KSUはPBXと類似しているが、大きさおよび規模の点でより小さいものである。Unitedはフロリダ州において電話サービスを提供し、NTIが製造した機器を含め電話機器を販売しているフロリダ州の法人である。

Phonometricsは均等の原則に基づいて、関連した期間中に製造販売されたNTIのPBXおよびKSU[*7]が'463号特許を侵害したと主張した。n3 NTIおよびUnitedは反訴を提出してこれに応え、'463号特許は無効であり、実施できないものであると主張した。NTIおよびUnitedは非侵害の旨のSummary Judgmentを求める申立て、および最良の態様を開示しなかったことによる特許の無効についてのSummary Judgmentを求める他の申立てを提出した。地方裁判所は本質的な事実についての真実の論争が存在しておらず、したがって、非侵害についてのSummary Judmentに関する申立てが適切なものであると判断した。'463号特許のクレーム1を解釈した後、NTIが製造し、NTIおよびUnitedが販売している告発された装置のいずれもが'463号特許のクレーム1が特に必要としている呼計時手段、設定可能料金セレクタ手段、呼コスト・レジスタ手段、リセット手段、または初期コスト転送手段、あるいはその機能的同等物を含んでいないため、告発された装置が'463号特許を侵害していないと判決した。したがって、地方裁判所の裁判官はNTIおよびUnited側に立ってSummary Judgmentに関する申立てを認め、その反訴を無意味なものとして退けた。n4

----------------------------脚注----------------------------

n3 PhonometricsはNTIの機器が'463号特許を文字どおりに侵害しているものではないことを容認している。[*8]

n4最良の態様を開示していないことによる無効に関するSummary Judgmentに関する申立ても、無意味なものとして地方裁判所によって退けられた。

--------------------------脚注終り--------------------------

同時に、UnitedがSprintの子会社であるとの主張に基づいて追加の被告としてSprintを挙げてPhonometricsが提出した補正告訴状に応えてn5、Sprintはフロリダ州のロングアーム法規に基づく人的管轄権の欠如のため退けるようにとの申立てを提出した。地方裁判所はフロリダ州の法律を解釈して、裁判所がSprintに対して管轄権を有していることを示す一応有利な事件を提示することにPhonometricsが失敗したと判断した。具体的にいえば、SprintがUnitedを管理しておらず、フロリダ州自体に事業所、従業員あるいは代理人を持っておらず、フロリダ州において機器の製造も販売も行っておらず、あるいは当地で事業を営んでいないことをSprintが立証し、かつPhonometricsがこれらの事実を退ける証拠を出していないと、裁判所は判断した。したがって、地方裁判所は人的管轄権が欠如しているため1996年3月29日にSprintに対する主張を退けた。

----------------------------脚注----------------------------

n5口頭弁論において、本件に関与する可能性のある法人格に関してかなりの混乱があった。カンザス州の法人であるSprint Corporationは持株会社であり、いくつかの子会社の株式を所有しているに過ぎないと思われる。このエンティティのみが本訴訟において送達を受け、指名されている。当裁判所は「U.S. Sprint」が商号であると考えている。Sprint Communications Company L.P.はフロリダ州で業務を行っている独立した子会社であると思われる。いずれにせよ、この会社は本件で指名されてもいなければ、告訴状の送達も受けていない。

--------------------------脚注終り--------------------------[*9]

分析

I.

