基調講演:

「電子商取引と知的財産権問題」

Shira Perlmutter(WIPO)


WIPOは電子商取引に多大の関心を寄せており、1999年9月電子商取引と知的財産権に関する国際会議を開催した。その結果として10項目にわたる「Digital Agenda」を公表した。電子商取引は取引の対象である情報そのものが、電子的に配布される。このことは知的財産権の重要分野である著作権にも深く関係するが、知的財産権は属地的に規定される。このことは電子的に世界に瞬時に配布されることとの関係で難しい問題を発生させる。

これらに対するWIPOの視点としては下記のものがあり、一定の成果を上げてきた。

  1. 技術の進展に伴い現行の法制度でよいのか検討を要するもの−たとえば、ネット上の著作物の流通について、またそれを媒介するプロバイダーの取扱について。
  2. 現行制度を補強すれば足りると考えるもの−たとえば、インターネット上での商標権、特許関連情報のネットでの開示など。
  3. 技術による権利の保護。
  4. 権利の属地性の問題

これに加え、現在検討されている問題として下記のものがある。

  1. 新しいテーマと権利−視聴覚著作物の実演家の権利、放送事業者の権利の見直し、データベースの追加的保護。
  2. オンライン・サービス・プロバイダーの責任
  3. 著作権の例外規定の再検討
  4. 準拠法と裁判管轄
  5. 権利の行使と実施許諾

さらに、現在特にホットになっているドメインネームの問題については、WIPOで検討の結果、四つのレコメンデーションを出した。1)新しい登録制度の導入、2)トップレベルドメインに関する統一紛争解決制度、3)有名商標の権利者による他者の登録の排除、4)新しいトップレベルドメインの追加、である。

さらにこれらの検討については、業際・学際的な検討、検討の速度、国際的協調と情報の共有を強調したい。