私だけが感じていることかもしれないが、政治家の言葉は信用できないものが多い。政治的な思惑を裏に持った言葉を多く聞くからだろうか。その思惑が透けて見えてしまうと白けるだけだ。例えば最近では、どこやらの大統領が自国軍に戦闘を続けさせて戦争を止めるがないくせに口にする「和平」。人命がかかっているのだから、政治家の言葉の中でもとりわけ重い筈だが、白々しくて全く信用できない。わが国政権政党の選挙敗因総括の中で、派閥政治を脱却できないアナクロな人や、統一教会問題や裏金問題を総括できていない人達が口にしている言葉。私の立場では重さは全く感じることもないが、やっぱり信用できない。政治的な思惑を離れて発する言葉を聞く機会が少なく、人となりを知ることがないからだとは思いたいが、その言葉を信用してもよいと思う政治家があまりいない。それともこれは信用しようとしない私の性格の問題? 

日本の政治家の人となりを知ろうともしないで、余所の国の政治家の言葉と比較して云々するのは、不勉強で失礼だと言われるかもしれないが、ホセ・ムヒカ氏の言葉。政治的な思惑を要する場面、特にウルグアイ国民向けだったり、政敵に向けた言葉などではなく、ムヒカ氏を紹介するためにメディアが報じた言葉からだけから知ったことだからかもしれないが、同じ政治家でもちょっと違うと思った。いろいろなことを仰っているが、元気の出た言葉をいくつか拾って紹介したい。なお前回に続いて、ムヒカ氏の言葉は「ホセ・ムヒカの言葉」[双葉社。佐藤美由紀著、翻訳協力者として山下順子、打村明、東内優輝]から引用させて頂く。

「敗北者とは、闘いを辞めた人のこと。人間は強い生き物であり、多くのことを乗り越えられます。悪いことは良いことを運んでくれるものです」[スペインのテレビ局La Sexta制作番組『SALVADOS』でのインタヴュより] 

「憎悪には少しの意味もありません。憎悪は毒です。誰も払わない負債を負うために人生を送ることはできません。それは人生とは言わない。明日に向かうのが人生です。」[2014.11.16付『The Guardian』誌のインタヴュより]

政治的な思惑があってもよさそうな場面でも、そのようには聞こえず、励まされるような言葉もある。日本の政治家が国会で、あるいは国際会議で、こうしたスピーチをできるだろうか(是非はともかく)。

「人生というものは、刻一刻とあなたから逃げていきます。でも足りないからといってスーパーで追加の人生を買うことはできません。だから、人生を生きるために闘ってください。人生に中身をあげてください。あなたは、自分の人生の方向性をある程度決められます。自分の人生の道を切り拓いていけるのです。他の生き物と違い、あなたは、自分の人生に中身を詰めるか詰めないかを選択できるのです。」…

「人生はもらうだけでは駄目なのです。まずは自分の何かをあげること。どんなにボロクソな状態でも、必ず自分より悲惨な状態の人に何かをあげられます。」…

「人生ではいろいろなことで何千回と転びます。愛で転び、仕事で転び、いま考えているその冒険でも転び、実現させようとしている夢でも転びます。でも千と1回立ち上がり、一からやり直す力が、あなたにはあります。」[2014年12月4日 南米諸国連合会議でのスピーチより。打村明訳]

それからこういうのもあった。「みなさんはパワーポイントでいろいろ発表されていましたが、誰も聞いていません。客席の静聴はタダではないのです。勝ち取るものです。そのためには、興味のあることを発表しなければなりません。パワーポイントは1、2枚ならまだいいのですが、50枚もあれば拷問です」[チリのテレビ局Chilevisionの番組el que no conociasムヒカ特集内のインタヴュより] ・・・10月に予定している連続講座の資料はパワーポイントで100枚を超えている。重い! 拷問でごめんなさい!

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July 28, 2025 • 3:23PM

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