Summary Judgmentが適切に与えられるのは、重要な事実に関して真正な争点がなく、Summary Judgmentを求めている当事者が法律問題として判決を受ける権利を有している場合である。Fed. R. Civ. P. 56(c)参照。Summary Judgmentを与えるという地方裁判所の判断が適切なものであったか、否かについて検討するに当たり、当裁判所は重要な事実の真正な争点が存在しているかどうかについて当裁判所自身で判断しなければならない。Vas-Cath. Inc. v. Mahurkar, 935 F.2d 1555, 1560, 19 U.S.P.Q.2D(BNA)1111, 1114(Fed. Cir. 1991)(C.R. Bard, Inc. v. Advanced Cardiovascular Sys., 911 F.2d 670,673,15 U.S.P.Q.2D(BNA)1540, 1542-43(Fed. Cir. 1990を引用))参照。

Phonometricsは重要な事実の真正な争点を実証する証拠を地方裁判所の裁判官に提示したと争ったが、無視された。侵害の分析は通常、法律の問題と事実問題との両方を含むものであるが、非侵害に関するSummary Judgmentは依然適正なものである可能性がある。Nike Inc. v. Wolverine World Wide, Inc., 43 F.3d 644, 646, 33 U.S.P.Q.2D(BNA)1038, 1039(Fed. Cir. 1994); Chemical Eng'g Corp. v, Essef Indus., Inc., 795 F.2d 1565, 1571, 230 U.S.P.Q.(BNA)385, 389(Fed. Cir. 1986)参照。申立てられたクレームの意味および範囲についての誠実な争点は[*10]、本質的にかつ当然、特許事件におけるSummary Judgmentを排除する真正な争点を作り出すものである。Lantech, Inc. v. Keip Mach. Co., 32 F.3d 542, 546, 31 U.S.P.Q.2D(BNA)1666, 1670(Fed. Cir. l 994)参照。

'463号特許についての地方裁判所裁判官の解釈に対するPhonometricsの不同意は特許法についての疑問を提起するものではあるが、本書で適切に評価できるように、地方裁判所がSummary Judgmentを出したことを当裁判所が規定56(c)に基づいて覆すことを必要とする重要な事実についての真正な争点を作り出すものではない。クレームの意味に関する争点はこれらの争点の分析が法律の問題であるクレームの解釈の過程の一部であるから、Summary Judgmentを排除するものではない。

告発された装置の性質および動作について事実に基づく争点があるとのPhonometricsの主張に関し、宣誓供述書によってNTIおよびUnitedが提示した事実は地方裁判所において争いのないものであった。地方裁判所が認めているように、Phonometricsはそれ自身の宣誓供述書によって、告発された装置の構造および動作に関してNTIおよびUnitedが記載した説明のいずれをも論駁することができなかった。

規定56(c)に基づいてSummary Judgmentを妨げる重要な事実が真正な争点にないということで当裁判所が地方裁判所に同意しているものであるから[*11]、当裁判所はここでクレーム1についての地方裁判所裁判官の解釈が正しいかどうかを検討する。正しいのであれば、告発された装置の構造および動作について、ならびにクレーム1の地方裁判所の解釈に基づき、これらの装置が'463号特許を侵害することがありえないことについて、Phonometricsが争っていないため、非侵害についてのSummary Judgmentは適切なものとなる。

II.

A. Intellicallの争点効

当裁判所はまず、NTIおよびUnitedが示唆しているように、その事件においても当裁判所が'463号特許のクレーム1の解釈を行っているIntellicall, Inc. v. Phonometrics, Inc., 952 F.2d 1384, 21 U.S.P.Q,2D(BNA)1383(Fed. Cir, 1992)によって当裁判所が拘束されるのかどうかを検討しなければならない。Intellicallにおける問題は「ディジタル表示装置」という限定事項が可視表示装置だけを意味するのか、機械可読情報も含むものであるかであった。同上、at 1387-88. 21 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1386-87参照。「ディジタル表示装置」という限定事項は機械可読情報、または後でアクセスするためにコンピュータに与えられる情報を含まないと地方裁判所は判定し、当裁判所はこれに同意する。同上、at 1388, 21 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1387。当裁判所または地方裁判所がIntellicall事件で行った、本事件で問題となっている限定事項の解釈を含め、クレーム1の他の限定事項の解釈は公式見解に過ぎず、したがって、本上訴に関して争点遮断効を有するものではない。[*12]

B. '463号特許のクレーム1の解釈

クレームの解釈は法律問題であり、したがって、当裁判所は地方裁判所のクレームの解釈を改めてはじめから検討する。Markman v. Westview Instruments, Inc., 52 F.3d 967, 979, 34 U.S.P,Q.2D(BNA)1321, 1329(Fed. Cir, 1995)(in banc), aff’d, 517 U.S. 370, 38 U.S.P.Q.2D(BNA)1461, 134 L Ed. 2d 577, 116 S. Ct. 1384(1996)参照。適切な解釈には、クレームの文言、明細書本文、および、採り入れられている場合には、審査履歴の調査が必要である。Vitronics Corp. v. Conceptronic, Inc.. 90 F.3d 1576. 1582, 39 U.S.P.Q.2D(BNA)1573, 1576(Fed. Cir. 1996)参照。しかしながら、適切な起点は主張されているクレーム自体の文言である。同上、Bell Communications Research, Inc. v. Vitalink Communications Corp., 55 F.3d 615, 620. 34 U.S.P.Q.2D(BNA)1816, 1819(Fed. Cir. 1995)参照。

1. クレーム1の文言

クレーム1の重要な節は「累積呼コストをドルおよびセントでほぼ瞬時[*13]に表示する、ディジタル表示装置を含む呼コスト・レジスタ手段」を必要としている。当裁判所は「呼コスト・レジスタ手段」のみを解釈することによって本上訴を処置できるため、他の無関係の節が'463号特許により呼コスト・レジスタ手段の特徴とされる要件を確立する助けになる範囲を除き、これらの節を解釈する必要はなく、また解釈しなかった。したがって、この節のみの解釈を検討することに傾注した。

クレーム1によれば、呼コスト・レジスタ手段は「累積呼コストをドルおよびセントでほぼ瞬時に表示する」。それ故、呼コスト・レジスタ手段が呼のコストについての現在の正確な情報を表示するように機能すると思われる。しかしながら、「ほぼ瞬時に」という限定事項が何を必要としているかは、すぐには明らかとならない。NTIおよびUnitedは料金が発生すると同時に呼のコストに関する表示情報が必要なことを示唆している。Phonometricsはしかしながら、この終了時に直ちに正確なコスト情報を表示することが必要なだけであると主張している。幸いなことに、呼コスト・レジスタ手段の当裁判所の解釈を伝え、特許権者によりこれに与えられている機能を画定する他の節がクレーム1にあるため、この限定事項の要件を判定するために、この手段節に使用されている語だけに依存する必要がない[*14]。具体的にいうと、クレーム1の最後の3つの節はこのような情報を与えるものである。

これら3つの節のうち最初のものは「初期コスト転送手段を要求している。前記呼計時手段と前記初期コスト・レジスタのリセット時にほぼ瞬時に、完全な初期固定料金データを前記料金セレクタ手段から、前記コスト・レジスタ手段に適用する初期コスト転送手段」(強調付加)それ故、装置をリセットした場合、「初期固定料金データ」が「ほぼ瞬時に」料金セレクタ手段から呼コスト・レジスタ手段へ転送され、ディジタル表示装置によりそこで表示される。

クレーム1はさらに初期呼期間のタイムアウトの完了時にほぼ瞬時に、完全な増分料金データを前記料金セレクタ手段から前記呼コスト・レジスタ手段へ適用する増分コスト転送手段も要求している(強調付加)。...前記初期呼期間後の各増分呼期間のタイムアウトの完了時にもほぼ瞬時に、完全な増分料金データを前記料金セレクタ手段から前記呼コスト・レジスタ手段へ適用する[*15]。

この節によれば、初期呼期間が経過したときに呼がまだ進行中の場合、「増分料金データ」が呼コスト・レジスタ手段に転送され、「ほぼ瞬時に」そこで表示される。付加的な増分料金が付加的な呼期間の経過時に「ほぼ瞬時に」呼コスト・レジスタ手段へ転送される。連続した期間コストを転送するこのプロセスは呼の継続期間中継続する。

これらの節における限定は意味深いものである。呼期間コスト情報がコスト・レジスタ手段へ転送される瞬時性を伝えるために「ほぼ瞬時に」という限定を繰り返し使用していることは、レジスタが累積コストをこれが生じたときにリアルタイムで表示し、呼が終了したときだけではないとの当裁判所の解釈を支持するものである。クレーム全体を通じて一貫して使用されている語または句は、一貫して解釈されるべきである。それ故、各コスト増分が生じるたびに、呼コスト・レジスタ手段によって「ほぼ瞬時に」転送され、表示される。[*16]「ほぼ瞬時に」という句はレジスタにおける表示が呼の継続期間全体にわたって現行のものであり、呼コストと・レジスタは呼が終了した後にコストを表示するだけではないことを明確とする。

さらに、最後の節は呼の終了時に何が起こるかを対象としている。クレーム記載の装置は「発呼電話機を元に戻すことによる前記スイッチの動作時に、前記コンピュータ装置の動作を中断し、累積呼コストを前記呼コスト・レジスタ手段によって保持し、表示する終了手段」。呼が終了した時点で、装置が呼の総コストを決定する計算を行わないことが特に重要である。それ故、レジスタに表示されるコストは呼の間中常に正確なものでなければならないから、呼が終了した時期に関わりなく、レジスタに表示される累積コストは他の計算を行うことなく、正確なものとなる。「電卓」としてのクレーム記載の装置についてのPhonometricsの記載はしたがって、誤解を生じさせるものであり、クレーム記載の装置は連続係数装置に過ぎず、呼の確立時に何らかの計算を行う他のものは設けられていない[*17]。

クレーム自体をその全体について検討した場合、呼コスト・レジスタ手段が2つの別々だが同じように重要な機能を有している。(1)呼の期間中に長距離料金が生じた場合に、ディジタル表示装置により呼のコストに関する正確な情報を、発呼者にリアルタイムで与え、(2)呼が終了した後に同じディジタル表示装置によりこの総コストを反映する。Phonometricsは2番目の機能だけがクレームに記載されている、すなわちこの2番目の機能だけが侵害を判定するのに重要なものであると主張している。当裁判所はこれに同意しない。両方の機能が'463号特許のクレームに明示的に記載されており、両方とも公正に重要なものである。

 明細書本文の記載

クレームに先行して明細書全体にわたって使用されている文言は呼コスト・レジスタ手段の二重機能のこの構造をサポートしている。たとえば、本文の記載は「単一の呼の累積コストが単一の呼コスト・レジスタに表示されるように、呼コスト・レジスタ手段が動作すると説明している。...呼の進行時に呼のコストを発呼者に継続的に気づかせ、完了時に呼の総コストを示すために[*18]」Col. 3, Il. 27-31(強調付加)。好ましい実施の形態における呼コスト・レジスタ手段の動作についての説明はクレームの文言についての当裁判所の解釈を支持するものである。呼コスト・レジスタ手段が呼の進行中の呼のコストについての情報をもたらすことは明らかである。クレームは好ましい実施の形態に示されたものに範囲が必ずしも限定されるものではないが、いずれも好ましい実施の形態の特性ではなく、クレームの限定事項の正しい意味に関係ない。Markman, 52 F.3d at 979, 34 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1329参照。Phonometricsはもちろん、付加的な限定事項が明細書本文からクレームに取り込むことができないものであると主張している。しかしながら、当裁判所は具体的にクレームに記載された限定事項を明細書に照らして解釈できるものであり、これだけを当裁判所が行ったものである。

同様に、明細書本文の記載は装置のリアルタイム動作に対する初期および増分コスト転送手段の重要性を慎重に説明している。

被呼者に到達すると、被呼者の受話器の持ち上げ時に電話回線から誘導される90ボルトのパルスが、経過時間インディケータをほぼ瞬時にクリアし、インディケータ計時を開始する[*19]。さらに、ほぼ瞬時に、単一の呼コスト・レジスタがクリアされ、設定料金セレクタに示される3分間の料金がロードされる。...呼が3分を超えた場合、経過時間インディケータにより毎分超過料金がコスト・レジスタ[]に追加され、これは呼の間中1分の間隔ごとに繰り返される。この完了時に、すべての係数が停止し、コスト・レジスタ[]および経過時間インディケータの表示は保持される。

Col. 3, ll. 3-19(強調付加、文中の図面の参照符号は省略)。それ故、明細書はクレーム記載の装置が動作し、各期間が経過するたびに各増分料金を呼コスト・レジスタ手段に追加して、長距離呼の進行中に長距離料金情報をリアルタイムで与える態様をさらに明確とするものである。

Phonometricsはしかしながら、「進行中」という句がクレーム1の文言のどこにもないと述べ、呼コスト・レジスタ手段が進行中の呼の累積コストを表示するという地方裁判所の解釈に異議を唱えた。この句がクレーム自体に現れていない[*20]ということで、Phonometricsは正しいが、この事実は地方裁判所によりクレームに与えられた解釈を誤りとするものではない。事実、クレームを全体として適切に検討した場合、この期間中に生じる料金と呼が終了した後の料金の料金両方として長距離呼の累積コストを表示する装置に'463号特許が限定されるということは明らかであると、当裁判所は考える。

3. 審査履歴

最後に、審査履歴は呼コスト・レジスタ手段が呼の間中および呼の終了時両方の累積コストを表示することにより、2つの明確な機能を遂行すると当裁判所が理解しているところを支持している。'463号特許の審査中に、出願人は従来技術を凌駕して区別されるコスト転送手段の機能を特に強調している。

さらに、クレーム10['463号特許の現在のクレーム1]に明確に記載されているように、本発明の装置は受信者が被呼電話機を持ち上げることにより呼が確立されたときに、3分間料金情報をコスト・レジスタに瞬時に転送し、増分1分間料金が各1分間の期間がタイムアウトするとほぼ瞬時にコスト・レジスタに適用される[*21]。Fletcherの装置およびその他の類似した従来技術の装置において、呼料金情報は入力にかなりの時間を要し、また料金期間のわずかな増加があってから発呼電話機をかけた場合、間違った料金記録を行う可能性がある。この動作の誤りは本発明のコスト・コンピュータ装置によって完全に事前に回避されるものである。したがって、クレーム10が記録されている従来技術に比較して明確かつ特許可能な相違を提供し、認められるべきものであると考えられる。

1973年4月14日付の特許願第229,711号の補正書第12ページ(強調付加)。それ故、コスト・レジスタ手段への発生したコストの進行中の転送は、従来技術のFletcherの装置に比較して装置の固有の精度を高めるものである。出願人自身の声明書により、増分コストの進行中および瞬時の転送は特許性に関する重要な機能である。この機能は明細書本文および審査履歴に照らしてみて、クレームの文言によって明確に記載されており、本判決において当裁判所が無視できないものである。

クレームの文言についての当裁判所の独立した検討により、呼コスト・レジスタ手段の機能に関する'463号特許のクレーム1の地方裁判所[*22]による解釈がクレーム自体の文言、明細書の他の部分および審査履歴によって支持されるものであることを明らかとした。当裁判所は'463号特許のクレーム1が、呼の進行中の正確なコスト情報、ならびに呼が終了したときの総コスト情報の両方を提供するように機能する呼コスト・レジスタ手段を必要としていると判断する。

C. 告発されている装置と解釈したクレームの比較

Phonometricsは広い種類のNTIの製品による侵害を主張しているが、地方裁判所はそもそもNTIのNORSTAR、VANTAGE 48、および1/SL-1(PhonometricsはMERIDIANと呼んでいる)だけが呼コスト機能を備えているのであるから、これらの装置だけを侵害の分析で検討すべきであるとの結論を下した。それ故、当裁判所は地方裁判所の侵害分析についての当裁判所の検討をこれら3つの装置に限定し、これらのうちいずれかが呼コスト・レジスタ手段に帰する進行中のコスト表示機能を実行するのかどうかを検討した。これらがそうでないことは明らかである。

3つの装置はすべて呼の終了時にコスト情報を提供するものであるが、これらのうちいずれも呼の進行中にコスト情報を提供することができない[*23]。Phonometricsは実際同じように認めている。それ故、'463号特許のクレームに記載されている機能の1つが告発された装置にまったく存在していないのであるから、当裁判所は等価侵害がないと判断する。Warner-Jenkinson Co., Inc. v. Hilton Davis Chem. Co., 137 L. Ed. 2d 146, 117 S. Ct, 1040, 1048-49, 1054(1997); Pennwalt Corp. v. Durand-Wayland. Inc., 833 F.2d 931, 935, 4 U.S.P.Q.2D(BNA)1737, 1740(Fed, Cir. 1987)(in banc)参照。

したがって、法律問題として、告発された装置が'463号特許を侵害していないことは明らかである。地方裁判所が非侵害というSummary Judgmentを出したことは正しく、したがって、当裁判所はこれを支持する。

III.

当裁判所は上訴にあるPhonometricsの他の4つの主張をきわめて直接的に措置することができる。

まず、Phonometricsは裁判所がSummary Judgmentを出すに当たって依存した事実について、NTIとUnitedがいくつかの不実表示を行っていると主張して、規定60(b)に基づく再考慮の申立てを提出した。規定によれば、「申立てがあり、かかる条項が適正な場合には、裁判所は...不実表示...に関する最終判断、命令または法的手続きから...当事者を救済することができる」 Fed. R, Civ. P. 60(b)。地方裁判所裁判官はその申立てを特別補助裁判官に付託し、事実の不実表示が行われていないとの特別補助裁判官の報告および勧告を採用した[*24]。

上訴に当たり、Phonometricsはその規定60(b)申立ての分析および特別補助裁判官への付託の両方に異議を申立てた。規定60(b)の申立てに関する判断は、申立てが終局判断に対する上訴の提出に時間の制限がない場合、地方裁判所による地方裁判所による最終的な処理であり、それ故、下級審での処理に対して独立して上訴を行わなければならないことに、当裁判所は注目した。Stone v. INS, 514 U.S. 386, 401-3, 131 L. Ed. 2d 465, 115 S. Ct. 1537(1995)参照。Phonometricsがその規定60の申立てについての措置に関して独立した上訴の通知を提出しなかったのであるから、当裁判所は元の事件に対するこの上訴においてこれを検討できない。さらに、Phonometricsが付託が行われたときにこれに異議を唱えず、したがって特別補助裁判官を使用することに関して当裁判所に提起できる異議を放棄していると、当裁判所は認める。Constant v. Advanced Micro-Devices, Inc., 848 F.2d 1560, 1566, 7 U.S.P.Q.2D(BNA)1057, 1060(Fed. Cir. 1988)(「当事者は特別補助裁判官の所見が気に入るかどうかを調べてから、特別補助裁判官を使用することに異議を唱えることはできない。時宜に適った態様で異議を唱えなかったことは、権利放棄となる。」)参照[*25]。

第2に、Phonometricsは地方裁判所が非侵害についてのSummary Judgmentを出したことに照らして無効性および法的無拘束性についての反訴を無意味なものとして地方裁判所が退けたことに対して上訴している。当裁判所はすでに、地方裁判所が非侵害と判定した場合に、特許が無効であると主張している反訴を無意味なものとして退ける裁量権を地方裁判所が持っていると判断している。Nestier Corp. v. Menasha Corp.-Lewisystems Div., 739 F.2d 1576, 1580-81,, 222 U.S.P.Q,(BNA)747, 751(Fed. Cir. 1984)(「非侵害との陪審の所見に照らして−特許が無効でないと陪審が判断したことに関わりなく−特許の有効性...に関連した問題についての判断を地方裁判所が控えたことに...廃棄事由となる誤りまたは裁量権の誤用はない」)参照。Leesona Corp. v. United States, 530 F.2d 896 906 n.9 185 U.S.P.Q(BNA)156, 163 n,9(208 Ct. Cl. 871. 530 F.2d 896, 192 U.S.P.Q.(BNA)672において請求裁判所の意見として採用)(Ct. Cl. 1976)(「有効性および侵害の問題の両方を処理するほうが慣行としてはよいものであるが、...これを行うのは必ずしも必要なことではない。本件におけるように、非侵害が明確であり、無効性が明らかなことが明確でない場合には、非侵害の問題だけを取り上げるのが適切である。」[*26](引用省略))も参照。Cardinal Chemical Co. v. Morton International, 508 U.S. 83, 26 U,S.P.Q.2D(BNA)1721, 124 L Ed. 2d 1, 113 S. Ct. 1967(1993)における最高裁判所の判断は、地方裁判所によるこの裁量行為を排除するものではない。Cardinal Chemical事件により当裁判所が中間上訴裁判所として行えないことは、特許が侵害されておらず、したがって本件における地方裁判所の行為に何の関係も持っていないと当裁判所が判断した場合に、無効性についての判断を無効とすることだけである。さらに、Phonometricsは相手方の申立ての却下により目的を達成せず、したがって、その特許の有効性についての法的決定にPhonometricsが一般的な権益を有しているとのその主張に関わりなく、その判断について当裁判所に上訴する法定の権利を有していない。

第3に、PhonometricsはNTIのNORSTAR、VANTAGE 48、および1/SL-1装置の他の販売者またはユーザによる'463号特許の侵害を主張した他の訴訟をPhonometricsが起こすことを排除するとの、地方裁判所が発行した差止め命令に異議を唱えている。当裁判所は差止め命令が規定65の要件を満たしており、そのような他の訴訟を禁ずる地方裁判所裁判官による判定が裁量権の誤用を較正するものではないと判定する。

第4に、Phonometricsは人的管轄権の欠如を理由としてSprintを被告として排除するという地方裁判所の判定に対して上訴している[*27]。Unitedが直接侵害の責を負わない場合、その親会社Sprintも責任を負わないのであるから、前述の非侵害という判断を当裁判所が肯定していることに基づいて、管轄権の問題が慎重に議論されるものであると、当裁判所は認める。しかしながら、フロリダ州の裁判所が解釈したようにフロリダ州の法律で必要とされる人的管轄権を立証する一応の証拠をPhonometricsが示さなかったという点で、当裁判所は地方裁判所に同意する。たとえば、Qualley v. International Air Serv., 595 So, 2d 194(Fla. Dist. Ct. App.), 理由棄却、605 So. 2d 1265(Fla. 1992)参照。Sprint自体は同社がフロリダ州に事業所をおいたり、活動したりしておらず、またUnitedの企業活動を管理もしていないことを実証した。したがって、当裁判所は共同被告としてのSprintを棄却するとの地方裁判所の判断を支持する。

結論

'463号特許についての地方裁判所の解釈は正しいものであり、したがって、法律問題として、告発された装置は均等の原則のもとで特許を侵害していない。したがって、非侵害というSummary Judgmentを出すとの判断は適正なものであった。さらに、特許の有効性についての反訴を無意味なものとして棄却した地方裁判所[*28]の判断は、裁判所の裁量権の範囲内のものであり、人的管轄権の欠如を理由としてSprintを被告とすることを退けたのは、フロリダ州の法律の適正な適用である。したがって、当裁判所は地方債願書のこれらの命令も支持する。

上訴棄却